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大阪桐蔭、甲子園10度目の優勝なるか! 投手王国のカギを握る西谷監督の起用法 そして敵は近畿にあり!

森本栄浩毎日放送アナウンサー
大阪大会を盤石の強さで勝ち抜いた大阪桐蔭。甲子園10度目の優勝なるか(筆者撮影)

 夏の甲子園の開幕まで一週間を切った。出場校の甲子園練習も始まる。各地方大会では多少の波乱はあったものの、相対的には有力校が多く勝ち抜いた印象が強い。それだけに、激しい優勝争いも予想されるが、その中心となるのはやはり大阪桐蔭だろう。

西谷監督が6投手をいかに起用するか

 率いる西谷浩一監督(54)は今春、歴代最多の甲子園通算69勝をマークし、その記録がどこまで伸びるかも注目だが、それは監督自身の采配に懸かっていると言ってもいい。と言うのも、今チームの大阪桐蔭は、西谷監督が「使える投手はこれまでで一番多い」と認めるほど、豪華な投手陣を備えているからだ。前チームは、前田悠伍(ソフトバンク)が絶対的エースで、前田の起用法だけを考えていればよかったが、今回は戦力になる投手が少なくとも6人はいる。

平嶋ら3年生を抑え、2年生コンビが躍動

 エース格の平嶋桂知(3年)は最速154キロの剛球投手で、経験値が高い。ただ、四球から失点することが多く、大阪大会では2試合(先発1、救援1)で5回1/3しか投げていない。同じく前チームから投げていた南陽人(3年)は1試合の救援登板にとどまっている。逆に、大阪大会で軸になったのが中野大虎森陽樹の2年生コンビだ。中野は闘志が前面に出るタイプで、強気な投球が持ち味。最大のヤマと目された履正社との準決勝で先発し、5回2失点で完投(コールド)勝ちした。「調子のいい者から使う」という西谷監督の言葉を借りるまでもなく、最大のライバルにぶつけたことは、現状、最も信頼を寄せている証でもある。

森は決勝を15奪三振完投で実力証明

 そして驚かされたのが、森の決勝(対東海大大阪仰星)での先発起用だ。森は昨秋、終盤の救援で頭角を現し、近畿大会3連覇の原動力となった。ただセンバツ以降はそこまでのインパクトがなく、今夏も城東工科との4回戦で初登板(先発)となった。西谷監督には、森の調子を見極める意味合いもあったのだろう。6回を2安打無失点と無難な投球で、復調を確信したと思われる。

大阪大会決勝で完投勝利の森は、大型投手にありがちな立ち上がりや制球面での不安がない。先発、救援とも力を発揮できることから、中野とともに本大会でも投手陣の中心的存在になりそうだ(筆者撮影)
大阪大会決勝で完投勝利の森は、大型投手にありがちな立ち上がりや制球面での不安がない。先発、救援とも力を発揮できることから、中野とともに本大会でも投手陣の中心的存在になりそうだ(筆者撮影)

 森に関しては、秋のように短いイニングを全力で投げるような「抑え」が向いているように感じ、さりげなく水を向けてみたが、西谷監督は「大きく育てたいという思いもあり、そのためには先発で長いイニングも投げないと」と明かした。190センチの長身から最速151キロの直球を軸に、スプリットやカットボールも一級品。昨秋、前田のドラフト1位指名を目の当たりにし「将来は自分も前田さんのように」と志も高い。大阪決勝での15奪三振1失点完投は、森の実力が本物であることを証明した。

左腕の山口と抑えの川上も台頭

 そして今夏、西谷監督に戦力として信頼を得たのが、左腕の山口祐樹(3年)と右腕の川上笈一郎(3年)の両投手である。

山口は先輩の前田そっくりなフォームで、西谷監督は「真似がむちゃくちゃうまい」と妙な?褒め方をするが、本大会では貴重な左腕として、勝負所での救援起用も視野に入れている(筆者撮影)
山口は先輩の前田そっくりなフォームで、西谷監督は「真似がむちゃくちゃうまい」と妙な?褒め方をするが、本大会では貴重な左腕として、勝負所での救援起用も視野に入れている(筆者撮影)

 山口は速球派右腕が並ぶ投手陣にあって貴重な左腕で、秋は報徳学園(兵庫)戦で救援し、制球を乱して森の助けを受けた。前田そっくりなフォームから、最速140キロの直球と変化球の緩急をうまく使う。「先発の方がいい」と話すように、大阪大会では2試合に先発して責任を全うしたが、西谷監督は「大事な場面での短い救援も」と期待する。川上は故障の影響で秋は記録員としてベンチ入りし、神宮大会から戦列に加わった。今夏は抑えで起用され、3試合に登板。早稲田摂陵との準々決勝では後半の4回を2安打1失点に抑え、ロング救援もこなした。ほかにも中心選手の境亮陽(3年)は「二刀流」の活躍も期待できる逸材だが、「投げさせる場面がない」と西谷監督は野手に専念させている。

決勝までのローテーションも?

 この6人の投手陣がいかにハイレベルかはおわかりいただけたと思うが、甲子園の高校野球はトーナメントの大会。つまり負けたら終わりの「一発勝負」というところが、面白さであり難しさでもある。今大会の出場校で、「一人エース」が皆無だったことからもわかるように、現在の高校野球は複数投手制が当たり前になっている。それが継投なのか、試合ごとに特定の投手に試合を任せる「ローテーション」のような起用をするかはまちまちだが、今チームの大阪桐蔭のように有力投手が多くいると、起用法は監督次第ということになる。「救援が向いている投手もいる」とも話す西谷監督だが、4投手を先発で起用した大阪大会を振り返ると、決勝までを見据えたローテーションを練っているかもしれない。

ラマルを外し、打順変更でつながりが出る

 いくらいい投手がいても、バックの援護がないと試合には勝てない。今チームは、神宮大会、センバツと、守りの乱れから試合を落とした。西谷監督は特に内野手のコンバートも含めた試行錯誤をしてきたが、大阪大会の中盤から、4番を打っていたラマル・ギービン・ラタナヤケ(3年)を控えに回した。ラマルはスローイングに難があり、三塁手から一塁手にコンバートされたが、一塁手はボールを触る機会も多いことから、打撃不振もあって、思い切ってスタメンを外した。これに発奮したラマルは、摂陵戦で代打本塁打を放つなど、要所で集中力を発揮している。その結果、1番の境を3番、徳丸快晴(3年)を4番に据えることで、つながりも良くなった。4番打者をベンチに置けるほど、野手陣も層が厚い。

直近5大会中4回、近畿勢に苦杯

 となると、注目は4日の抽選会。夏はひとまず3回戦までの組み合わせが決まるので、試合日、予想対戦相手がわかる。もちろん、優勝候補に挙がるような対戦相手との早期対戦の可能性もあるが、中でも当たりたくないのが近畿勢だろう。まずは、根尾昂(中日)、藤原恭大(ロッテ)らで春夏連覇した18年よりもあとに土をつけた相手を振り返る。

 21年春・智弁学園奈良)=1回戦

 21年夏・近江滋賀)=2回戦

 22年春・優勝

 22年夏・下関国際(山口)=準々決勝

 23年春・報徳学園兵庫)=準決勝

 24年春・報徳学園兵庫)=準々決勝

 5校中4校が近畿勢ということからもわかるように、近年は近畿勢が、大阪桐蔭の行く手を阻んでいる。しかも今大会の近畿勢は非常にレベルが高い。大阪桐蔭がどの段階で近畿勢と当たるか。これも優勝を占う意味では、非常に興味深い。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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