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【世界の怪獣映画3選】 地域によって異なる描かれ方。そして、万国共通のカイジューの魅力を再発見!

渡辺晴陽作家・脚本家/エンタメアドバイザー
記事の写真はイメージです

映画『ゴジラ‐1.0』がアカデミー賞「視覚効果賞」を受賞したかと思えば、映画『ゴジラxコング 新たなる帝国』が公開され、テレビではアニメ『怪獣8号』も放送されていますね。

ゴジラなどに代表される怪獣が生み出された日本、キングコングなどの怪獣を生み出したアメリカ、その二大怪獣大国以外ではどんな怪獣映画が作られているのかが気になりだしました。

そんなわけで、今回は世界の怪獣映画をいくつか見てみました。
その中で興味深かった3本を紹介します。

パシフィック・リム

こちらはアメリカの映画ですが、印象的な作品だったので取り上げました。
監督したのは映画『シェイプ・オブ・ウォーター』などでも知られるギレルモ・デル・トロ監督です。
ギレルモ・デル・トロ監督はメキシコ出身の映画監督で、日本のアニメや特撮を数多く観ていることが知られています。本作『パシフィック・リム』からも、日本のアニメ・特撮作品や怪獣映画の影響を色濃く感じました。
「怪獣」を英語にすると「モンスター」と訳されることが一般的ですが、本作に登場する怪獣たちは「Kaiju(カイジュー)」と呼ばれています。そんな点も「世界の“怪獣”映画」と呼ぶのに相応しい作品だと思います。

見どころ

本作は襲い来る巨大怪獣たちを、二人乗りの巨大ロボット「イェーガー」で撃退する物語です。怪獣は世界各地に現れ、それに対抗するために世界中がイェーガーを開発しています。

前述した『シェイプ・オブ・ウォーター』や『パンズ・ラビリンス』など、ギレルモ・デル・トロ監督の作品には、数々のクリーチャーが登場します。多くが不気味な異形ですが、どれも強く印象に残る魅力的なデザインでした。
本作に登場する怪獣やロボットたちにも、そんなデザイン性が遺憾なく発揮されており、個性的な怪獣やロボットたちの戦闘シーンはとても見応えがあります。
本作は『機動警察パトレイバー』の影響を強く受けているそうですが、どことなく平成の戦隊ヒーローものの大型ロボット操縦シーンや、「ライディーン」などの作品の戦闘シーンも思い起こされ懐かしさを感じました。

また、日本の戦隊物やロボットアニメなどをそのまま実写映画にしたような構成なので、とても壮大で熱くなれるはずです。よりシリアスに見たい場合は字幕版が、ロボットアニメのような楽しさを重視するなら日本語吹き替え版がオススメです。

カイジューはどこからやってくるのか?
カイジューはどこからやってくるのか?

グエムル-漢江の怪物-

本作は韓国の映画で、2006年の公開時には韓国で大ヒットしました。
出てくる怪物(グエムル)の大きさは、日米の怪獣映画の「怪獣」ほどは大きくはありませんが、怪物が人々を襲い、逃げ惑う群衆たちのシーンの迫力は十分なインパクトがあります。韓国における社会風刺的な側面の強い作品で、部分的に日本のゴジラにも通じるような印象を受けました。

見どころ

怪物・グエムルにさらわれてしまった娘・ヒョンソの生存を信じて助けようとする父・カンドゥの奮闘を描いた本作。グエムルが誕生するきっかけとなる出来事、小さかったグエムルが大きく育ってゆく描写や、グエムルに襲われる寸前の人たちの油断した様子とその後の急展開など、映画が始まって数分の緊張感でぐっと物語に引き込まれました。

グエムルの不気味な造形や得体の知れない習性などにはゾッとしますし、カンドゥの必死な姿やヒョンソの懸命さには胸がジーンとします。また、いくつかの予想を裏切る展開には良くも悪くも驚かされるはずです。

ラストシーンの解釈は人それぞれだと思いますが、どんな解釈にせよ、おそらく目頭が熱くなることでしょう。

怪物は漢江から現れる
怪物は漢江から現れる

トロール

本作は2022年にネットフリックスで公開されたノルウェーの映画です。北欧の民話などに出てくるトロル(トロール)をモチーフにした怪獣が登場します。キングコングやゴジラを強く意識して作られているようで、近年のゴジラやコングへのオマージュとも取れるシーンもいくつか見られました。

見どころ

ヨーロッパ(北欧)では、分かりやすい怪獣映画はほとんどつくられていないようです。そんな中、ノルウェーで作られた怪獣映画ということだけでも、怪獣映画好きなら一度チェックしてみていい作品だと思います。

大まかなストーリーは、トンネル掘削が原因で目覚めたトロールが首都に向かってきて、フィンランド軍がそれを迎え撃つというもの。主人公のノラは古生物者で、トロールの対策のために政府に呼び出されます。
全体的な印象は日米の怪獣映画というより、現代を舞台にしたファンタジーという雰囲気でしたが、巨大なトロールとの闘いには怪獣映画らしい迫力がありました。

トロール対策に集められた専門家たちのレパートリーや言動、トロールの設定などを見ていると、少し粗削りに感じる部分もありました。SF要素を固めるか、社会ドラマ的にするか、モンスターパニックにするか、いずれかの方向に振り切っていればより面白かったのではないかと思えてしまいます。
ですが、場所によっては一日中日が沈まない「白夜」や、一日中日が昇らない「極夜」などもある「ノルウェー」ならではの北欧的な感性を感じられ、とても興味深い作品でした。
また、登場人物たちがみんな素直な描かれ方をしていて見やすい映画でした。

トロールと闘うために”ある武器”を装備した戦闘機は必見
トロールと闘うために”ある武器”を装備した戦闘機は必見

やはり、怪獣映画は日本とアメリカを中心とした文化のようです。ですが、それ以外の国にも怪獣映画やそれに類する作品はありました。日本やアメリカとは違った構成の怪獣映画を見ると、国や文化の違い、そして、国が変わっても変わらない怪獣への情熱が感じられてとても面白かったです。

作家・脚本家/エンタメアドバイザー

国立理系大学院卒、元塾経営者、作家・脚本家・ライターとして活動中。エンタメ系ライターとしては、気に入ったエンタメ作品について気ままに発信している。理系の知識を生かしたストーリー分析や、考察コラムなども書いている。映画・アニメは新旧を問わず年間100本以上視聴し、漫画・小説も数多く読んでいる。好みはややニッチなものが多い。作家・脚本家としては、雑誌や書籍のミニストーリー、テレビのショートアニメや舞台脚本などを担当。2021年耳で読む本をつくろう「第1回 児童文学アワード」にて、審査員長特別賞受賞。

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