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【変身拒否したヒーローって誰?】夢に向かってド派手に爆進!スーパー戦隊とプリキュアの豪快な活躍とは?

二重作昌満博士(文学)/PhD(literature)

みなさま、こんにちは!

文学博士の二重作昌満です。

特撮を活用した観光「特撮ツーリズム」の博士論文を執筆し、大学より「博士号(文学)」を授与された後、国内の学術学会や国際会議にて日々活動をさせて頂いております。

早いもので9月も終わりを迎えました。皆さまいかがお過ごしでしょうか?

さて、今回のお話のテーマは「夢」です。

眠っている最中に見る夢ではなく、自分のなりたいものになる、やりたいことを叶える、こんな未来を掴みたい・・・といった願望を指す「夢」です。

突然ですが、皆さまの子どもの頃の夢は何でしたか?

パイロットやアイドル、宇宙飛行士、お医者さんにスポーツ選手、お菓子屋さんにお花屋さん・・・?

子どもの頃、皆さまは大きくなったら何になりたかったでしょうか?(写真はイメージ。2012年米国スミソニアン博物館内にて撮影)
子どもの頃、皆さまは大きくなったら何になりたかったでしょうか?(写真はイメージ。2012年米国スミソニアン博物館内にて撮影)

私が子どもの頃になりたかったのは、スーパーヒーロー。大好きなキャプテンアメリカを前に、サインをねだり、おしゃべりが止まりません・・・(2015年 米国カリフォルニア州ディズニーランド内で撮影)。
私が子どもの頃になりたかったのは、スーパーヒーロー。大好きなキャプテンアメリカを前に、サインをねだり、おしゃべりが止まりません・・・(2015年 米国カリフォルニア州ディズニーランド内で撮影)。

具体的な職業でなくとも、子どもの頃にこんな暮らしがしたいと思い描いていた方もいらっしゃるかと思います。

こうした「夢」を描くこと。「夢」に向かって頑張ること。それは、私達が子どもの頃に憧れた、映画やテレビ番組に登場するスーパーヒーロー達も同じでした。

宇宙飛行士になりたい、ファッションデザイナーになりたい、トップモデルになりたい、中には、将来はとんかつ屋さんになりたいなんてヒーロー達もいました。

今回ご紹介するのは、夢に向かって頑張った2人のヒーロー(ヒロイン)達。

彼女たちは性格こそバラバラですが、芯は強くいつも一生懸命。夢を掴むために、幾多もの試練をくぐり抜け邁進していった者達でした。しかしそんな彼女達の本当の強さとは、個人の力量だけでなく、仲間達との強い絆でもありました。

今回は東映制作の特撮ヒーロー番組「スーパー戦隊シリーズ」、東映アニメーション制作の「プリキュアシリーズ」の国民的人気シリーズに登場したスーパーヒーロー達に焦点を当て、当シリーズに登場した2人のヒーロー達がいかに夢をつかみ取っていったか、少し覗いていきたいと思います。

※本記事は「私、アニメや特撮にくわしくないわ」という方にもご覧頂けますよう、可能な限り概要的にお話をしておりますので、ゆっくり肩の力を抜いて、気軽にお楽しみ頂けたらと思います。
※本記事における原作者「八手三郎」及び「東堂いづみ」の表記ですが、それぞれ東映映像本部テレビプロデューサーの共同ペンネーム、東映アニメーション様による共同ペンネームであります。しかし本記事では両ペンネームに敬意を表し「先生」という呼称で統一をしております。本記事を通じてはじめてアニメ・特撮ヒーロー番組に触れる方もいらっしゃいますので、ご配慮を頂けますと幸いです。

【海賊に転向したお嬢様?】力の限りぶっ潰す!海賊の汚名を誇りとして名乗ったゴーカイピンクことアイム・ド・ファミーユって誰?

