【ワインの歴史】修道院で作られていた!中世ではどのようなワインを飲んでいたの?
中東の砂漠地帯には、古来より異国情緒あふれる物語が詰まっています。
その中でも特筆すべきはワインの歴史です。
レバノンの山岳地帯は、世界最古のワイン生産地の一つとされ、聖書の預言者ホセアもその芳醇な香りを賛美しています。
これらの地に広がったフェニキア人たちは、海を渡って地中海世界全体にブドウ栽培とワイン文化を伝播させる役割を担いました。
一方、アラビア半島の乾いた砂漠は、ブドウ栽培には向かない土地だったのです。しかし、交易を生業とするアラムの商人たちがワインを運び込み、地域の文化に新たな色彩を加えました。
また、ナツメヤシや蜂蜜を発酵させた独自の酒が造られ、それは彼らの風土と共鳴する飲み物だったのです。
イスラム教徒による征服時代、アルコールは禁止されたものの、それでもワインは不思議な生存力を見せました。
多くの詩人がワインを題材に詩を詠み、ハリーファたちは密やかにその魅力を楽しんだといいます。
また、エジプトのユダヤ人たちはブドウ畑を借り、宗教儀式や薬用のためにワインを生産し、地中海地域で商業的な存在感を示しました。
修道院の敷地ではキリスト教徒がブドウを栽培し、ペルシャのゾロアスター教徒もタバーン(酒場)を通じて独自のワイン文化を形成したのです。
イスラムの錬金術師たちは蒸留技術を発展させ、ワインから香水のためのエタノールを抽出したり、初めてブランデーを作ったりと、化学的進歩に寄与しました。
ヨーロッパでは、ワインは南部の主要な飲み物として発展し、特に修道士たちがその生産を担ったのです。
ベネディクト会やシトー会などの修道会が、フランスやドイツのブドウ畑を管理し、現在の名ワインの基盤を築きました。
ドイツでは1435年、リースリングの栽培が始まり、この品種が後に世界的に知られることになります。
当時のワインは樽で保存され、熟成されることはほとんどなかったため、若い状態で飲まれることが一般的でした。
さらには蛇に噛まれた際の治療薬としても使われ、蛇石を溶かしたワインがその一例です。
こうした逸話は、当時の人々がアルコールの特性を理解していた証ともいえます。
13世紀には、ドミニコ会修道士ウォーターフォードのジョフロワがヨーロッパ中のワインをカタログ化し、その美味を学者たちに奨めました。
また、フランスの学者ラシはタルムード研究の大家である一方、実はワイン製造業者としても名を馳せたのです。
中世のワイン文化は、このように宗教的背景と世俗的享楽の交差点に咲いた豊穣の実でした。