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GWの旅行先や自宅でできる「スーパートコジラミ」への対策とポイント

有吉立アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当
写真はイメージ(写真:アフロ)

前回、トコジラミの生態について詳しく説明しました。今回は、殺虫剤(ピレスロイド系)に対する抵抗性を持つとされる「スーパートコジラミ」について、その特性と対策方法をお伝えします。

トコジラミの基本情報については、以下の記事をご覧ください。

「暖かくなると警戒が必要 トコジラミが活動を始める季節がやってきます」

スーパートコジラミとは何か?

スーパートコジラミとは、一般的な殺虫剤である「ピレスロイド」に対して抵抗性を持ったトコジラミのことを指します。つまり、それらはピレスロイド系の薬剤を使い続けることでが耐性がついた個体だけが残り、それらが繁殖を繰り返すことで、ピレスロイド系の殺虫剤では駆除できなくなったものです。現在、世界中で蔓延しているトコジラミのほとんどがスーパートコジラミで、旧来のトコジラミと比較すると、10,000倍以上の抵抗性を持っているものも存在します。

トコジラミの発生を防ぐ方法

まずは「家に持ち込まないこと」が最も重要です。

以下に、トコジラミを家に持ち帰らないための具体的な方法をお伝えします。

旅行先でのトコジラミ対策

部屋の確認

宿泊施設から持ち帰ることが多いため、ホテルなどでの滞在時には注意が必要です。まず、部屋に入ったら、トコジラミがいる可能性がある場所をチェックしましょう。

目印となるのは、トコジラミの黒い糞、もしくはそれが付着した跡である茶色~黒いシミです。チェックする場所は以下の通りです。

・天井の四隅

・壁に掛けられた額の裏面

・カーテンレール

・クローゼットの中の上部

・(可能であれば)マットレスの下

もしも、シミやトコジラミを見つけてしまったら、荷物を持ち、部屋を変えてもらえるように宿泊施設側に相談してみましょう。

写真はイメージ
写真はイメージ写真:イメージマート

自身の荷物の対策

可能であれば、大きなナイロン袋などに入れてください。トコジラミは滑らかな表面を登ることができないので、この方法で侵入を防ぐことができます。

もし袋が手元にない場合は、浴槽に荷物を置くという方法もあります。浴槽の表面は滑らかであることが多いため、トコジラミが登ることはできません。

虫よけ剤も効果的

見つけられなくても潜んでいる可能性があるため、刺されないようにするためには、虫よけ剤の使用もお勧めします。腕や足などの露出部分にスプレーして、ムラなく肌に塗り広げてください。

また、トコジラミは暗いところで刺してくるので、就寝時に電気をつけて、アイマスクで寝ると刺されにくくなると言われています。

家に帰ってからすること

帰宅した後は、荷物や服にトコジラミが潜んでいないかをチェックしましょう。特に、スーツケースのキャスター部分などはトコジラミが潜みやすいので注意が必要です。

トコジラミを家で見つけたら

いろいろな対策を行っていても、家の中でトコジラミを見つけてしまうこともあるかもしれません。その場合は、スーパートコジラミに効果が高い「ブロフラニリド」という製剤の入った商品を使用することをお勧めします。ブロフラニリドは、昆虫の神経に作用して、その活動を止める効果があります。これは、昆虫が生きていくために必要な神経信号を遮断し、結果として昆虫を麻痺させ、最終的には死に至らしめるという仕組みです。これまでのものとは全く違う、新しい画期的なものとなります。

また、「メトキサジアゾン」などの製剤もスーパートコジラミに効果があります。こちらの製剤もピレスロイドではないのでトコジラミに直接スプレーすることで駆除できます。

予防することも可能

現在、トコジラミが発生していなくても、いつ、どこで家の中に持ち込まれるか不安な方は、上記のブロフラニリドが入った薬剤で部屋の中にくん煙処理をしておくことで、万が一、トコジラミが家の中に入ってきた際にも対処することができます。この対処法は、宿泊施設での予防にも効果があります。

写真はイメージ
写真はイメージ写真:イメージマート

最後に…

トコジラミは繁殖力が非常に高く、1匹のメスが1日に5〜6個の卵を産み、生涯で約500個の卵を産むと言われています。そのため、家に持ち込まないことが重要です。しかし、トコジラミは感染症を媒介しないと言われており、むやみに怖がる必要はありません。ただし、家の中で大量に増えると対処に時間がかかることがあるため、見つけたら早急に冷静に対処することが必要です。

【この記事は、Yahoo!ニュース エキスパート オーサーが企画・執筆し、編集部のサポートを受けて公開されたものです。文責はオーサーにあります】

アース製薬(株)研究部で害虫飼育を担当

兵庫県出身。都内の美術学校卒業後、 家具店店員、陶芸教室講師など虫とは全く関係のない職業に就いていたが、1998年に地元・赤穂のアース製薬に入社以来、害虫の飼育を担当している。しかし、現在も虫は好きではない。著書に「きらいになれない害虫図鑑」(幻冬舎)※記事は個人としての発信です。

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