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このちょい飲みブームは、果たしてアルコール離れが原因なのだろうか?   

池田恵里フードジャーナリスト
コンビニバル「cisca」

ちょい飲みブーム

「ちょい飲み」がちょっいとしたブーム。よし呑み、フレッシュネスバーガー、てんや、そしてコンビニまでもちょっと飲む業態に参入している。ちなみに写真のものはミニストップが手掛けたバルとの一体型、新業態「シスカ」。会社の帰りにふらりと2品とドリンクを飲んですます。平均客単価は1000円。その一方で、これまであった「パブ/居酒屋」は5年連続して前年比96.5%と下回っている(一般社団法人サービスフード協会〉。居酒屋の平均単価が約2400円であることから「ちょい飲み」の1000円は安いことも大きいと言われている。何はともあれ、回転が早い(滞席時間1時間)ことから、売上好調。アルコール減少にもめげず、外食では久々のヒット業態である。

アルコール離れの原因 所得の減少?

確かにアルコールの消費量は減少している。その大きな要因として、長引く不況からのアルコール離れはよく指摘される。アルコールは、消費量と所得水準と同じ方向に変化し、所得の上昇によって、増加する財、いわゆる正常財と言われており、それもあるだろう。

しかし全国の所得をみると、長年、低所得NO1から2に行き来する、高知県ではアルコール消費量は多いのである。もちろん県別の飲酒パターンはある。

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↑赤がアルコールのなかでももっとも消費量が高いビールを見ると高知県(都道府県別統計とランキングでみる県民性参照)

人々の所得が増えることによりアルコール飲料への需要が増える可能性と、景気の悪化が飲酒量を増やす、余暇の機会費用を減らし、飲酒が促進された可能性の双方が支持される

出典:景気は飲酒を促進するか?吉田恵子引用

つまり正常財とはいえ、それだけではない。

そこで外食チェーンの幹部に伺ってみると、「日本のアルコール離れは、2007年、飲酒運転によるアルコールの罰則規制が厳しくなったことで売り上げがガタンと落ちた」という。飲む場所もおのずと変化し、飲み方も変化。電車に間に合うように飲む。そして今回の「ちょい飲み」のブーム到来というわけだ。

'飲む時間がますます早く 消費者の変化

高齢化により、消費者の行動時間が早くなってきている。朝食の時間帯を見るとおおよそ10年間でほんの少し(5分)ではあるが、じわじわと早まっているからだ。もちろん、それに伴い、夕食、つまりアルコールを飲む時間も早くなる。事実、午後の2時から5時の間にアルコールが唯一伸びを示し、1・1%増加となっている。

アイドルタイム 「ちょい飲み」

この時間帯は、所謂、アイドルタイム。そしてカフェの時間でもある。そこでカフェ業界に目を転じてみると、カフェチェーンとしては高価格600円であるスターバックスの売り上げはこれ(スターバックス IR参照)。

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スターバックスは、リーマンショックを諸ともせず、コンビニの100円コーヒーにもへこたれず、売り上げ推移はすこぶる好調。最近のカフェ業態では、よりアッパー価格の星乃珈琲の店舗数も増加しており、前年比より売上252%。客単価も1000円と高め。100円で買えるコーヒーもあるなか、なんと10倍の価格でも成立しているのだ。そしてこの価格は、「ちょい飲み」の平均価格1000円と同じ。カフェの高単価での成功を見ると、安いから売れるのではない。顧客の財布・胃袋は同じであるゆえ、アルコールも含めて、消費者の価値が変化したのではないか。そしてこれまでのチェーン居酒屋が時代とともに陳腐化しているのかもしれない。

外食からみると空洞化していたアイドルタイムに商機

これまでアイドルタイムは、FF(ファーストフード)のみならずFR(ファミリーレストラン)は売上が下がり、悩みの種だった。しかし人口動態が変化し、単身者の急増、女性の独り身が増加したことからアルコールの飲み方が変わった。ビールは減少しているものの、ワインは増加、今後もワインの伸びしろはあるとされる。それにうまく乗れば、今後も「ちょい飲み」は市場拡大するであろう。昭和の高度成長期に流行ったスーダラ節のように「ちょいと一杯のつもりで飲んでいつの間にやらはしご酒」とは違った飲み方ではあるが・・・

ERI IKEDA

フードジャーナリスト

神戸女学院大学音楽学部ピアノ科卒、同研究科修了。その後、演奏活動,並びに神戸女学院大学講師として10年間指導。料理コンクールに多数、入選・特選し、それを機に31歳の時、社会人1年生として、フリーで料理界に入る。スタート当初は社会経験がなかったこと、素人だったこともあり、なかなか仕事に繋がらなかった。その後、ようやく大手惣菜チェーン、スーパー、ファミリーレストランなどの商品開発を手掛け、現在、食品業界で各社、顧問契約を交わしている。執筆は、中食・外食専門雑誌の連載など多数。業界を超え、あらゆる角度から、足での情報、現場を知ることに心がけている。フードサービス学会、商品開発・管理学会会員

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