日本最安運賃・黒字経営で話題 岡山の宇野バス 終点の片上は廃止された旧片上駅の駅前ロータリーだった!
岡山県には、初乗り100円という日本最安の運賃を維持しながら黒字経営を続けるバス会社、宇野自動車(通称・宇野バス)がある。「宇野」の名称は、岡山県玉野市に同様の地名がありJR宇野線の終点は宇野駅であるが、この地名の宇野とは関係なく、創業家が宇野家であることから宇野バスであるという。筆者がこの宇野バスに岡山駅から岡山県東部の片上まで乗車したことは2024年7月20付記事(日本最安「100円運賃で黒字経営」、岡山のバス会社・宇野バスに乗ってみた! 車内はWi-Fiに電源も)で詳しく触れた。
宇野バスの特徴は、行政からの補助金を一切受け取らずに黒字経営を続けていることが大きな特徴であるが、一方で不採算路線からの撤退も早く、以前は現在の東側の終点の片上からさらに東のJR赤穂線の日生駅まで路線を伸ばしていたが、現在では同区間から宇野バスは撤退し、代わりに備前市営バスが運行を担っている。宇野バスは、採算が取れる路線は自社路線としてサービス向上に努める一方で、採算が取れない路線についてはその運行を行政などに任せるといった方針を取っているようである。
そんな宇野バスの、東側の終点である片上は1991年まで同和鉱業片上鉄道の片上駅のあった場所である。駅舎はすでに取り壊され駅構内はマックスバリュとエディオン備前店となっている。また、駅構内だった場所の片隅には当時のディーゼル機関車が保存されており、宇野バスの車窓から静態保存された機関車の姿を見ることもできた。
片上駅を終点としていた同和鉱業片上鉄道は、黄鉄鉱を中心とした硫化鉄鉱を産出する柵原鉱山と瀬戸内海に面した片上港を結ぶ目的で1923年に開業した。硫化鉄鉱は硫酸や火薬の原料となる鉱石だ。しかし1980年代に入ると国内産の硫化鉄鉱は円高などによる影響で需要減となり、鉱石輸送は鉄道からトラックに切り変えられたことから鉄度経営が窮地に陥る。片上鉄道は、肥料輸送や旅客列車の減便などで生き残りを図ろうとしたほか、末期には、当時『時代村』などのレジャー事業も行っていた大新東が経営を引き継ぎ、沿線に建設予定だった備前ヨーロッパ時代村へのアクセス鉄道として再生させるプランが持ち込まれたがバブル崩壊で実現せず、万策尽きる形で1991年7月1日に全線が廃止された。
現在は、片上駅前にあったロータリーのみがかつてここに駅があったという痕跡を留めている。
(了)