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眺めているだけで楽しめるヘンテコだけどオシャレな映画3選【残暑の夜にゆるっと見たい作品たち】

渡辺晴陽作家・脚本家/エンタメアドバイザー
画像はイメージです

だんだんと夜が長くなってきて猛暑も一段落ですが、まだ残暑が厳しい毎日。
夏の疲れが出てきている人も多いはず。

今回はそんな残暑疲れの夜にピッタリの映画を紹介します。
ちなみに、今回の作品を選んだ基準は以下の3つです。

  1. 激しい展開がなくて力を抜いて見られる
  2. 空気感がオシャレで映像を見ているだけでも楽しい
  3. あまり集中せずゆるっと眺めていられる

つまり、疲れた夜にだらけながら楽しむのもOK!
たとえストーリーについていけなくなっても大丈夫。所々にナレーションが入っていたり、風変りで綺麗な映像だけでも見応えがあったりするので、ぼんやり見ているだけでも充分楽しめるような作品たちです。

実りの秋が近づいてきましたが、まだまだ残暑が続いています
実りの秋が近づいてきましたが、まだまだ残暑が続いています

アメリ(原題: Le Fabuleux Destin d'Amélie Poulain)

2001年のフランス映画で、独特な世界観が好評を博して世界的にヒットしました。フランスやヨーロッパで数々の映画賞を受賞した他、アカデミー賞やゴールデングローブ賞にもノミネートされました。

アメリ・プーランという風変わりな女性が主人公です。ある理由から同世代の子どもたちと触れ合うことができずに孤独な幼少期を過ごしたアメリは、コミュニケーションが苦手で、一人遊びや空想に耽るばかりの毎日を過ごしていました。
ところが、ある発見をきっかけに周りにいる人たちを幸せにすることに満足感を覚えて、アメリは周囲の人々と不思議なかかわりをもつようになります。そして、彼女は変わった知人や、空想の世界の友人たちに助けられながら、彼女自身の生活も変化させていきます。

みどころ

本作はフランスのパリ(モンマルトル)が舞台の映画のため、まず映像がオシャレです。カフェなどの店舗の雰囲気や、インテリア、食事など、マネしてみたくなる場面もあるはずです。アメリの独特なショートボブの髪型や、赤い服も印象に残ります。

アメリや登場人物たちの個性の強さも本作の魅力でしょう。いったい何をしたいのか分からない人たち、その奇妙な行動を見ていると、日常的な出来事を描いた作品なのにファンタジーを見ているときのような不思議な感覚に浸れます。

大まかに言うと、ナレーションが個性的な人物たちを紹介し、アメリが彼らと関わって影響し合っていくという展開を繰り返しながら進行するストーリー。エンタメ的な派手さよりも、芸術性や雰囲気に重きを置いたフランス映画らしい作品なので刺激は少なめですが、ゆったりと眺めるように見るのにはもってこいです。ただし、ある「銅像」が出てくるシーンは油断しているとちょっとドキッとするかもしれません。

アメリを見ると印象に残る物の一つがクレームブリュレ
アメリを見ると印象に残る物の一つがクレームブリュレ

アニー・ホール

1977年のアメリカ映画で、ウディ・アレン監督の代表作とも言われる作品です。本作は高く評価され、アカデミー賞ほか、数々の賞を受賞しています。

アルビー・シンガーという悲観的なところのあるコメディアンと、アニー・ホールという明るく魅力的な女性との交際中の出来事や、アルビーとアニーの過去などが断片的に語られながら進行していくロマンティック・コメディ作品です。

みどころ

オシャレな服装、街並み、車など映像的な魅力は外せませんが、それ以上に素晴らしいのがセリフの表現力でしょう。ウディ・アレン監督作はいずれもそうですが、ちょっとした比喩表現や、皮肉っぽくてコミカルな早口など、セリフ回しが素晴らしいです。クスッとくるセリフや気に入るセリフがたくさん見つかるはずです。

作品の演出も面白いです。冒頭はアルビーがこちらに語り掛けてくるシーンから始まりますし、アルビーやアニーが互いに回想の中に入り込みながら、互いの過去について意見を言うようなシーンもあって不思議な感じがします。珍しい演出というわけでもありませんが、演出の利かせ方が巧妙で、50年近く前の作品なのに目新しさすら感じられると思います。

アルビーの実家はジェットコースターの下にあったそうです。うるささを想像すると、悲観的な性格も分かる気がしますね
アルビーの実家はジェットコースターの下にあったそうです。うるささを想像すると、悲観的な性格も分かる気がしますね

ビッグ・フィッシュ

2003年のアメリカ映画で、ティム・バートン監督の作品です。映画をもとに舞台化もされていて、日本でも数度公演があり、今年は宝塚歌劇団による公演も行われました。

ウィル・ブルームの父親エドワードは、会う人たちみんなに自らのヘンテコな体験の数々を語り聞かせていました。エドワードと会った人たちはエドワードのホラ話に盛り上がり、エドワードはいつも人気者でした。
もともとはウィルもエドワードの不思議な話を聞くのが好きでしたが、大人になるとホラ話ばかり本当のことを話さない父親に半ば呆れるようになり、ウィルとエドワードには確執ができてしまいます。
あるとき、エドワードが病に倒れ、ウィルは過去にあった本当のことを知りたいと望みますが、エドワードの奇妙な物語は続きます。

みどころ

ティム・バートン監督らしい奇妙で不思議な世界観だけでも楽しめる作品です。監督の他作品と比べると、生々しい映像やダークな雰囲気は抑えられており、最初から最後まで奇妙でファンタジックな雰囲気を楽しめます。

物語のテーマを含め、ティム・バートン監督の『チャーリーとチョコレート工場』と似た雰囲気を感じますが、ブラックユーモア的な部分は控えられ、作品を通してどこか温かな空気感が漂っています。

fish story(魚の話)はホラ話という意味があって、ビッグフィッシュは大ホラ話を表しているそうです
fish story(魚の話)はホラ話という意味があって、ビッグフィッシュは大ホラ話を表しているそうです

今回紹介した3作品はどれも、あまり大きな事件は起こらず「ユーモラスなおしゃべりを聞いている」ような印象の映画なので女性からの人気が比較的高いようです。一方、刺激を求める方からは退屈だという評価を受けることもあるそう。
ですが、とにかくヘンテコでお洒落な映画なので、雰囲気だけ見ていても楽しめます。けだるい残暑の夜にぼんやりと見るには良いので、普段はこのタイプの映画をご覧にならない方も、週末や連休などのタイミングにチェックしてみてはいかがでしょうか?

もちろん、いずれの作品もしっかりと細部まで作りこまれているので、集中して見ればいろいろと発見しながら楽しめます。

しっかりと理解しながら見ようとすると一度目では良く分からなくて、二度目に見たときの方が楽しめたという人もいるような難解な部分もある作品なので、一度目はゆるっと気楽に見て、二度目にじっくり集中して見るのもオススメですよ。

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作家・脚本家/エンタメアドバイザー

国立理系大学院卒、元塾経営者、作家・脚本家・ライターとして活動中。エンタメ系ライターとしては、気に入ったエンタメ作品について気ままに発信している。理系の知識を生かしたストーリー分析や、考察コラムなども書いている。映画・アニメは新旧を問わず年間100本以上視聴し、漫画・小説も数多く読んでいる。好みはややニッチなものが多い。作家・脚本家としては、雑誌や書籍のミニストーリー、テレビのショートアニメや舞台脚本などを担当。2021年耳で読む本をつくろう「第1回 児童文学アワード」にて、審査員長特別賞受賞。

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