また再びの緊急事態宣言、それでも特別定額給付金は出ないのか
3ヶ月ぶり3回目の緊急事態宣言
政府は23日、大阪府、兵庫県、京都府、東京都の4都府県に対して、今月25日から来月11日までの間、緊急事態宣言を出すことを決定しました。
この緊急事態宣言に対応して、飲食店に対する時短営業や休業要請が想定されるほか、大規模商業施設への休業要請なども含めた措置が行われる見込みです。各都府県によって状況や対応は異なりますが、例えば大阪府に関しては「府内の酒類を提供する飲食店に休業要請を行う一方、提供しない場合は午後8時までの時短要請を行う方向」(NHK)など、まん延防止よりも一段と厳しい内容になることは間違いありません。
ただ、これらの要請は営業補償とセットで行われます。例えば東京都は「大型商業施設には20万円、施設のテナントには2万円」「飲食店への協力金は、今の「まん延防止等重点措置」と同様に、規模や売上高などに応じて店舗ごとに1日当たり4万円から最大20万円」(NHK)と具体的な案が出てきており、閉店が続く飲食店を守る動きとセットで、事業者が要請を受けやすい状況を作ろうとしています。
「まん延防止」とはいったい何だったのか
筆者は、「まん延防止」施策が効かずに「緊急事態宣言」が出ることになった理由は、主に2つあると考えています。
まず第一に、「まん延防止」施策が「飲食店」にスポットを当てすぎたことです。確かに飲食店における会食や宴会といった場面でのクラスタは多く報道されました。一方で、昨年12月に発生した807件のクラスタを政府分科会が分析した結果では、医療機関や福祉施設での発生が45%を占めており、飲食店などのクラスタは約2割に留まっています。
そして二つ目に新たな制度である「まん延防止」に対して企業・事業者がテレワークなどを十分に講じなかったこともあるでしょう。これは一概に企業・事業者が責められるものではなく、上掲のようにスポットが「飲食店」にスポットを当たりすぎたことに加え、地方自治体ごとに独自の緊急事態宣言を出したりすることで多くのコロナ対策の「状態」が生まれ、企業側がそれに呼応する形の勤務形態を作りにくくなったこともあります。日本生産性本部の調査によれば、4月12~13日のテレワーク実施率は、全国で19.2%であり、緊急事態宣言が発令されていた2021年1月の調査結果(22.0%)からテレワークの実施率は低下していました。これらの結果を受けて日本生産性本部は「重点措置の適用が、テレワーク実施率に影響した様子はない」と同調査報告で結論づけています。
当然ですが、テレワークを行っていれば同じ職場に集まることがないので、勤務後の飲み会や歓送迎会などは行われず、必然的に飲食店でのクラスタが発生することも減りますし、職場内での感染拡大も防ぐことが出来ます。こういった点にスポットを当てず、単に飲食店にスポットを当て続けた政府広報やマスコミの姿勢が続くようであれば、感染者の増加は免れず、政府のコロナ対策に対する不信は高まるばかりでしょう。
特別定額給付金の再支給はあるのか
ところで、緊急事態宣言といえば、第1回目の緊急事態宣言の時にセットとなっていた「特別定額給付金」はどうなるのでしょうか。麻生太郎財務大臣は昨年10月の記者会見で、緊急事態宣言下における特別定額給付金について、次のように述べています。
これは言い換えれば、緊急事態宣言が全国に発出されるようなことがあれば、連帯して国難を乗り越えるために特別定額給付金が必要という考え方にも繋がってきます。今回は、東京都、大阪府、京都府、兵庫県の4都府県に発出されましたが、仮に今後全国への宣言が波及することがあれば、特別定額給付金の再支給の可能性もあるかもしれません。一方で、緊急事態宣言の全国発出と特別定額給付金とが結びついてしまっている状況において、緊急事態宣言を全国に出せないという牽制になっていることもまた事実です。識者の中には緊急事態宣言を全国に出すべきという強い意見もありますが、財源や効果の問題から政府は特別定額給付金の再支給に否定的とも言われており、そのために緊急事態宣言の全国発出がされないようであれば、当初の支給も踏まえて「前例にならない」工夫が必要だったと考えられます。
政府与党の中には、今年10月以降、時限的な消費税減税や停止といった案など、大規模な経済的緩和施策も議論されています。いずれにせよ、緊急事態宣言が5月上旬に予定通り終えることができるのか、また特別定額給付金の再支給はあるのかは、5月頭までの国会でも議論されていくことでしょう。