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エミー賞予想で「SHOGUN 将軍」最有力。異例の日本人複数ノミネート確実か。浅野忠信も喜びリポスト

斉藤博昭映画ジャーナリスト
「SHOGUN 将軍」がエミー賞を席巻する?

ここ日本では、アカデミー賞ほど大きく騒がれないが、エンタメ界で最重要の賞のひとつがTV界の祭典であるエミー賞。アメリカのショービジネスではエミー賞(TV)、グラミー賞(音楽)、アカデミー賞(映画)、トニー賞(舞台)の4つの栄冠をなしとげた人を、賞の頭文字を取って「EGOT」(Oはオスカー=アカデミー賞)と讃える。このEGOTに到達した人は、現時点でオードリー・ヘップバーンなど19人しかいない。

これらの賞に日本人が絡むと話題を呼ぶが、今年のエミー賞は、日本のメディアを大きく賑わせることになりそうだ。その作品は、「SHOGUN 将軍」。プライムタイム・エミー賞のノミネート発表は7月17日、授賞式は9月15日(ともに現地時間)ということで、現在、ノミネート予想が盛んに行われているが、「SHOGUN」が各部門で最有力の候補として挙げられている。複数ノミネートは確定的。受賞も最短距離にあると言っていい。製作のFXによる賞のキャンペーンは加速しそうだ。

エミー賞は多くの部門を擁し、過去にも日本人や日系人、日本作品の受賞はある。メイクアップや美術、音響編集賞などだが、俳優の受賞はゼロ。ノミネートも直近では、2007年、ドラマ・シリーズ部門助演男優賞のマシ・オカ(「HEROES」)だった。ゆえになかなか日本では大きく報道されなかった。

業界誌Varietyのエミー賞予想記事を、「SHOGUN」で薮重を演じた浅野忠信がポストしていた。

浅野はドラマ・シリーズ部門助演男優賞で予想の1位にランクされている。ノミネートはもちろん、受賞も最有力の位置にいるということ。先日、浅野にインタビューする機会があったが、エミー賞の行方を冷静に受け止めつつ、高まる期待を抑えきれない…という雰囲気だった。

エミー賞には「コメディ・シリーズ」「ドラマ・シリーズ」「リミテッド・シリーズ」の主要3部門があり、これらの作品賞や俳優賞が特に話題となる。今年のドラマ・シリーズ部門を席巻しそうなのが「SHOGUN」。作品賞の予想でもトップになっている。

Varietyの予想記事より(以下、同様)
Varietyの予想記事より(以下、同様)

「SHOGUN」はプロデューサーを真田広之が務めたのも成功の要因のひとつ。その真田は主人公の武将・吉井虎永を演じており、主演男優賞の部門で予想1位。W主演ともいえる、イギリス人航海士、按針を演じたコスモ・ジャーヴィスも2位で、「SHOGUN」が2トップである。なお真田がノミネートされれば、2022年の「イカゲーム」のイ・ジョンジェ以来、アジア系では2人目となる。

そして主演女優賞では鞠子役のアンナ・サワイ1位予想。第9話での演技が絶賛されており、受賞すれば、この部門ではアジア系として初の快挙となる。

助演女優賞部門では、3位に落ち葉の方を演じた二階堂ふみ4位穂志もえかと、2人が上位に入っている。穂志が演じた藤(虎永の側近の孫)の役は、とくに日本以外の視聴者で人気に火がついたとされる。

二階堂ふみがノミネートされれば、日本でも大きなニュースとなるはず。浅野忠信が1位の助演男優賞部門では、7位に平岳大がランクイン。こちらも可能性があり、ということは助演男・女優賞で日本人が4人ノミネートという快挙も夢ではない。ちなみに西岡徳馬は助演男優賞の11位、また向里祐香は助演女優賞の24位なのでやや難しそう。

「SHOGUN」は他にも監督賞や脚本賞でのノミネート・受賞が有力視されているが、この部門は日本人ではない。

エミー賞の歴史を遡ると、前述の「HEROES(ヒーローズ)」のマシ・オカの前に俳優部門で日本人がノミネートされたのが、1981年の「将軍」での三船敏郎(主演男優賞)と島田陽子(主演女優賞)、目黒祐樹(助演男優賞)だった。今回の「SHOGUN」と同じ原作。「将軍」はミニシリーズ部門で作品賞に輝き、西田真が衣装デザイン賞も受賞するも、俳優はノミネート止まりで無冠だった。島田は同役でゴールデングローブ賞を受賞したが、エミー賞は逃している。

それから43年もの時を経て、日本人俳優がエミー賞を受賞、それも複数で達成しそうな気配があるので、これから授賞式まで期待を高めながらニュースを見守ってほしい。

「SHOGUN 将軍」はディズニープラスで独占配信中
「SHOGUN 将軍」はディズニープラスで独占配信中

※文中の予想ランクは6/23時点のもの

Photo: (c) 2024 Disney and its related entities Courtesy of FX Networks

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、スクリーン、キネマ旬報、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。連絡先 irishgreenday@gmail.com

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