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『モアナと伝説の海2』まずアメリカで記録的ヒットの予想 ディズニーの待望の続編は、やはり強い?

斉藤博昭映画ジャーナリスト
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『モアナと伝説の海2』がアメリカで大きな記録を作り出しそうである。もともと前売りチケットが絶好調だったので予想されてはいたが、これまでのディズニー(ピクサー含む)のアニメ作品を超えていきそうな勢いになっている。

アメリカで今週末(11/29~)に公開された『モアナ2』だが、11/26火曜日のプレビュー(限定公開)で興行収入1380万ドルという数字を達成。同様の状況での『インサイド・ヘッド2』や『トイ・ストーリー2』を上回った。この週末はアメリカは感謝祭でホリデー。『モアナ2』は、感謝祭週末で1億7500万ドルという超ハイレベルの興収が予想されており、同じく感謝祭で記録を保持していた『アナと雪の女王2』の1億5000万ドルを大きく超えそう。もしこのままクリスマスシーズンまでペースを落とさなければ、今年最大のヒット作になる可能性すらある。日本では翌週の12/6から公開され、同じく数字が注目される。

今年は『インサイド・ヘッド2』も大成功を収めた。やはりディズニー・アニメーションの「パート2」の威力は絶大であると、今度の『モアナ2』も証明する。

この特大ヒットの秘密は、1作目からのインターバルにありそうだ。代表的な作品の続編までの年数を振り返ると…(カッコ内は対1作目の続編の興収)

モアナと伝説の海:8年

インサイド・ヘッド:9年 (197%)

アナと雪の女王:6年 (111%)

ファインディング・ニモ:13年 (109%)

モンスターズ・インク:12年 (128%)

トイ・ストーリー:4年 (126%)

と、基本的にかなり長い。もちろん新しいアイデアの模索、製作日数の期間などさまざまな要因があるが、続編がさらなる大ヒットとなるメインの理由は、キャラクターや世界観が時間をかけて多くの人に浸透するから。特にディズニーの場合、テーマパークを含めた多方面での浸透力がズバ抜けており、1作目をリアルタイムで観ていない人にも訴求していく。そして満を持しての続編が公開、というサイクルが完成される。

しかし『モアナと伝説の海』の場合、もともと劇場公開される予定ではなかった。最初はディズニープラスでのシリーズとして構想されていたのだ。『モアナ』は1作目がヒットしたとはいえ、爆発的な数字ではなかった(世界興収で6億8720万ドル。「アナ雪」1作目は13億超え)。ところがディズニープラスで配信されると同社で最も視聴された作品の1本となり、その人気が続編の劇場公開につながったと言われる。8年をかけた「モアナ人気」の拡大が、今回の続編の特大ヒット(まだ予想だが)を導いたわけだ。

余談だが、『トイ・ストーリー』も続編は最初はビデオソフト用に製作されたが、その出来の素晴らしさで劇場公開作に変更され、あれだけのメガヒットシリーズへと発展している。

ただひとつ懸念なのは、『モアナ2』の作品評価である。米映画批評サイトのロッテントマトでは…

『モアナ2』 批評家65% 観客87%

『モアナ』批評家95% 観客89%

ややフレッシュ(好評価)の数字を落としている。

『インサイド・ヘッド2』批評家90% 観客95%

『インサイド・ヘッド』批評家98% 観客89%

と比べると、前作ほど絶賛で迎えられていないので(数字は11/30時点)、今後どこまでヒット街道を進むのかは未知数だ。そして日本ではどれくらい数字を積み重ねられるか。『インサイド・ヘッド2』も日本では“ディズニー続編の法則”にのっとって大ヒットしたので、『モアナ2』がお正月映画の本命になるかどうかが試される。

映画ジャーナリスト

1997年にフリーとなり、映画専門のライター、インタビュアーとして活躍。おもな執筆媒体は、シネマトゥデイ、Safari、スクリーン、キネマ旬報、VOGUE、シネコンウォーカー、MOVIE WALKER PRESS、スカパー!、GQ JAPAN、 CINEMORE、BANGER!!!、劇場用パンフレットなど。日本映画ペンクラブ会員。全米の映画賞、クリティックス・チョイス・アワード(CCA)に投票する同会員。コロンビアのカルタヘナ国際映画祭、釜山国際映画祭では審査員も経験。「リリーのすべて」(早川書房刊)など翻訳も手がける。連絡先 irishgreenday@gmail.com

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