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OBの名将を迎えた東洋大姫路が、17年ぶりの近畿王者に!この優勝が、大阪のセンバツゼロを救うか?

森本栄浩毎日放送アナウンサー
近畿大会は地元の声援を受けた東洋大姫路が、17年ぶりの優勝を果たした(筆者撮影)

 秋の近畿大会決勝は、地元の大声援を受けた東洋大姫路(兵庫1位=タイトル写真)が、智弁和歌山(和歌山1位)に5-1で快勝して、17年ぶり4回目の優勝を果たした。OBの名将・岡田龍生監督(63)が就任して3年目。夏の甲子園優勝経験もある名門が見事に復活を果たし、来春に大きな期待を抱かせる快進撃だった。

天理が一挙8失点でまさかのコールド負け

 決勝の前日に行われた準決勝では、東洋大姫路が天理(奈良1位)の投手陣を打ち崩して、一挙8得点のビッグイニングを完成させるなど、7回コールドの11-3で圧勝した。お互いにエースを温存して臨み、主導権の探り合いとなったが、3点を追う天理が4回に、6番・下坊大陸(2年)の適時二塁打などで反撃し、5回に追いつく。東洋大姫路は左腕の末永晄大(2年)が先発し、序盤はよく抑えていたが、天理の対応力もさすがだ。

天理のエース・下坊は、父、兄も天理の野球部出身で、前チームから主力の一人として活躍。投球だけでなく、打撃や機動力もハイレベルで、なかなかのイケメンでもある。センバツでは要チェックだ(筆者撮影)
天理のエース・下坊は、父、兄も天理の野球部出身で、前チームから主力の一人として活躍。投球だけでなく、打撃や機動力もハイレベルで、なかなかのイケメンでもある。センバツでは要チェックだ(筆者撮影)

 3-3の同点になると、東洋大姫路の岡田監督はエース・阪下漣(2年)を投入。中軸打者を抑えて逆転を阻止するとその裏、東洋大姫路の打線が大爆発した。天理は過去2試合で好救援を見せていた伊藤達也(2年)が先頭打者への四球から崩れ、押し出しや中軸の連続適時打で突き放される。さらにエースの下坊を救援させるが、6番・白鳥翔哉真(ひやま=2年)に満塁走者一掃打を浴びた。エース投入後の展開が明暗を大きく分けたが、東洋大姫路打線の好調さが際立っていた。

智弁和歌山が2打席連続弾で、市和歌山に快勝

 準決勝第2試合は和歌山勢同士の対戦。市和歌山は3位での近畿大会出場だったが、県大会で優勝した智弁和歌山とは当たっておらず、お互いの意地もあっただろう。エース同士の先発で、真っ向勝負となった。4回までは1-1の同点で、安打も4本ずつの互角。

初戦の三田学園(兵庫)を完封して喜ぶ市和歌山の土井。半田真一監督(44)は「投手陣の中心でリーダーシップも取れる。経験値もあり、自分から崩れることがない」と、全幅の信頼を寄せている(筆者撮影)
初戦の三田学園(兵庫)を完封して喜ぶ市和歌山の土井。半田真一監督(44)は「投手陣の中心でリーダーシップも取れる。経験値もあり、自分から崩れることがない」と、全幅の信頼を寄せている(筆者撮影)

 しかし5回裏、智弁和歌山は市和歌山の土井源二郎(2年)を攻めて、1番・藤田一波(2年)の適時打で勝ち越す。さらに2番・福元聖矢(2年)が豪快にすくい上げると、打球は右翼席に飛び込む2ランとなり、この回で土井を降板させた。福元は続く打席でも2ランを放ち、4打点の大暴れ。投げてはエースの渡辺颯人(2年)が6回を1失点(自責0)と好投し、終盤の3回は速球派の宮口龍斗(2年)が無安打に抑え、智弁和歌山が6-1で同県対決を制した。近年は投手力が目を引く智弁和歌山だが、勝負所での一発は、伝統の力を感じさせる。

智弁和歌山は、連投のエースが制球に苦しむ

 決勝は名門対決となり、ともにエースが先発。打線好調の東洋大姫路は3回、3番・見村昊成(2年)の適時二塁打で先制すると、6番の白鳥と8番・渡辺裕太(1年)の適時打で計4得点。

