ノルウェー市民が称える被爆者の教育への決断と「何かをする力」、日本被団協のノーベル平和賞受賞
日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)のノーベル平和賞受賞が発表された現地ノルウェーでは、翌日に市民を招いて受賞のお祝いがされた。
ノルウェー・ノーベル委員会とは「家族」のような関係のノーベル平和センターは、歴代の受賞者に関する展示を行う人気の観光名所でもある。
ノーベル平和センターといえど、事前に受賞者の名前が知らされることはない。
私たちと同じタイミングで受賞者の名前を知り、スタッフたちは総出で準備に走る。
12月の授賞式の期間だけではない。翌年の受賞者が発表されるまで、約1年間、同館は新たな受賞者の平和活動を、ノルウェー市民や国際社会に「教育」して「広める」役割を担う。
受賞発表翌日には、「日本被団協のことを知ろう」という市民イベントが開催された。ノーベル委員会のヨルゲン ・ヴァトネ・フリドネス委員長という特別ゲストが、オスロ市民に直接この賞について語り掛ける場でもある。
平和賞を授与されたら、莫大な注目と影響力を得る
受賞者の発表日は、委員長にとって最も忙しい一日のひとつであることは間違いない。一夜明けて、リラックスした笑顔を見せた。
次世代教育がこれからのカギとなる
「史上最年少の委員長」として注目される1984年生まれの彼は、「教育」が核兵器の恐ろしさを考えるきっかけだったと述べ、規範を確立し、情報を共有し、次世代を教育することの重要性を強調した。
「新聞を読めばわかることですが、現在進行中の戦争で『核兵器を使用する』という脅迫がごく定期的に行われています」と、「核のタブー」が弱まっていることに警報を鳴らし、「だからこそ、私たちは今年、核兵器に焦点を当てたいと考えているのです」と話した。
抽象画のように想像しがたいものを、被爆者の方々は理解する手助けをしてくれる
しかし、恐ろしさを体験しなかった世代にとって、核の話は「抽象的」で想像がしにくく、理解しがたい。その学びの過程を「道案内」してきてくれたのが、日本社会と被爆者の方々だと語った。
「教育する」選択肢をしてくれた被爆者の方々と日本社会
私たちを「教育する」という選択肢をしてくれた被爆者の方々の決断と勇気を、委員長は称えた。
イベントでは専門家を招いての議論も行われた。
ICANノルウェー顧問であるトゥーヴァ・ヴィショルさんは、「平和賞がすでに発表直後から言説空間を変えている」と指摘した。ICAN(核兵器廃絶国際キャンペーン)は2017年の受賞者でもある。
『新兵器の結果について話すことはナイーブ』という時代は終わった
執筆後記
受賞者の発表当日のスピーチやこの日の言葉を聞いていると、委員長の口からは「educate oneself」(教育する)という言葉の多さに改めて気が付く。
今、TikTokを使うZ世代の間でよく使用される言葉だ。世の流れを自分で知ろうとし、自分を教育する。日本のメディアでは「啓蒙する」という翻訳が多いようだが、委員長の言葉は今のSNS時代の「教育する」に近いだろう。
被爆者や支援してきた人々は、核の恐ろしさを「教育する」先端的な存在だったといえる。その恐ろしさを、次の世代やグローバルコミュニティに、折り鶴や証言など、さまざまな手法で次世代に伝え、教育し、引き継いできた。
教育運動世代に生きる、若き委員長だから、改めてその意義を再評価したのかもしれない。