JR貨物、北海道の主力機関車DF200形の引退へ 新型機関車はあらゆる路線への入線を想定
2023年8月7日付けの官報において、JR貨物がDF200形ディーゼル機関車の老朽置換えを計画していることが明らかになった。
導入予定期間は2027年9月1日から2044年3月31日までの16年半とされ、新型機関車の主な性能については最大牽引重量が1300t以上、最高運転速度は110km/h、設計最高速度は120km/h。迂回路線も含めて貨物列車が運転されている全ての路線での使用を前提としているという。
DF200形ディーゼル機関車は、国鉄時代に登場したDD51形ディーゼル機関車の老朽置換えを目的として1992年に登場。主に北海道内の貨物列車の牽引機として活躍している。
政府は鉄道貨物の推進を骨太方針に
政府が6月に発表した「骨太の方針2023」では、「物流の革新」という項目で、2024年度から実施されるトラックドライバーの時間外労働規制で物流への影響が懸念されるとして、モーダルシフトや省エネ化に資する車両・船舶の導入などが触れられている。
斉藤鉄夫国土交通大臣は記者会見の場で具体的な施策として、中長距離輸送を担う10トントラックと容量が等しく互換性の高い31フィートコンテナの取扱いの拡大、災害時の代行輸送の拠点となる貨物駅の施設整備などによる貨物鉄道ネットワークの強靭化・信頼性の向上などに取り組むこと。
また、年間165億tに留まっているコンテナ輸送量を2025年度までに、政府目標と同じ209億tまで増やすというJR貨物の目標をアシストすることを表明。鉄道貨物の弱点とされた災害対策を強化しリダンダンシー(冗長性)を確保していくことについても言及した。
日本の鉄道貨物シェアはガラパゴス
近年の日本の鉄道貨物シェアは5%前後で推移しているが、これは世界的に見ると非常な少ない数値だ。国外では鉄道貨物シェアが10~20%台の国が多く、国際交通フォーラム(ITF:International Transport Forum)が公表するのデータによると、2019年の欧州ではドイツが25%、フランスが15%となっている。自動車大国の米国でも鉄道貨物シェアは35%、カナダでも46%誇り、世界的な傾向からするとJR貨物のシェアはこれまでも2~4倍に伸びてもおかしくないポテンシャルがあると言える。
これまでの日本国内の貨物物流は、トラックドライバーの低賃金、過重労働によって支えられてきた側面が強いが、2024年のトラックドライバーの労働規制強化が鉄道貨物にとっては十分な追い風となる。
強まる鉄道貨物迂回ルートの必要性
2023年8月7日の大雨の影響で線路の土台となる土砂が流出し、上川―白滝間で2週間にわたって不通となった石北本線では、8月16日から運行を開始する予定だったタマネギ輸送の臨時貨物列車を直撃した。石北本線の運行が開始される8月21日まで1日1往復の貨物列車をトラック代行輸送することになったが、地元新聞の報道によるとその代行輸送のために約20台のトレーラーが新たに必要になったという。
また、8月30日に北海道胆振地方で発生した局地的豪雨では、室蘭本線の苫小牧―東室蘭間で一時運転を見合わせ、特急北斗5号から10号が全区間で運休となるなど、特急10本を含む27本が運休または部分運休となった。さらに9月5日の局地的豪雨でも石勝線の南千歳―新得間が運転見合わせとなったほか、千歳線の札幌―新千歳空港間でも間引き運転が実施された。
近年、激甚化する自然災害の中で、北海道と本州を結ぶ貨物列車の幹線ルートである千歳・室蘭本線ルートが寸断されることになれば、物流に対する影響は石北本線どころではない。同区間には1日25往復以上の貨物列車が運行されている。石北本線の1往復の貨物列車の代行輸送で20台以上のトレーラーが必要になったことを考えると、その台数は膨大な数に上る。
トラックドライバーの労働規制による2024年問題を控え、今後、ドライバー不足の深刻化が予想され、物流ルートのリダンダンシー(冗長性)確保の観点から貨物列車の迂回ルート確保の必要性が高まっているといっても過言ではない。
バス転換協議難航の函館本線(山線)への救世主となるか
2000年の有珠山の火山災害時には函館本線(山線)の長万部―小樽間が貨物列車の迂回ルートとして活用されたことについては、2023年7月28日付記事(機関車入線できず「貨物代替ルートとして使えない」は嘘だった!? 並行在来線の長万部―小樽間)でも触れたとおりだが、JR貨物が計画している新型機関車は、迂回路線も含めた貨物列車が運転される全ての路線での使用を前提としていることから、函館本線(山線)への入線も十分に可能なものと考えられる。
すでに廃止の方針が決定されている北海道新幹線「並行在来線」の長万部―小樽間については、深刻化するバスドライバー不足の問題からバス転換の見通しが立っていない。こうした中で、JR貨物が汎用性の高い新型機関車の新造を発表したことから、並行在来線対策協議会の「機関車の大型化により貨物列車の入線が出来ないため、山線が貨物列車の迂回ルートとして使えない」という主張は成り立たなくなった。改めて、食糧安全保障や国防の観点からも函館本線(山線)の再活用を考えるべきではないだろうか。
(了)