まずご紹介するのは、スーパー戦隊シリーズ。お話の本題に入る前に、当シリーズについて少しご紹介をさせてください。スーパー戦隊シリーズは、漫画家・石ノ森章太郎先生と八手三郎先生が原作の、カラフルなコスチュームを纏った5人のチームヒーローを主人公にした、東映製作の特撮ヒーロー番組のことです。1975年に第1作『秘密戦隊ゴレンジャー』が放送されて以降、『太陽戦隊サンバルカン(1981)』、『忍者戦隊カクレンジャー(1994)』、『忍風戦隊ハリケンジャー(2002)』、『海賊戦隊ゴーカイジャー(2011)』等、シリーズが継続され、現在放送中の『王様戦隊キングオージャー(2023)』まで全47作品が製作されました。

「5人揃って、ゴレンジャー!」スーパー戦隊シリーズの元祖『秘密戦隊ゴレンジャー(1975)』(筆者撮影)
「5人揃って、ゴレンジャー!」スーパー戦隊シリーズの元祖『秘密戦隊ゴレンジャー(1975)』(筆者撮影)

「人も知らず、世も知れず、影となりて悪を討つ!」『忍風戦隊ハリケンジャー(2002)』
「人も知らず、世も知れず、影となりて悪を討つ!」『忍風戦隊ハリケンジャー(2002)』

「聞いて驚けぇ!」6人の獣電竜の勇者達で構成された『獣電戦隊キョウリュウジャー(2013)』
「聞いて驚けぇ!」6人の獣電竜の勇者達で構成された『獣電戦隊キョウリュウジャー(2013)』

そんな半世紀にも渡る長い歴史を有しているスーパー戦隊シリーズですが、シリーズを通じて共通して描かれたのが「友情」です。つまり、メンバー同士の人間関係、そしてそれを構築するための連携や対立に物語の重きが置かれており、原則一人で戦うヒーローであったウルトラマンや仮面ライダー等と違い、グループヒーローであることが他の特撮ヒーローとは大きく異なる点でした。

よって、スーパー戦隊シリーズの魅力はそれぞれの能力に長けた5人の戦士達が力を合わせ、お互いに足りないところを補い合いながら、友情とチームワークで敵を打ち倒す点にあるといっても過言ではありません。皆で協力し合いながら1つの夢や目標に進み、全員のチームワークで成し遂げるのです。

さて・・・今回お話するのはスーパー戦隊シリーズ第35作『海賊戦隊ゴーカイジャー(2011)』。本作の題材は「海賊」であり、シリーズ第35作という記念すべき節目を迎えた作品でもありました。よってその内容は豪華絢爛!主人公であるゴーカイジャー達に加えて、シリーズ第1作の『秘密戦隊ゴレンジャー(1975)』から第34作『天装戦隊ゴセイジャー(2010)』までの約200人のヒーロー達が本作で登場しました。

でっかい夢は無限大!『海賊戦隊ゴーカイジャー(2011)』。当初は5人編成であったが、6人目の戦士としてゴーカイシルバー(右から三番目)が加わった。本記事の主人公は、写真左のゴーカイピンクことアイム。
でっかい夢は無限大!『海賊戦隊ゴーカイジャー(2011)』。当初は5人編成であったが、6人目の戦士としてゴーカイシルバー(右から三番目)が加わった。本記事の主人公は、写真左のゴーカイピンクことアイム。

そんな『海賊戦隊ゴーカイジャー(2011)』ですが、本作は宇宙に一大帝国を築き、破壊と略奪を行なう「宇宙帝国ザンギャック」から、「宇宙最大のお宝」を求めて地球にやって来た宇宙海賊である海賊戦隊ゴーカイジャーが地球を守る物語。

上述した『ゴーカイジャー』の物語ですが、「5人のヒーローVS悪の組織」というこれまでのスーパー戦隊シリーズの物語フォーマットは継承しつつ、「お宝探し」というミッションがヒーロー達に与えられたのが特徴でした。実は、ゴーカイジャー達は地球を守るために地球へきたのではなく、たまたま「宇宙最大のお宝」を求めて地球へきたところ、偶然ザンギャックと出会して、彼らを敵に回すことになってしまったのです。それ故、ゴーカイジャー達は聖人君子のような正義の味方ではなく、ややクセのある(見方によっては少し悪そうな)若者達の集団でした。

東映ビデオより発売された『海賊戦隊ゴーカイジャー(2011)』のBlu-ray。好評を博したゴーカイジャーは、歴代スーパー戦隊シリーズと共演した映画の他、『宇宙刑事ギャバン(1982)』とも共闘した。
東映ビデオより発売された『海賊戦隊ゴーカイジャー(2011)』のBlu-ray。好評を博したゴーカイジャーは、歴代スーパー戦隊シリーズと共演した映画の他、『宇宙刑事ギャバン(1982)』とも共闘した。

