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COP21ノルウェーの若者140人がパリで環境問題を訴える「我々の政府は努力が足りない、脱石油を!」

鐙麻樹北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事
ノルウェーでの「環境問題」議論は? Photo:jennysplanet.com

ノルウェーでCOP21はどのように報道されているのか?

第21回国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)は、連日ノルウェーでも大きく報道されている。パリから届く報道の内容は、日本とノルウェーでは様子が異なる。首相や環境大臣が記者会見で発言した内容や、合意交渉の経過を報告するだけではなく、ノルウェー政府の努力不足を指摘するものも多い。国の代表者の応援をしながらも、厳しいフィードバックをしているのは、報道機関の記者や境活動団体だけではない。ノルウェーからパリにやってきた、約140人以上の10~20代のノルウェーの若者たちだ。

ノルウェーでは「脱石油」が大きな議論

日本では「脱原発」が議論となる一方、ノルウェーでは「脱石油」を求める声が強くなっている。「石油は環境に悪い」という認識が、国民の間で日増しに浸透しているからだ。

また、温室効果ガスを他国で削減してもらい、ノルウェーの削減分に採り入れる排出権を購入する政府に対し、「自国で削減するべきだ」と主張する声も目立つ。

今、パリにいるノルウェーの若者たちは、各政党の青年党、複数の青年環境団体、そして1人の漫画家だ。

漫画で現政権に問いかける

イェニー・ヨルダルさんは1989年生まれの26歳。オスロでグラフィック・デザイナー、イラストレーター、漫画家として仕事をしている。パリからノルウェー最大手の全国紙アフテンポステンに、COP21に関する連載記事で、自身のブログ「Jennys Planet」から漫画を寄稿している。

特別に漫画を日本語バージョンにしていただいた。

分かりやすいCOP21の解説 Photo:jennysplanet.com
分かりやすいCOP21の解説 Photo:jennysplanet.com

ヨルダルさんの漫画は、COP21での混乱した交渉の様子や、ノルウェーの政治家たちの矛盾した言動を皮肉るものが多い。

首相と現政権を漫画で皮肉る Photo:jennysplanet.com
首相と現政権を漫画で皮肉る Photo:jennysplanet.com

明快でわかりやすい説明と絵は、読者の心を掴む。首相、環境大臣、外務大臣を容赦なく裁く勇気は、民主主義が重要視されるノルウェーでだからこそ育ったものなのだろう。その漫画を掲載する全国紙の姿勢も気になるところだ。

ヨルダルさん(右) Photo:Julie L Lilleaeter
ヨルダルさん(右) Photo:Julie L Lilleaeter

ヨルダルさんは、石油を掘り続け、自然を壊し、排出権を購入し続ける政権を批判する。

ノルウェーの気候変動政策の問題は、国内で温室効果ガスを減らす努力をしていないことです。パリでの会議では、すごそうなことを言っているけれど、国内で起きていることは別の事実。ノルウェーは温室効果ガスを削減できておらず、増加しています

出典:Jenny Jordahl

青年党2党がパリ現地から情報発信

ノルウェーでは緑政策を強く支持しているのは、緑の環境党(MDG)と自由党(V)だ。この両党を母党とする、青年党の代表にも話を聞いた。

青年党とは?

COP21初日から現場で情報発信する代表2人Photo:Gronn Ungdom
COP21初日から現場で情報発信する代表2人Photo:Gronn Ungdom

日本では、「青年部」と呼ばれるが、母党から独立している部分も強く、ノルウェーでは「青年党」と認識されている。各政党に所属しつつも、独自の政策をもち、青年党党員の発言はメディアでも大きく取り上げられ、「未来の有権者」の声としての影響力が強い。青年党で活躍する若者は、いずれ未来の首相や国会議員になる可能性が高く、現地では見過ごすことができない存在だ。

ノルウェー政治に「緑」という嵐を生んだ、新しい政党

緑の環境党・青年党には、男女の共同代表が2人いる。9月の地方選挙で、各地で異例の勝利結果を収めた、ノルウェーの政治界が生んだ台風の目だ(別記事「ノルウェー政権に「緑」の激震が走る 緑政策と難民問題が影響した地方選挙」。COP21での会議を初日からパリ現地で見守り、ノルウェーの報道機関に記事を寄稿しながら、SNSで現地の様子を発信している。

