Yahoo!ニュース

アシナガバチは今の時季の駆除がおすすめ。その理由と注意ポイント

有吉立アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当
写真はイメージ(提供:イメージマート)

これから暑くなってくるとハチに遭遇する機会が増えてきます。ハチの中でも、家の近くに巣を作るアシナガバチは私たちの生活圏に生息しています。ハチに刺されやすい季節は、夏から秋にかけてですが、5~6月中に巣を駆除しておけば、刺されるリスクが軽減します。アシナガバチの特徴と、なぜ今の時季の駆除がおすすめなのかお教えします。

アシナガバチってどんなハチ?

アシナガバチは、1.4cm~2.7cmで細い体をしていて、名前の通り長い後足を持っているので、足をだらんと垂らしてゆっくりと飛びます。4月くらいから巣を作り始め、晩秋まで生息しています。アシナガバチもスズメバチ同様、シングルマザーです。最初は女王1匹だけで巣作り、産卵、子育てなど様々なことを行っています。7月になると働きバチがどんどん増え、8月中~下旬には、巣の大きさや攻撃性はピークを迎えます。9月には新女王と雄バチが出そろい、働きバチの数は減っていきます。晩秋にはすべてのハチが巣を離れ、女王だけが生き残り、越冬をして春に備えます。巣は翌年に再利用されることはありません。

どこに巣を作るの?スズメバチとの違いは?

アシナガバチとスズメバチは黄色と黒色で、飛んでいるときに見分けるのは難しいので、巣の違いで見分けた方がいいでしょう。

アシナガバチは開放的な空間に巣を作ることを好み、都市部でも普通に見られます。軒下へ作ることが多く、玄関、ベランダ、出窓の下や、庭木、植込みなどにも作ります。巣の形は下部写真のようにシャワーヘッドのような形で、円形や不規則なお椀のような形で複数の巣穴が見られます。それに比べてスズメバチ全般の巣はラグビーボール型でマーブル模様が多いです。普通、出入り口は一つで巣穴は見えませんが、作り始めのスズメバチの巣の中にはトックリ型をしていて巣穴が見られることもあるので注意してください。また、スズメバチは巣に近づくだけで威嚇し、すぐに立ち去らないと攻撃してきますが、アシナガバチは通常は巣に近づいただけでは攻撃してきません。ただ、ハチを振り払ったり巣を直接刺激すると攻撃してきます。

【アシナガバチの巣】

アシナガバチの巣
アシナガバチの巣写真:イメージマート

【スズメバチの巣】

スズメバチの巣
スズメバチの巣写真:イメージマート

では、ここからはアシナガバチの駆除方法をお伝えします。

もしアシナガバチの巣を見つけたら?

つい先日、5月上旬に知人のマンションのベランダにハチが巣を作っているということで、見に行ったところ、アシナガバチでした。まだ3cmくらいの小さな巣で、女王バチだけが確認できました。地域によりますが、5~6月くらいまでなら、巣の周りには女王バチだけ、あるいは少数の働きバチしかおらず巣も小規模です。駆除するなら、巣が4~5cm程度の今の時季がおすすめです。

駆除する場合は、ハチは黒い色に反応して攻撃的になるので、服装は帽子も含めて白っぽい色で、皮膚が露出しないよう、手袋、保護メガネやゴーグルなどを着用しましょう。駆除に向いた時間帯は、働きバチが巣に戻っている日没後です。ハチ専用スプレー剤を巣穴に向かって噴射しましょう。スズメバチと異なり、アシナガバチは巣穴に直接薬剤がかかるので効果が高いのです。ただ、駆除したハチの針にあたると毒があり危険なので、死骸には手を触れないように処分してください。また、巣は翌日以降、ハチがいないことを確認してから除去しましょう。

巣が見当たらないのに飛んでいる場合は?

アシナガバチが飛んでいるのをよく見かけるのに、巣が見つからないときは、庭の植木の茂みや生垣の中に巣を作っている可能性があります。巣を捜すことで、ハチが危険を感じて攻撃してくることもあります。そんな場合は、よく見かける場所の近くにハチ用捕獲器を吊るしておくとよいでしょう。ハチが誘引されて捕獲できます。

最後に…

アシナガバチは自然界では、農作物や庭木に付く毛虫やイモムシを食べたり、花粉を媒介するなど益虫としての面を持っています。また、性格も大人しく、こちらが干渉しない限りは襲ってきません。人がほとんど近づかない場所など、必ずしも駆除しなくてもよい場合もあります。ただ、私たちの生活圏に巣を作ることが多く、低いところに巣ができている場合、子どもたちが好奇心で近づいたり、手を出してしまったりすると刺されることも考えられます。刺されるとアナフィラキシーショックを起こす場合があります。繰り返し刺されると発症しやすくなるともいわれ、刺された経験のある私は次がとても怖いのです。共存することがいいとは思うのですが、ケースバイケースで考えることが大切なので、ハチの生態を理解して判断することをおすすめします。また、大きくなった巣の駆除作業は危険が高まります。自治体によってはハチ駆除用の防護服の貸し出しや駆除業者の紹介などしているようです。手に余る場合は無理せず相談してみてはいかがでしょう。

アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当

兵庫県出身。都内の美術学校卒業後、 家具店店員、陶芸教室講師など虫とは全く関係のない職業に就いていたが、1998年に地元・赤穂のアース製薬に入社以来、害虫の飼育を担当している。しかし、現在も虫は好きではない。著書に「きらいになれない害虫図鑑」(幻冬舎)※記事は個人としての発信です。

有吉立の最近の記事