そしてゴーカイジャーが求める「宇宙最大のお宝」を手に入れるためには、これまで地球を守ってきた34のスーパー戦隊達から「大いなる力」をそれぞれ集めなければなりませんでした。そこでゴーカイジャー達はザンギャックとの戦いの傍ら、「宇宙最大のお宝」を掴むという壮大な夢のために、地球にいる34の歴代スーパー戦隊の先輩達と出会い、彼らとの交流を通じて各戦隊の「大いなる力」を入手する旅に出ます。

ゴーカイジャーが集めるのは34のスーパー戦隊の「大いなる力」。その力は歴代戦隊を模した鍵(レンジャーキー)に宿り、これを使うことで歴代戦隊への変身や、その能力を引き出すことが可能であった(筆者撮影)。
ゴーカイジャーが集めるのは34のスーパー戦隊の「大いなる力」。その力は歴代戦隊を模した鍵(レンジャーキー)に宿り、これを使うことで歴代戦隊への変身や、その能力を引き出すことが可能であった(筆者撮影)。

今回ご紹介するのは、そんなクセの強いゴーカイジャーのメンバーにおいて唯一無二のお嬢様、ゴーカイピンクことアイム・ド・ファミーユ。

ゴーカイピンクことアイム・ド・ファミーユ。アイムはファミーユ星を滅ぼされた王女であり、当初は戦闘も出来なければ家事全般もできないお嬢様だった。ゴーカイジャーの一員となったことで、強く成長していく。
ゴーカイピンクことアイム・ド・ファミーユ。アイムはファミーユ星を滅ぼされた王女であり、当初は戦闘も出来なければ家事全般もできないお嬢様だった。ゴーカイジャーの一員となったことで、強く成長していく。

アイムは、ザンギャックに滅ぼされたファミーユ星の王女でした。お嬢様育ちで天然、かつ世間知らずの節もありますが、悪意が全くなく困っている人を放っておけない優しい性格の持ち主。ここまで列挙するだけでは「お嬢様」キャラの印象が強いですが、その戦闘力はかなりのもの。身軽な動きを生かした身体能力と共に高い射撃能力を誇る上、状況に応じて衣装を変えながらザンギャックを翻弄する七変化戦法を披露する等、柔軟な発想のもとで戦闘に望むこともありました。

アイムは七変化を披露後、アバレブルーの妻・笑里と出会う。アイムは笑里考案のアバレピンクに変身(笑里も過去に七変化を経験したが、豚やビーナス像、ラフレシア等、敵の攻撃による本人が望まぬ姿が多かった)。
アイムは七変化を披露後、アバレブルーの妻・笑里と出会う。アイムは笑里考案のアバレピンクに変身(笑里も過去に七変化を経験したが、豚やビーナス像、ラフレシア等、敵の攻撃による本人が望まぬ姿が多かった)。

「もともとお嬢様だったアイムが、なぜ忌み嫌われる海賊になったのか?」。捉え方によっては「王女⇒海賊」であるため転落にも感じるかと思います。しかし、アイムが宇宙海賊であるゴーカイジャーに加入したのは、彼女の母星での悲劇と強い決意がありました。

もともと平和な星であったアイムの母星・ファミーユ星。しかしそんなファミーユ星にもザンギャックの魔の手が伸びます。ザンギャックの行動隊長ザツリグがファミーユ星に進撃を開始し、アイムの故郷は破壊され、家は焼かれ、彼女の両親は目の前で殺されます。命からがら母星を脱出したアイムが逃げ延びた先は、なんと海賊戦隊ゴーカイジャーのもとでした。

「私(わたくし)を仲間にして下さい!海賊になりたいんです!」(アイム)

「ばぁっかじゃない!お姫様なんかにできるわけないよ!」(ルカ・ゴーカイイエロー)

「どうしてそんなに海賊になりたいの?」(ハカセ・ゴーカイグリーン)

「私の故郷はもうありません。けれど、他の星に逃げ延びた方はいらっしゃいます。その方達が、ファミーユ星の誇りを持ち続けられるよう、私は象徴として生き続けたいのです。」(アイム)

「だったら海賊なんかじゃダメだろ?」とゴーカイジャーのリーダー、マーベラス(ゴーカイレッド)が問う中、アイムは首を横に振ります。アイムが手に握っていたのは、マーベラスの顔と共に賞金が掲載された手配書でした。

「いいえ。海賊だから良いのです。だって・・この手配書に顔が載れば、私が生きて、ザンギャックと戦っているのを見せられますから。」(アイム)

