JR京葉線 通勤快速の事実上の有料特急化は、JR・利用者の双方にメリットが少ない
異例の快速復活でも、通勤快速は当面廃止
2024年1月16日、JR東日本千葉支社は、すでに発表されていた京葉線の改正後のダイヤについて快速列車2本を復活させるという異例の発表を行った。しかし、千葉市長や千葉県知事から要望が出されていた通勤快速については、復活の対象とはならずに当面は廃止となる見通しだ。
現在、蘇我駅と東京駅を40分ほどで結んでいる朝の通勤快速の廃止については、事実上の有料特急化であることは2024年1月17日付記事(JR京葉線ダイヤ改正 快速2本は異例の見直しで復活も、通勤快速は事実上の有料特急化)で詳しく触れたとおりであるが、長距離通勤者の有料特急への誘導は、本当にJR東日本のビジネスとしてメリットがある施策なのであろうか。
有料特急は座席数も少なく増収の効果は限定的か
現行ダイヤで蘇我駅を7時44分に発車する東京行の通勤快速は、3月のダイヤ改正以降は各駅停車化される。一方で、これに代わる形で蘇我駅を7時39分発の有料の特急わかしお4号が新設され、通勤快速は事実上の有料特急化される。
蘇我駅を7時44分に発車する通勤快速は、途中、新木場駅と八丁堀駅の2駅停車で東京駅までを42分で結ぶのに対して、新設される特急わかしお4号は東京までノンストップとなるが、蘇我―東京間の所要時間は46分に増加する。
筆者は2日ほど前に、海浜幕張での会議に参加したという知人から特急列車の海浜幕張停車の様子を目撃したという話を聞いた。知人によると海浜幕張駅で特急列車を目撃したのは東京方面への帰途の際で「特急列車は1両に10~20名程度の乗車で、これが5両編成だと全体で50~100名程度の乗車に見えた。しかし、車内検札のため車掌が2名乗務していた」と話す。
通勤快速から乗客を誘導する有料特急も5両編成で、座席数は全席指定で約300席。一方で、通勤快速のほうは10両編成で座席数は約500席となるが、立ち席客も含めて1800人が乗車するとすれば、有料特急の輸送力はわずか6分の1程度だ。乗客を有料特急に誘導したとしても客単価は6倍とはならず、売上の大きな増加となることは考えにくい。さらに車掌も2名乗務となることからコストも増すことになる。
また、有料特急は、京葉線内で東京駅よりもむしろ利用価値が高いと思われる東京メトロ有楽町線と東京臨海高速鉄道りんかい線との乗換駅である新木場駅と、東京メトロ日比谷線との乗換駅である八丁堀駅を通過することから、通勤快速から乗客を誘導できるとしても効果は限定的だろう。
(了)