オスロ環境政策「自転車と徒歩が好きに、車が嫌になる」街へ。EV含め、全ての交通機関を値上げへ
自転車と公共交通機関を魅力的に。大気汚染の原因・空間を占領しすぎる車は非魅力的に
ノルウェーの首都オスロと隣県アーケシュフースが、共同で修正した交通環境政策「オスロ・パック3」を6日に発表した。
予定されていた高速道路E18号線の建設工事を、一時的に大規模に停止。過去の計画案と比較して、公共交通機関に充てる予算を70%以上アップさせた。500億ノルウェークローネは、新しい地下鉄・鉄道、自転車道の建設などに充てられる。
車、お断り!「道路が増えれば、車が増える、都市環境が悪化する」
大気汚染の主な原因とされる「車」の利用者にとっては、好ましくないニュースとなった。高速道路やトンネルの新規開発を待ち望んでいた住民は落胆。有料道路の使用料金は大幅にアップ。大気汚染度の高いディーゼル車とガソリン車は、2017年より片道43~58ノルウェークローネ(およそ567~764円)支払うこととなる。
電気自動車(EV)の優遇無料制度、オスロでは縮小へ
ノルウェーでは、電気自動車(EV)への政府からの優遇政策により、「EV普及先進国」とされていた。国内で初めて、この優遇政策がオスロで軽減される。EVは有料道路の通過料がこれまで無料だったが、10~20ノルウェークローネ(132~264円)の支払いが2018年より適用される。
両県では交通環境政策を継続していくために、有料道路や駐車料金の使用料など、住民の負担を元に収入を増やす必要がある(国の負担額は半分)。道路の空間を占領し、大気を汚染する車両の利用者が、最も高い代償を払うシステムになっている。
排気ガスを出す一般車両との差別化を図るため、EVへの有料道路通過料は今回最も安く設定されている。利用者は富裕層が多いとされているため、「家計への大きな打撃とはならないだろう」とも言われている。しかし、今回をきっかけに、かねてから懸念されていた「EV優遇政策が徐々に終わりを告げ、環境に優しい車への魅力が減るのではないか」との不安の声もある。
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車の遠距離通勤者には大きな損害
鉄道などの公共交通機関が新たに整備されるまでには数年かかるため、両県を自家用車で移動する長距離通勤者からは、「通勤が難しくなり、失業者が増える」と苦情の声も挙がる。「数年前に政府が推奨していたから、ディーゼル車を購入したのに、今では環境の悪者扱い」という者もおり、コロコロと変わる政治家の「ゲーム」に幻滅している住民もいる。
1日当たり6万6千台の車両、大気汚染悪化地域に住む市民が90%激減?
「車を使うことが嫌になり」、「道路の使用料を値上げ」させることで、2019年までに有料道路の利用者は15%減少するだろうとオスロ市は予測。これは、オスロを出入りする1日当たり6万6千台の車両に相当するとされている。オスロで大気汚染エリアに住んでいるとされる住民は20万人とされており、新たな政策により、2022年には大気汚染エリアに住む数は1~2万人へと大幅に減少されると予想されている。
自転車乗りと通行人以外は、全てが値上げへ。過激な環境政策、効果は保障されていない
今回の政策には、対立する複数の政党と自治体が関わっているため、賛成と反対の声で報道機関や世論の声は分断している。環境政策は、住民の日常生活に大きな影響を与えるため、生活が「さらに便利に」、「さらに不便に」と感じる人が分かれる。
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今回の政策修正案で重要な役を担ったのは、昨年のオスロ地方選挙で異例の快挙を遂げた「緑の環境党」。しかし、「オスロで8%の住民にしか支持されなかった少数派政党が、どうしてここまで影響力を持ってしまうのか」と、疑問の声も次第に目立つようになった。
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自転車乗りと通行人以外は、全員「環境税」を支払う形に
車の利用はやめても、地下鉄・路面電車・バスのチケット料金の毎年の値上がりは止まることがない。自転車以外の交通手段は、全て値上がりすることとなる。「誰もが歩き、自転車を使うだろうという考えは、理想郷だ」と戸惑う声もある。
大気汚染問題が改善され、結果が「数字」として出始めれば、今回の環境政策は成功といえるだろう。オスロ代表の環境・運輸通信局局長のベルグ氏(写真左)は、6日の記者会見で「今日はオスロにとって歴史的な日だ」と語った。結果は、まだわからない。
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Photo&Text: Asaki Abumi