つまり、アイムが海賊であるゴーカイジャーに加入したのは、逃げ延びた同胞に自分の生存を知らせるためでした。アイムは海賊戦隊ゴーカイジャーに加入しますが、銃を撃てば反動でひっくり返る、剣を持たせれば重さで振り回される、炊事洗濯は出来ない、マイペースすぎてタイミングが合わない等の状況でした。

しかし、ゴーカイジャー達が彼女を次第に受け入れていったのは、彼らにはないものをアイムが持っていたからでした。

アイムが加入する以前、血気盛んなゴーカイジャー達は喧嘩をよく起こしていた中、アイムと共に旅をするようになってからは、その上品かつ朗らかな雰囲気故か、チーム内での空気感も良くなり、結束力が高まったのです。

アイムはその後、ハカセ(ゴーカイグリーン)と共に海賊船内(ゴーカイガレオン)の家事全般と料理を担当するようになり、一人前の戦士として成長します。その後、地球でのザンギャックとの戦いを通じて、歴代のスーパー戦隊の先輩達、とくに同じピンクを名乗る戦士達との交流を深めていきました。

ゴーカイジャーは宇宙海賊であるが故に、先輩のスーパー戦隊達からも疑惑の目で見られることも多く、時に歴代戦隊の力を宿した「レンジャーキー」を巡り対立していた。最終的には先輩達の信用を勝ち取り、共闘する。
ゴーカイジャーは宇宙海賊であるが故に、先輩のスーパー戦隊達からも疑惑の目で見られることも多く、時に歴代戦隊の力を宿した「レンジャーキー」を巡り対立していた。最終的には先輩達の信用を勝ち取り、共闘する。

順調に歴代スーパー戦隊の先輩達から「大いなる力」を集めていく中、とある事件をきっかけに物語は重大局面を迎えることになります。

それは、ファミーユ星を滅ぼしたザツリグの地球襲来でした。地球での度重なる失敗に業を煮やし、ましてや息子をゴーカイジャーに殺されたザンギャック皇帝が、ゴーカイジャー抹殺のために差し向けたのです。

普段は上品かつ穏やかな性格のアイムでも、ザツリグを目の前にすると大きく取り乱しました。「一緒にやるぞ!」というジョー(ゴーカイブルー)の制止も聞かず、我を失ったかのようにアイムは変身してザツリグに牙をむきます。しかし、たくさんの星々を滅ぼしてきたザツリグの戦力は圧倒的。ゴーカイジャーは敗北を喫します。

「ご覧になっていて下さい。今度こそ、私のこの手で、敵を取ってみてます。」(アイム)

アイムはゴーカイジャーを去る決意をし、船長であるマーベラス(ゴーカイレッド)が普段腰掛けている船内の席に一礼します。

「ありがとうございました」(アイム)

「どこに行く気だ?」(マーベラス)

アイムの動向の異変に気がついたのはマーベラスでした。刺し違える覚悟で母星の仇であるザツリグに戦いを挑もうとするアイムの事情を知ったゴーカイジャーは団結します。

「星空の向こうに、お前を支えにしてるやつらがたくさんいるんだろ?そいつらのためにも、一人で死ににいくわけにはいかないだろ?・・・アイム、顔を上げて前を見ろ!俺達がいるだろ!」(マーベラス)

「皆さん、私に力を貸して下さい!ザツリグを倒すために!」(アイム)

6人のゴーカイジャー達はザツリグを倒すために団結し、再戦を挑みます。

「私の故郷を・・・たくさんの人々の幸せを奪った貴方を、絶対に許しません!」(アイム)

しかし強力な武器を保有するザツリグを倒すのは簡単ではありませんでした。ところがザツリグの武器の仕組みに気がついたゴーカイジャー一同は作戦を立案し、功を奏します。

「お父様、お母様、今こそ無念を晴らします。」(アイム)

とどめの一撃を加え、ゴーカイジャーはザツリグを倒すことに成功しました。

「宇宙に散った・・・命のために、私は強く生き続けます。」(アイム)

アイム(ゴーカイピンク)は仲間達との絆と共に、故郷を滅ぼした仇敵への復讐を果たす。しかし「宇宙最大のお宝」を手に入れるための彼女の戦いは、これで終わりではなかった。
アイム(ゴーカイピンク)は仲間達との絆と共に、故郷を滅ぼした仇敵への復讐を果たす。しかし「宇宙最大のお宝」を手に入れるための彼女の戦いは、これで終わりではなかった。

