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アカデミー賞アニメ部門 対象31本に『ルックバック』など日本4作品。今後ノミネート入りの可能性は?

斉藤博昭映画ジャーナリスト
(c)藤本タツキ/集英社 (c)2024「ルックバック」製作委員会

前回の米アカデミー賞では、宮崎駿監督の『君たちはどう生きるか』が長編アニメ映画賞に輝き、『ゴジラ-1.0』の視覚効果賞と、日本作品の2冠が大きな話題となった。

長編アニメ賞を日本作品が受賞したのは『千と千尋の神隠し』以来、2回目。そしてノミネートは過去8回を記録する(スタジオジブリの『レッドタートル ある島の物語』を含む)。特に2013年以降で6作品がノミネート。うち『君たちは~』が受賞と、この部門は日本にとって最も期待がもてるところ。アニメ作品のクオリティという点で当然の結果ではある。

では今年度はどうなのか。11/21(現地時間)にアカデミー賞を主催する映画芸術科学アカデミーは、今年のアニメ映画部門で31作品を審査対象にエントリーさせた。そのうち日本作品は4本。『ルックバック』『きみの色』『化け猫あんずちゃん』『屋根裏のラジャー』である。

ただしアカデミー賞の対象作品の規約を満たす必要があり、これらすべてにノミネートへの道が開くわけではない。『ルックバック』はアメリカでも10/4に劇場公開されており、週末ランキング12位(劇場数:531)、『化け猫あんずちゃん』は11/15に公開され、同17位(劇場数:328)と、ともに好調。『きみの色』も12/13からLAなど一部劇場での公開が予定されるので(その後、2025年1月に本格公開)、おそらく規約は問題なし。『屋根裏のラジャー』がアメリカでは配信のみなので、どうなるか。

『ルックバック』北米用の予告編

『化け猫あんずちゃん』北米用の予告編

このうち『ルックバック』は、米映画批評サイトのロッテントマトで、批評家から100%、観客から99%のフレッシュ(賞賛)と、ほぼ満点の異例の高評価(11/24時点)。日本と同じ、いやそれ以上の絶賛で迎えられている。

では、この『ルックバック』を筆頭に、アカデミー賞の長編アニメ部門でノミネートの可能性はあるのか? 現状のところ、今年度はハイレベルの作品が多く、ちょっと難しいと言わざるをえない。何より、アカデミー賞に向けた各賞へのプロモーションが盛んになっている現在、日本作品はあまり話題になっていない。昨年の今ごろは『君たちはどう生きるか』の賞レースへのプロモーションがかなり積極的行われていた。それに比べると今年は……という感じ。

今年度の長編アニメの有力作は、ディズニー/ピクサーの『インサイド・ヘッド2』、ドリームワークスの『野生の島のロズ』といったメジャー系に、ここ数年、賞レースを席巻するNetflixが『ウォレスとグルミット 仕返しなんてコワくない!』を激推し中(Netflixには日本関連の『Ultraman: Rising』もあるが、そっちは放置されてる印象)。さらにメジャースタジオ系以外でも、オーストラリアの名監督によるクレイアニメの『メモワール・オブ・ア・スネイル』、洪水にのまれる世界をネコの視点で描いたラトビアの監督による『Flow』がノミネート入りを目指しており、この2作の完成度、テーマ性はちょっと群を抜いている。

『メモワール・オブ・ア・スネイル』 (c) Arenamedia Pty Ltd
『メモワール・オブ・ア・スネイル』 (c) Arenamedia Pty Ltd

『Flow』 (c) Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five
『Flow』 (c) Dream Well Studio, Sacrebleu Productions & Take Five

その他にもレゴムービーの『ピース・バイ・ピース』など強豪揃いの長編アニメ。現実的に日本作品のノミネートは厳しそうだが、アメリカ作品ながら日本の神山健治が監督を務めた『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』には、少し期待をかけてもいいかもしれない。ワーナー・ブラザースが賞レースへのプロモーションで動いており、今後どれくらい力を入れるかで躍進の可能性もある。もしノミネートされれば当然、神山監督もアカデミー賞授賞式に出席することになり、日本でも大きな話題となる。

『ルックバック』など日本作品が今後、投票者たちにアピールすれば……と淡い期待も抱きつつ、12/17のショートリスト発表(ノミネートに向けてさらに作品数が絞られる)を待ちたい。ここに日本作品のどれか、そして『ロード・オブ・ザ・リング~』が入るといいのだが……。

『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』 LOTR TM MEE lic NLC. (c) 2024 WBEI
『ロード・オブ・ザ・リング/ローハンの戦い』 LOTR TM MEE lic NLC. (c) 2024 WBEI

次回のアカデミー賞授賞式は2025年3月2日(現地時間)に行われる。

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、スクリーン、キネマ旬報、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。連絡先 irishgreenday@gmail.com

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