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タイトルだけじゃ中身は分からない? 題名のイメージよりずっと面白かった名監督による名作映画

渡辺晴陽作家・脚本家/エンタメアドバイザー

夏休みの真っ只中という方もいれば、これから夏休みやお盆休みという方もいるでしょう。
休みに入れば、いつもより時間ができるので、日ごろはあまり見ないような映画を見るのにはいい機会かもしれません。

ということで、今回はタイトルだけではなかなか手が伸びなさそうな映画を2つ紹介します。古い作品ですが、いずれも名監督による作品で、内容的にも名作と言える映画です。そのため、映画ファンならすでに知っている作品かもしれませんが、まだ見たことのない人にはオススメできる作品たちです。

本記事の画像はイメージです
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マンハッタン殺人ミステリー

こちらは1993年の映画で、いくつかの作品でアカデミー賞を受賞しているウディ・アレン監督の作品です。ラリー(演:ウディ・アレン)と妻のキャロル(演:ダイアン・キートン)の住むマンションで、一人の女性が心臓発作で亡くなります。それを知ったキャロルは、単なる女性の病死ではなく、何らかの事件が起きているのだと決めつけて勝手な捜査を始めます。

変な邦題がついてしまった洋画作品は数多く存在していますが、この映画の原題は『Manhattan Murder Mystery』で、邦題はそのMurder(殺人)だけを訳したタイトルです。
ミステリが好きな私としてはそれなりにグッとくるタイトルではあるのですが、どことなくインディーズ映画やパロディ系の映画のタイトルのように見える気もします。「殺人」と「ミステリー」の組み合わせが、ある意味で二重表現みたいになっているからかもしれません。

ところが、見始めれば映画の内容には大満足できるはずです。まず、ミステリーとしての謎と、スリル、サスペンスもあり、とてもハラハラできる映画です。
さらには、ウディ・アレン監督らしいコメディも面白く見られます。
深刻な事件を追っているはずなのにクスッと笑える場面もありますし、監督自身が演じているラリーのキャラクターも、ちょっと抜けていてチャーミングです。
セリフの一言一言にはユーモアやセンスを感じられ、映像はオシャレに作りこまれています。ラスト手前の対決シーンの舞台は非常に印象的でした。

ラリーの少し皮肉っぽいジョークや、キャロルとのやり取りがたまりません
ラリーの少し皮肉っぽいジョークや、キャロルとのやり取りがたまりません

1963年の映画で、サスペンス映画やスリラー映画の世界で伝説的な存在であるアルフレッド・ヒッチコック監督の作品です。本作は、モノクロ映画の『サイコ』と並んでヒッチコック監督の代名詞的な作品です。映画史を調べれば必ず名前が出てくるような名作なので、ご存じの方も多いことと思います。内容は、ある日突然、鳥たちが人間を襲いだすというもので、これまでにも多く作られてきた生物パニック映画の原点ともいえる作品です。

先述したように、歴史に残る名作なのでご存じの方も多いと思いますが、古いのでタイトルだけ知っていても見たことがない方もいるのではないでしょうか?

ちなみに、本作の原題は『The Birds』で、邦題は複数形ではありませんが原題を直訳したものになっています。

現代の日本のサスペンス映画やドラマ、ライトノベル作品などにはタイトルを見ればおおよそ内容が想像できるものも多くあります。
一方、少し昔の映画にはシンプルなタイトルのものも多く、タイトルだけでは中身が良く分からないかもしれません。
分かりやすいのが良いのか、映画を見るまで内容は謎のままがいいのか。その点は好みにもよります。でも、シンプル過ぎるタイトルだと、興味を持ちづらくなってしまうという欠点はありそうですね。

現代のホラーやスリラー、サスペンスなどの作品の演出や映像づくりの基礎となっている作品なので、ご覧になる際はどのシーンでゾクゾク来るかなど、演出面にも注目してみると面白いかもしれません。

作中で子どもたちが歌っているシーンには特にゾクゾクするはずです
作中で子どもたちが歌っているシーンには特にゾクゾクするはずです

きっと今回紹介した映画のほかにも、タイトルだけ見て駄作だと決めつけてしまったり、自分の好きなジャンルじゃないと避けていたりする作品は沢山あるでしょう。
長期休暇などで時間のある時にはあえて普段は見ない作品に手を出してみるのもいいかもしれませんよ。

ただし、今回の2作品は様々な媒体で歴史的映画監督に選ばれるほどの名監督による映画のためいずれも名作でしたが、あまり知られてない作品の中にはハズレだと感じてしまう作品も多くあることでしょう。
ですが、それにイライラしては、せっかくの映画体験が台無しになってしまいます。普段と違う映画を見るときには、ハズレ作品に出会うことすら楽しむ心づもりをして、おおらかな気持ちで見ましょう。

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作家・脚本家/エンタメアドバイザー

国立理系大学院卒、元塾経営者、作家・脚本家・ライターとして活動中。エンタメ系ライターとしては、気に入ったエンタメ作品について気ままに発信している。理系の知識を生かしたストーリー分析や、考察コラムなども書いている。映画・アニメは新旧を問わず年間100本以上視聴し、漫画・小説も数多く読んでいる。好みはややニッチなものが多い。作家・脚本家としては、雑誌や書籍のミニストーリー、テレビのショートアニメや舞台脚本などを担当。2021年耳で読む本をつくろう「第1回 児童文学アワード」にて、審査員長特別賞受賞。

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