ザツリグを葬ったこの戦いの後も、ザンギャックは次々に新たな刺客を地球に送り込みます。しかし、ゴーカイジャー達の強い友情と結束力でこれらを退け、ついに「宇宙最大のお宝」を手に入れるために必要な、34のスーパー戦隊の大いなる力を全て集めることに成功します。

ゴーカイジャーが求めてきた「宇宙最大のお宝」。それは宇宙を自在に作り変えることのできる力を秘めていました。つまり、宇宙を思い通りにできる上、ザンギャックの存在そのものも消去できる。過去も思い通りに出来る上に死んだ人達も生き返る・・・それは滅ぼされたアイムの母星の復興も可能であることを意味していました。しかしそれには条件がありました。

条件とは、34のスーパー戦隊存在そのものの消滅でした。そのお宝を使えば200人近くのヒーロー達の命の消失を意味しており、ゴーカイジャー達は悩みます。さらに、ザンギャックは総力を挙げて地球に総攻撃を仕掛け、街は大破壊を被り、ゴーカイジャー達にとって極めて不利な状況に追い込まれてしまいました。そんな状況の中、「宇宙最大のお宝」を使えば、苦しい思いをせずとも、簡単にザンギャックを消去できる上、地球は守れるのですが・・・。

・・・ゴーカイジャー達が出した結論は、「宇宙最大のお宝は使わない」でした。ゴーカイジャー達は34のスーパー戦隊との交流を通じ、彼らの思いと戦いの歴史、それが地球の人々の希望であることを学んだ上での判断でした。

「この星には、スーパー戦隊が必要だ。」(ジョー・ゴーカイブルー)

辛い過去を否定すれば、これまで死に物狂いで戦ってきた今の自分を否定することになるー。過去を変えれば平和な未来は約束されるが、決められた未来なんてつまらない。

「宇宙最大のお宝」は、悩みを吹っ切った鎧(ゴーカイシルバー)に破壊されました。その後、ゴーカイジャー達はザンギャックに最後の戦いを挑み、皇帝を滅ぼすことに成功します。新たなお宝を探すため、地球を去る決意をしたゴーカイジャー達。海賊旗を掲げ、彼らが乗り込む海賊船(ゴーカイガレオン)は出発します。ゴーカイジャー達を見送ったのは、アカレンジャー(秘密戦隊ゴレンジャー)をはじめとする歴代のスーパー戦隊の勇者達でしたー。

宇宙へと旅立つゴーカイガレオン(海賊船)を、歴代の勇者達は感謝を胸に見送る。その中には『激走戦隊カーレンジャー(1996)』のシグナルマン、『特捜戦隊デカレンジャー(2004)』のドギーの姿もあった。
宇宙へと旅立つゴーカイガレオン(海賊船)を、歴代の勇者達は感謝を胸に見送る。その中には『激走戦隊カーレンジャー(1996)』のシグナルマン、『特捜戦隊デカレンジャー(2004)』のドギーの姿もあった。

「ゴーカイジャー・・よくやってくれた。掴み取れよ!今度は、君達の夢を!」旅立つゴーカイジャーを最後に見送ったのは、初代スーパー戦隊『秘密戦隊ゴレンジャー(1975)』のアカレンジャー(海城剛)だった。
「ゴーカイジャー・・よくやってくれた。掴み取れよ!今度は、君達の夢を!」旅立つゴーカイジャーを最後に見送ったのは、初代スーパー戦隊『秘密戦隊ゴレンジャー(1975)』のアカレンジャー(海城剛)だった。

『海賊戦隊ゴーカイジャー(2011)』は「宇宙最大のお宝」という壮大な夢を求めて、6人の若者達が力を合わせて夢を叶えていく物語。その中でも母星を失った悲劇を抱えたアイムは、仲間達と力を合わせ、「仇を討つ」という悲願を達成します。どんな夢や悲願も、たった一人では叶えられない。みんなで夢を掴む意義と尊さを、『海賊戦隊ゴーカイジャー(2011)』は描いていたのです。

【初変身にして変身拒否!】夢はトップモデル志望!天の川きららが変身する星のプリキュア・キュアトゥインクルって誰?