智弁和歌山の渡辺は横浜市の出身で、前チームからエース番号を背負う。中谷仁監督(45)は「覚悟を持って来てくれた。普段の生活も含め、何も言うことはない。1番を渡す価値のある選手」と絶賛する(筆者撮影)
智弁和歌山の渡辺は横浜市の出身で、前チームからエース番号を背負う。中谷仁監督(45)は「覚悟を持って来てくれた。普段の生活も含め、何も言うことはない。1番を渡す価値のある選手」と絶賛する(筆者撮影)

 智弁和歌山の渡辺は連投の疲れもあったか、珍しく制球に苦しみ、3回途中で4安打5四死球4失点と、本来の投球ができなかった。東洋大姫路は4回にもスクイズで加点し、阪下が1失点の完投。7安打されたが、要所でギアを上げ、連打を許さなかった。

勝利の校歌を歌う東洋大姫路の岡田監督(中央)。「姫路の人は応援がすごい」と、高校時代以来の姫路での生活に感激。高1の夏に先輩たちが優勝し、高3のセンバツでは主将として4強入りした(筆者撮影)
勝利の校歌を歌う東洋大姫路の岡田監督(中央)。「姫路の人は応援がすごい」と、高校時代以来の姫路での生活に感激。高1の夏に先輩たちが優勝し、高3のセンバツでは主将として4強入りした(筆者撮影)

 岡田監督は「(東洋大姫路の)卒業生として、後輩たちがよく頑張ってくれた」と、OBらしい一言。「近畿大会に入って、打線が良くなった」と、勝因をあげた。阪下の投球は期待通りで、近畿の強豪に対しても27回2/3で1失点と微動だにせず、岡田監督が率いて全国制覇した5年前の履正社(大阪)を彷彿とさせる強力打線も、しっかりと投手陣を支える。まずは20日からの神宮大会で、来春のセンバツを占うような試合を見せられるか、注目したい。

近畿4強と、滋賀から1校はセンバツ確実

 これで近畿大会が終了し、東洋大姫路、智弁和歌山、天理、市和歌山の4強はセンバツが確実となった。残る2校は、8強敗退組から選ばれるだろう。まず、市和歌山に0-10で6回コールド負けした立命館宇治(京都1位)は、評価を大きく落とすことになりそう。逆に、2校が8強に残った滋賀勢から1校が選ばれるのは間違いない。ともに「大阪2強」の一角を崩していて、この勝利は称賛に値する。負けた準々決勝の内容では、県1位の滋賀学園がやや劣る(智弁和歌山に2-7)が、県大会では滋賀学園が8-0で滋賀短大付を破っている。過去の選出経緯を振り返っても、近畿大会の試合内容に大差がなければ、県大会まで掘り下げる傾向があった。

大院大高は、東洋大姫路の優勝が追い風?

 そして前回も触れたが、大阪2強が初戦敗退する中、唯一、8強に勝ち残った府3位の大阪学院大高が、大阪勢センバツゼロの危機を救えるかどうか。準々決勝終了時点では、試合内容が滋賀2校より落ちると書いた。2試合で得点1、失点4では、アピールポイントがいかにも少ない。ただ、敗れた相手の東洋大姫路が優勝し、それも準決勝、決勝で圧勝したことから、風向きが変わったことも確か。0-4の完敗ではあったが、よく4点に抑えた、という見方もできる。そして長く高校野球を見てきたファンなら記憶にあると察するが、22年前の近畿大会で大阪勢が全て初戦敗退しながら、翌春センバツで、府1位の近大付が選ばれたことがあった。今回の近畿大会で、大院大高は1勝している。

毎日放送アナウンサー

昭和36年10月4日、滋賀県生まれ。関西学院大卒。昭和60年毎日放送入社。昭和61年のセンバツ高校野球「池田-福岡大大濠」戦のラジオで甲子園実況デビュー。初めての決勝実況は平成6年のセンバツ、智弁和歌山の初優勝。野球のほかに、アメフト、バレーボール、ラグビー、駅伝、柔道などを実況。プロレスでは、三沢光晴、橋本真也(いずれも故人)の実況をしたことが自慢。全国ネットの長寿番組「皇室アルバム」のナレーションを2015年3月まで17年半にわたって担当した。

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