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台風5号が発生し、29日の金曜日には沖縄や西日本へ接近

饒村曜気象予報士
日本の南海上の雲(7月27日00時00分)

西への張り出しが弱い太平洋高気圧

 令和4年(2022年)7月26日に東北北部が梅雨明けをし、これで梅雨がないとされる北海道を除いて、全国的に梅雨明けとなっています。

 しかし、夏の主役の太平洋高気圧の西への張り出しが弱く、太平洋高気圧の縁辺を回るように、暖かくて湿った空気が西日本から東日本に流入し続けています。

 下層に暖湿気が流入すると、大気が不安定となりますので、局地的に猛烈な雨が降る状態が続いていることになり、気象庁では「記録的短時間大雨情報」を頻繁に発表しています。

 7月26日朝に東海地方に接近した熱帯低気圧は、南側に発達した雲域を伴っており、熱帯低気圧としては消滅したものの、東海地方に記録的な大雨をもたらしました(図1)。

図1 地上天気図(左は7月26日6時、右は26日21時)
図1 地上天気図(左は7月26日6時、右は26日21時)

 7月27日0時10分には愛知県西尾市付近で約100ミリ、1時30分には三重県度会町付近で約120ミリの大雨があったとして、気象庁は記録的短時間大雨情報を発表しました。

 記録的短時間大雨情報は、7月は20回ほど発表される情報ですが、今年は、その2倍以上の45回の発表となっています。

 太平洋高気圧の縁辺をまわるように、日本付近へ向かって北上している雲の塊のうち、7月26日21時にマリアナ諸島で発生した熱帯低気圧は、今後24時間以内に台風にまで発達し、29日の金曜日には沖縄や西日本を襲うおそれがでてきました。

台風5号の発生

 令和4年(2022年)の台風は、4月に2個の台風が発生し、このうち1号が小笠原諸島に接近したあと、2か月ほど熱帯域では雲が少ない状態が続いていたため、台風が発生しませんでした(表)。

表 令和4年(2022年)の台風
表 令和4年(2022年)の台風

 その後、6月30日9時に南シナ海で台風3号が発生し、続けて、7月1日9時に日本の南海上で台風4号が発生しました。

 台風4号は沖縄本島付近を通過し、東シナ海を北上して5日6時前に長崎県佐世保市付近に上陸し、九州横断中の9時に温帯低気圧に変わっています。

 台風4号以降、熱帯域の雲の発生が少なく、台風の発生数も平年より少なく経過しているのですが、7月26日21時にマリアナ諸島で発生したばかりの熱帯低気圧が台風に発達したとすると、台風5号になります(図2)。

図2 発達する熱帯低気圧の進路予報(7月27日0時)
図2 発達する熱帯低気圧の進路予報(7月27日0時)

 マリアナ諸島の海面水温は、台風が発達する目安とされる27度を大きく上回る30度です。

 しかし、周囲に積乱雲の塊が多く存在しますので、台風のエネルギー源である周辺の水蒸気が全て台風5号に集まって暴風域をもつほどには発達しないと考えられています(タイトル画像)。

 反対に、周囲に積乱雲の塊が多く存在しますので、大雨には厳重な警戒が必要です。

 資料は少し古くなりますが、筆者の調査では、7月のマリアナ諸島の台風は、北西進したのち、東シナ海を北上するものが多く、台風5号になる可能性が高い熱帯低気圧も、7月に多い台風経路と考えられます(図3)。

図3 台風の平均経路(7月)
図3 台風の平均経路(7月)

 7月に多い台風経路ですが、過去にあった台風被害は繰り返してほしくないと思います。

 最新の台風情報の入手に努め、警戒してください。

タイトル画像、図2の出典:ウェザーマップ提供。

図1、表の出典:気象庁ホームページ。

図3の出典:饒村曜・宮沢清治(昭和55年(1980年))、台風に関する諸統計、研究時報、気象庁。

気象予報士

1951年新潟県生まれ。新潟大学理学部卒業後に気象庁に入り、予報官などを経て、1995年阪神大震災のときは神戸海洋気象台予報課長。その後、福井・和歌山・静岡・東京航空地方気象台長など、防災対策先進県で勤務しました。自然災害に対しては、ちょっとした知恵があれば軽減できるのではないかと感じ、台風進路予報の予報円表示など防災情報の発表やその改善のかたわら、わかりやすい著作などを積み重ねてきました。2024年9月新刊『防災気象情報等で使われる100の用語』(近代消防社)という本を出版しました。

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