続いてご紹介するのは、プリキュアシリーズ。当シリーズにも自らの夢のために戦い続けたスーパーヒーローがいました。お話に入る前に・・・少しだけプリキュアシリーズのことをご紹介させてください。

プリキュアシリーズは、東堂いづみ先生の原作で2004年に放送が開始された東映アニメーション制作の『ふたりはプリキュア』を起点とするアニメシリーズ。

『ふたりはプリキュア(2004)』の放送開始以降、同タイトルの派生作品は約3年に渡り放送された。現在、写真3作品のBlu-ray BOXが株式会社マーベラスより発売中(筆者撮影)。
『ふたりはプリキュア(2004)』の放送開始以降、同タイトルの派生作品は約3年に渡り放送された。現在、写真3作品のBlu-ray BOXが株式会社マーベラスより発売中(筆者撮影)。

『ふたりはプリキュア』は、ベローネ学院(中学校)のラクロス部のキャプテンでスポーツ万能な女の子、美墨なぎさ(キュアブラック)と、成績トップで科学部部長の優等生、「うんちく女王」の雪城ほのか(キュアホワイト)がタッグを組み、伝説の戦士・プリキュアとなってドツクゾーン(敵組織)と戦う物語。

プリキュアシリーズは今年で誕生20周年。おもちゃ屋さんに行けば、歴代プリキュアシリーズの商品が多数販売されている。あなたが一番好きなプリキュアは誰でしたか?
プリキュアシリーズは今年で誕生20周年。おもちゃ屋さんに行けば、歴代プリキュアシリーズの商品が多数販売されている。あなたが一番好きなプリキュアは誰でしたか?

「女の子だって暴れたい!」というキャッチコピーのもとで誕生した『ふたりはプリキュア』は大ヒットを記録し、『ふたりはプリキュア Max Heart (2005)』や『ふたりはプリキュア Splash Star(2006)』と派生作品が次々に放送され、以降も『Yes!プリキュア5 (2007)』、『スマイル!プリキュア(2012)』、『ヒーリングっどプリキュア(2020)』と世代を跨ぎながらシリーズ化されるようになりました。

歴代のプリキュアシリーズのBlu-ray BOXは株式会社マーベラスより発売中(一部生産終了の商品もあります。筆者撮影)
歴代のプリキュアシリーズのBlu-ray BOXは株式会社マーベラスより発売中(一部生産終了の商品もあります。筆者撮影)

また今年2023年にプリキュアはシリーズ誕生20周年を迎え、『ひろがるスカイ! プリキュア(2023) 』が現在放送中であると共に、9月15日よりシリーズ20周年記念映画である『プリキュアオールスターズF』も公開中である等、シリーズの勢いはまだまだ留まるところを知りません。

そんな20年の歴史を持つプリキュアシリーズにおいて、今回ご紹介するのはプリキュアシリーズ第12作目『Go! プリンセスプリキュア(2015)』。本作は「プリンセス(お姫様)」を題材に、世界を絶望に包もうとする邪悪の集団「ディスダーク」から、変身アイテム「ドレスアップキー」を手にした4人のプリキュアで編成された「プリンセスプリキュア」が人々の夢と希望を守る物語。

強く!やさしく!美しく!『Go! プリンセスプリキュア(2015)』。写真右が本記事の主人公・キュアトゥインクル(筆者撮影)
強く!やさしく!美しく!『Go! プリンセスプリキュア(2015)』。写真右が本記事の主人公・キュアトゥインクル(筆者撮影)

本作において重要なキーワードとなるのは「夢」です。『Go! プリンセスプリキュア(2015)』の物語は、悪の組織から人々の夢を守るプリキュア達の攻防が描かれる傍ら、主人公である4人のプリキュア達の夢にも焦点が当てられ、夢の実現のために苦悩する彼女たちの姿が描かれていたことも特徴でした。あるプリキュアは信じていた存在から心ない一言をかけられ絶望し、またあるプリキュアは家族の想いと自分の夢との間で苦悩した者もいました。

アクションシーンだけなく、戦うプリキュア達の心情に着目した濃厚なドラマも展開された『Go! プリンセスプリキュア(2015)』。今回は本作3人目のプリキュアであるキュアトゥインクル(天の川きらら)をご紹介します。

『Go! プリンセスプリキュア(2015)』に登場するプリキュアは4人。左からキュアマーメイド、キュアトゥインクル、キュアスカーレット、キュアフローラ(筆者撮影)。
『Go! プリンセスプリキュア(2015)』に登場するプリキュアは4人。左からキュアマーメイド、キュアトゥインクル、キュアスカーレット、キュアフローラ(筆者撮影)。