「ノルウェーは石油産業から撤退するべき」

COP21でノルウェー出身者が集まる会議 Photo:Gronn Ungdom
COP21でノルウェー出身者が集まる会議 Photo:Gronn Ungdom

共同代表のラーゲ・ヌストさんは、1991年生まれの24歳。もし、彼の党が政権としてCOP21で交渉権をもっていたら、どうしていたか聞いてみた。

ノルウェーの政権は、今は年8億ノルウェークローネしか国連の気候基金に寄付していません。緑の青年党であれば、300億ノルウェークローネを寄付します。ノルウェーのように石油で裕福な国は、貧しい国の負担が減るように、貢献しようという意思をみせなければいけません。なにより、環境のためにも石油産業からは退くべきでしょう。

出典:Lage Nost (Gronn Ungdom)

「大気汚染者は自国で対価を支払うべき」

COP21の行方を現場で見守る党の代表(右)Photo:Unge Venstre
COP21の行方を現場で見守る党の代表(右)Photo:Unge Venstre

自由党・青年党の代表であるトルド・フストヴェイトさんは、1992年生まれの23歳。緑の環境党と、緑政策において異なる方針をもつ。自由の青年党であれば、どうしていただろうか?

ノルウェーは、温室効果ガス削減において、国内でもっと努力をするべきです。電気自動車の優遇政策など、積極的な気候変動政策を進めてはいますが、それでもガスは減少していません。もし、私たちの党に決定権があれば、大気汚染をした人は、その対価を支払うことを義務化します、また、国内全土で鉄道と公共交通機関の発達を、道路よりも優先させます。

出典:Tord Hustveit (Unge Venstre)

「ノルウェーは石油の霧に埋もれている」

COP21で会議を見守る Photo:Babawale Obayanju
COP21で会議を見守る Photo:Babawale Obayanju

2党の青年党と一緒にCOP21にいるのは、ノルウェーでは巨大な青年環境団体として知られる「自然と青年」団体だ。代表のアンシュタイン・ヴェストレさんは1991年生まれの24歳。ノルウェーは脱石油をするべきだと強く訴えている。

化石燃料ではなく、再生可能エネルギーを私たちは支持します。ノルウェーに必要なのはエネルギー革命!

地上の気温が2度以上上がることを防ぐためには、北極にある石油産業は全てなくなるべきだと、ロンドン大学の研究者たちは報告しています。ノルウェーの多くの政治家は、石油が永続的なものではないと実感できていないのでしょう。石油の霧に埋もれたままでは、問題の深刻度を実感することはできません。これは私たちにとって、大事な戦いです。

出典:Arnstein Vestre (Natur og Ungdom)

140人が声をあげる、「石油で裕福なノルウェーは、もっと自国で責任をとるべきだ」

オスロからパリへ向かう仲間たち Photo:Anna B Olerud
オスロからパリへ向かう仲間たち Photo:Anna B Olerud

9日夜、このメンバーたちにさらなる仲間がノルウェーから到着した。130人の「自然と青年」団体のメンバーと、通常は左派社会党(SV)と赤党(Rodt)の青年党だ。大気汚染を発生させる飛行機ではなく、オスロからバスでやってきた。

通常は政策を共にしない4党の青年党だが、「環境問題をなんとかしなければ」という思いは同じだ。この声は、国会議事堂に座っている大人たちに届いているだろうか。

Text:Asaki Abumi

北欧・国際比較文化ジャーナリスト|ノルウェー国際報道協会理事

あぶみあさき。オスロ在ノルウェー・フィンランド・デンマーク・スウェーデン・アイスランド情報発信16年目。写真家。上智大学フランス語学科卒、オスロ大学大学院メディア学修士課程修了(副専攻:ジェンダー平等学)。2022年 同大学院サマースクール「北欧のジェンダー平等」修了。多言語学習者/ポリグロット(8か国語)。ノルウェー政府の産業推進機関イノベーション・ノルウェーより活動実績表彰。北欧のAI倫理とガバナンス動向。著書『北欧の幸せな社会のつくり方: 10代からの政治と選挙』『ハイヒールを履かない女たち: 北欧・ジェンダー平等先進国の現場から』SNS、note @asakikiki

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