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アマゾンがAI機器でファッション市場を狙う

小久保重信ニューズフロントLLPパートナー
(写真:Shutterstock/アフロ)

米アマゾン・ドットコムは4月26日、同社の人工知能(AI)アシスタントサービス「Alexa(アレクサ)」を利用できる新たなハードウエア製品を発表した

インテリジェントな姿見

この機器の名称は「Echo Look」。従来のスピーカー型機器「Amazon Echo」と同様に、マイクとスピーカーを備え、利用者の音声命令に応じて、さまざまなサービスを提供する。

ただ、Echo Lookは、従来機にはなかったカメラとLEDフラッシュライトを搭載しており、利用者の全身画像を撮影できる。

その目的とは、姿見に映したような画像を撮り、日々着て出かける衣服の見栄えやコーディネートを確認できるようにすること。

機器の前に立って、「アレクサ、写真を撮って」と言えば、頭からつま先までの全身写真が撮れる。これを日々繰り返せば、利用者個人のルックブック(ファッション写真集)が作成できるという。こうした写真は、アマゾンが無料で配布する、スマートフォンのアプリで閲覧できるほか、SNSで友人とシェアすることもできる。

この機器では短い動画を撮影することも可能だ。「アレクサ、動画を撮って」と命令すると、撮影が始まり、アプリで映像をリアルタイムで見ることができる。機器の前に立って、ぐるりと360度回転すれば、後ろ姿も含め、あらゆる方向からの自分を確認できるというわけだ。

AIでファッションチェック

このほか、アプリでは「Style Check」と呼ぶサービスも利用できる。撮影した写真をこれに送れば、機械学習のアルゴリズムや、専門家の意見を基づく、着こなしアドバイスが受けられると、アマゾンは説明している。

なお、この機器はEchoシリーズの1つであるため、他の同シリーズ製品と同じく、Alexaが提供するさまざまな機能が利用できる。

例えば、ニュースや気象情報、スケジュール、道路混雑状況などのチェック、アラームの設定、音楽の再生といったことも可能だ。外部の企業が提供する機能も利用できるため、スターバックスにコーヒーを事前注文することも可能だ。

米スタバで伸びる「モバイルオーダー」に音声AI機能を搭載(小久保重信) -Yahoo!ニュース個人

とは言ってもEcho Lookは、ファッション専用のアシスタント機器と言えそうだ。アマゾンがなぜ、こうした機器を開発したのかと不思議ではあるが、この話題について報じている米ウォールストリート・ジャーナルの記事は、今後の展開として、2つのことが考えられると伝えている。

考えられる今後の展開

1つは、将来、ソフトウエアなどを刷新し、より広範な市場に向けて製品を改良していくというもの。

この場合、例えば、企業向けのセキュリティシステムや、ユニファイドコミュニケーション(UC)とも呼ばれるオンライン会議システムへと、用途を広げられるという。

もう1つは、アパレル市場への進出だ。同社は、プライベートブランド(PB)の拡充を図っており、昨年は「Lark & Ro(ラーク&ロー)」や「North Eleven(ノース・イレブン)」といった衣料品PBを立ち上げている。

アマゾンは、将来、Echo Lookの機能を拡充し、自社が取り扱うアパレル商品の販売につなげることも可能だとウォールストリート・ジャーナルは伝えている。

例えば、アプリを通じて、顧客にお薦めアイテムを提案することもできる。オンラインによるバーチャル試着といったサービスも、Echo Lookを使えば実現できそうだと、AIの専門家は話している。

アパレルは米eコマース市場最大のカテゴリー

米国の金融サービス会社、コーエン&カンパニーは昨年、アマゾンのeコマース事業におけるアパレル商品の売上高はすでに、コンピューター機器と非アパレルのそれを上回ったと報告した。アマゾンのアパレル事業は、衣料品販売で米最大手のメイシーズを上回る勢いだという。

市場調査会社の米コムスコアによると、米国のeコマース市場では長年、コンピューター関連機器が最も売上高の高いカテゴリーだった。しかし一昨年、衣料品、靴、ハンドバッグなどのアパレル商品の売上高が、これを上回り、同国eコマース市場で最大のカテゴリーとなった。

ネット通販、アパレルがついにコンピュータ機器を上回った事実(小久保重信) -Yahoo!ニュース個人

JBpress:2017年4月28日号に掲載)

ニューズフロントLLPパートナー

同時通訳者・翻訳者を経て1998年に日経BP社のウェブサイトで海外IT記事を執筆。2000年に株式会社ニューズフロント(現ニューズフロントLLP)を共同設立し、海外ニュース速報事業を統括。現在は同LLPパートナーとして活動し、日経クロステックの「US NEWSの裏を読む」やJBpress『IT最前線』で解説記事執筆中。連載にダイヤモンド社DCS『月刊アマゾン』もある。19〜20年には日経ビジネス電子版「シリコンバレー支局ダイジェスト」を担当。22年後半から、日経テックフォーサイトで学術機関の研究成果記事を担当。書籍は『ITビッグ4の描く未来』(日経BP社刊)など。

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