天の川きららはノーブル学園に通う中学1年生(13歳)の少女。星のプリキュアである「キュアトゥインクル」に変身する3人目のプリキュア。スーパーモデルである母(ステラ)の影響を受け、自らも母のようなトップモデルになるために、学業生活の傍らモデル活動もしています。マイペースかつ自由奔放な性格ですが、夢に一直線な努力家でもあります。自分の夢に一生懸命かつモデル活動に熱中している反面、周囲から「話しづらい人」と思われてしまうような協調性に乏しい点があるのが玉に瑕ですが、本質は良い子です。同学園に通う他のプリキュア達とも、学園での寮生活やプリキュアとしての活躍を通じて友情を深めていきました。

・・・実はこのキュアトゥインクル、先述したとおりマイペースかつ自由奔放な性格。なんとプリキュアに初変身した直後に、プリキュアとしての活動を拒否し、変身道具を仲間達に2回も返却するという前代未聞の行為に出ました。これまでプリキュアになりたくてもなれず、皆と同じように変身できないことに苦悩した人物は過去のシリーズにいたのですが、きららは「変身拒否」という斬新な選択肢を披露したのです(まあ、いきなり「ヒーローになって一緒に戦うぞ!」と言われてすぐに了承する方が、現実的な目線で見れば不自然かも知れませんが・・・)。

しかし、それは決して他のプリキュアを困らせたいという意地悪な意図ではありませんでした。彼女の夢は、母のようなトップモデルになること。それ故、多忙なモデル活動に専念する傍ら、プリキュアと兼業できるか、その両立に悩んでいたことが発覚します。しかし、自分のモデルオーディションに合格するために一生懸命知恵を貸してくれたキュアフローラ(はるか)の助言に心を動かされ、トップモデルになることと同じくらい大事なものとして、プリキュアになることを決意します。

当初は多忙なモデル活動を理由にプリキュアになることを拒否したきらら。しかし、はるか(右)の助言でオーディションに合格したことを機に考えを改め、プリキュアとしても活動することを決意する(筆者撮影)。
当初は多忙なモデル活動を理由にプリキュアになることを拒否したきらら。しかし、はるか(右)の助言でオーディションに合格したことを機に考えを改め、プリキュアとしても活動することを決意する(筆者撮影)。

「200%の力を出せば、モデル業もプリキュアも兼業できる。」これらに加えて学業ですから、実質三足のわらじを履いていた彼女。プリキュアとしての数々の戦いを経ながら、新しい力を手に入れたり、かけがえのないルームメイトを得たりと(4人目のプリキュア・キュアスカーレットことトワ)、どんどんきららは強くなっていきます。モデル活動も順調だった彼女ですが、その後きららのモデル活動を根幹から揺るがす重大事件が起ころうとは、彼女は知る由もありませんでした。

きらら(写真中央)の夢は、トップモデルになること。幼少期にスーパーモデルである母「ステラ」のステージ上での輝かしい姿を見て、自分もモデルになりたい、同じステージに立ちたいと願うようになった。
きらら(写真中央)の夢は、トップモデルになること。幼少期にスーパーモデルである母「ステラ」のステージ上での輝かしい姿を見て、自分もモデルになりたい、同じステージに立ちたいと願うようになった。

ある日、モデル活動とプリキュアで多忙を極めるきららのもとに、同じ事務所の後輩である明星かりんという女の子がやって来ます。彼女の夢は「きららのようなモデルになること」。人気モデルとして活動するきららの仕事模様を学ぶためにやってきたかりんを、きららは大切に思うようになります。ちょうどその頃、ニューヨークで開催されるファッションショー「ジャパンコレクション」へのきららの出演が決定し、いざ出発日を迎えた当日に大事件が発生しました。

それは、プリキュア達と敵対する「ディスダーク」がかりんを捕らえてしまったのです。ニューヨーク行きの飛行機の時間が迫り、他のプリキュア達はきららに「ここは自分達に任せて、早く飛行機に乗り込む」よう背中を押されます。

しかし、きららの選択はかりんの救出でした。自分をあれだけ慕ってくれたかりんの夢を「自分の手で守りたい」と思ったきららは、海外での大舞台を犠牲にしてプリキュアに変身することを選びます。見事カリンを救出したきらら。しかし、きららはニューヨーク行きの飛行機に乗ることは出来ませんでした。そんなきららを待ち受けていたのは、彼女のモデル生命を揺るがす大きな困難でした。

