東京の三色団子、といえば外せない!老舗の「小梅団子」で浅草・向島・押上の歴史に寄り添ってみてはいかが
インバウンドのみならず、国内の観光客も後を絶たない浅草。グルメ、歴史、そして日本独自の文化が息づく活気溢れる街ですが、その華やかな現代の景色もかつては凄惨な記憶を宿した場所。
浅草花やしきから浅草寺の裏手を回って押上方面へ向かう際に渡るであろう「言問橋」。夜間はライトアップされ、引きでスカイツリーと共に撮影された写真もあれば、浅草側から渉際にはほぼ真正面にスカイツリーと対峙することができるフォトジェニックな撮影スポットのひとつ。その橋はかつて、1945年3月10日・東京大空襲の際に浅草と向島それぞれの対岸から隅田川へ飛び込めば、向こう岸に渡れば助かると思い避難してきた人々でひしめき合い、結果として言葉では表現できないほどの地獄絵図を生み出した場所。
それでも人々はやるせない気持ちと生きるという選択肢と共に歩み続けて現代に至り、その支えのひとつであったであろう和菓子屋さんのお団子が私のお気に入り。
今回はそんな時代を生き抜いてきた逞しい老舗「埼玉屋小梅」さんの「小梅団子」をご紹介。
向島にありながら埼玉と店名についているのは、初代の出身地が埼玉県だったからだとか。そしてお店を構える向島一丁目はかつて小梅町と呼ばれる、梅林の傍らにあった町の名前からとのこと。
小梅団子にはいくつか一般的なお団子と異なる特徴がございまして、まずは見た目。黒すりごま・きな粉・そして青海苔という一風変わりつつも風味豊かな素材が勢ぞろいするお団子。しかもひとつひとつがなかなか立派なサイズ感。
さらに中にはこしあんが包まれており、お餅ではなくうっすらとした滑らかな求肥。そのため、こしあんとのとろけるような食感で口の中が満たされ、一般的なお団子というよりもあんこを包んだ生菓子をいただいているような感覚です。
黒胡麻と青海苔はいずれも薫り高く野趣に富み、特に青海苔はしゃきしゃきという歯ごたえをも奥歯に伝わる贅沢な逸品。中のこしあんも、東京のお菓子らしく両者の個性に負けない甘味です。
そして意外なのがまんなかのきな粉。こちらがまた私の大好きな組み合わせでして、中には梅風味のほんのり紅色に染まった白餡が包まれているんです!梅の香りと甘酸っぱさを宿した白餡ときな粉の香ばしさが折り重なるように口の中で混ざり合い、香ばしさと酸味がお互いの作用によりまろやかになり、唯一無二ともいえる甘美が鼻まで抜けていくのです。
1本食べれば大満足、花より団子とはまさにこのことかもしれません。とはいえ、胃もたれするというわけではないのが不思議なところ。
桜が咲く頃には勿論、そこから少し時間がたったころに再び、温かいお茶と一緒にいただきたくなるんですよね。
東京の名物として、ずっと語り継がれていってほしいお団子のひとつです。