依頼を受けた大舞台での活躍を放棄してしまったために、きららは信用を失い、国内の仕事さえ干されてしまったのです。彼女はモデル業を休業してプリキュアとしての活動に専念しますが、きららがモデル業を休業した理由は「200%の力でもモデル業もプリキュアも両立できなかった」自分へのけじめでした。

そんなきららの心情を案じた他のプリキュア達は、彼女のために学内での「ドリームファッションショー」をサプライズで企画します。ステージ上に登壇し、自らの夢をコスチュームで披露する生徒達(お姫様、絵本作家等)の中には、モデルとして堂々と立つかりんの姿がありました。このショーを通じてトップモデルになる夢を再確認したきららは、顔見知りの世界的デザイナーであるボワンヌのオファーを受け、専属モデルとして起用され春にはパリへと渡るように告げられます。

それは、春までのプリキュアとしての活動の終了と、大好きな仲間達との別れを意味していました。

きららはその後、プリンセスプリキュアの一員として「ディスダーク」と戦い続け、春までに無事その戦いを終えることが出来ました。最後のお茶会を終えたきららは、その後パリへと旅立ったのでした。

あれからどれだけの月日が流れたのでしょうー。パリのエッフェル塔が美しい夜景をバックに立っていたのは、夢を追いかけ続け、大人になったきららの姿でしたー。

プリンセスプリキュア一同は、ディスダークとの戦いを終えた後、変身アイテム『プリンセスパフューム』(右)とドレスアップキー(左)を返却する。しかし大人になったきららの手には、新たな夢の鍵が輝いていた。
プリンセスプリキュア一同は、ディスダークとの戦いを終えた後、変身アイテム『プリンセスパフューム』(右)とドレスアップキー(左)を返却する。しかし大人になったきららの手には、新たな夢の鍵が輝いていた。

本作3人目のプリキュアである天の川きららは、トップモデルになるという大きな夢のもとで努力を重ね、プリキュアとしての活動も両立させます。しかし、その夢への挑戦も決して順風満帆ではなく、彼女自身も一度は夢を失いました。そんな彼女を支えたのは、同じプリキュアである仲間達であり、また彼女を慕う大切な後輩でした。プリキュアとしてのきららの活躍は、これで終わったわけではありません。『Go! プリンセスプリキュア(2015)』の放送終了後も、数々のプリキュアが誕生してそれぞれの時代を守り抜いていく中、時にキュアトゥインクルをはじめとするプリンセスプリキュアも、後輩達の加勢に駆けつけることもありました。

そして今年、プリキュアシリーズは誕生20周年を迎えます。現在全国の劇場にて公開中のプリキュアシリーズ20周年記念映画『プリキュアオールスターズF』では、総勢78人のプリキュアが結集し、地球の危機に立ち向かいます。その中には、キュアトゥインクルの姿も・・・?心躍る彼女の活躍を、映画館で是非確かめてみて下さいね。

最後までご覧頂きまして、誠にありがとうございました。

現在公開中の映画『プリキュアオールスターズF』。本作では全78人の歴代プリキュア達が結集する。いきものがかりさんの主題歌「うれしくて」に、涙が止まりません(MOVIXにて撮影)。
現在公開中の映画『プリキュアオールスターズF』。本作では全78人の歴代プリキュア達が結集する。いきものがかりさんの主題歌「うれしくて」に、涙が止まりません(MOVIXにて撮影)。

(参考文献)
・上北ふたご、『プリキュアコレクション Go!プリンセスプリキュア 1』、株式会社講談社
・伊藤裕太郎(てれびくん編集部)、『愛蔵版 海賊戦隊ゴーカイジャー 超全集』、小学館
・菅家洋也、『講談社シリーズMOOK スーパー戦隊 Official Mook 21世紀 Vol.11 海賊戦隊ゴーカイジャー』、株式会社講談社

博士(文学)/PhD(literature)

博士(文学)。日本の「特撮(特殊撮影)」作品を誘致資源とした観光「特撮ツーリズム」を提唱し、これまで包括的な研究を実施。国内の各学術学会や、海外を拠点とした国際会議へも精力的に参加。200を超える国内外の特撮・アニメ催事に参加してきた経験を生かし、国内学術会議や国際会議にて日本の特撮・アニメ作品を通じた観光研究を多数発表、数多くの賞を受賞する。国際会議の事務局メンバーのほか、講演、執筆、観光ツアーの企画等、多岐に渡り活動中。東海大学総合社会科学研究所・特任助教。

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