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走って刺す。BIGBOSS1年目、新庄劇場は日本ハムをどう変えた?

小中翔太スポーツライター/算数好きの野球少年

  59勝81敗3分で順位は6位。BIGBOSSの監督就任により大きな注目を集めていた日本ハムだが成績は振るわなかった。そんな中でもやりたい野球の方針はハッキリと数字に現れていた。指揮官が就任時から一貫してこだわっていたのが走塁面と外野手の返球だ。走って、刺す。この2点は昨季から大きく数字を伸ばした。

盗塁企図数は約1.4倍に増加

 春季キャンプでは臨時コーチとして陸上十種競技の元日本王者・武井壮氏や阪神黄金期の切込隊長・赤星憲広氏を招き、初の紅白戦では1死満塁スタートの変則ルールを採用した。派手なパフォーマンスとは裏腹に緻密な野球へのこだわりがうかがえる。実際にシーズンでは無死満塁からのスクイズや1死満塁からのエンドランを敢行するなど適時打以外で得点をもぎ取ろうとする采配を見せた。機動力の目安の1つである盗塁数は昨季の77個から95個へと増加。企図数も113個から160個へと約1.4倍になっていた。ただし走る姿勢は強まったが成功95個に対し失敗65個では得点換算するとマイナスになってしまう。それでもこれは織り込み済みの可能性もある。昨季の就任会見では、最初から優勝を目指すのではなく9月に優勝争いをしていたら、という趣旨の発言をしていた。目の前の試合を全力で勝ちにいくよりも選手のポテンシャルを発揮させることが重要で、その成果が結果となって現れるという考えなのかもしれない。

外野手の捕殺は12球団トップ

 メジャー級の強肩で何度も球場を沸かせたBIGBOSSは外野手の送球にも高いレベルを求めた。秋季キャンプでは自らワゴン車の屋根に立ってバットを持ち、高い送球にならないよう目安を示した。オープン戦で外野手からの返球は常に全力で投げるよう指示。その成果もあってか今季の捕殺数32個は12球団最多、昨季の19個から大きく増えた。刺殺はアウトを奪った時にボールを持っていた野手に、捕殺は刺殺者以外でそのアウトに関わった野手に記録される。外野手に捕殺が記録されるのは送球で走者を刺した時がほとんどだ。今季の32捕殺は中田翔(巨人)、大谷翔平(エンゼルス)らが在籍していた2013年と同じ。NPBのホームページで確認出来る2005年以降の中でこれは日本ハム外野手の捕殺数として 3番目に多い。ゴールデングラブ賞の外野手部門を森本稀哲、SHINJO、稲葉篤紀の日本ハム勢が独占した2006年さえも上回った。

来季は新球場で日本一だけを目指す

 足と肩が勝敗を分ける重要な要素の1つであることは間違いないが、プラスαとしての側面が大きい。得点価値としては5盗塁と2安打がほぼ同じ。平均的な試合より2安打多く打ってもニュースにはならないが盗塁が5つ増えればそれは見出しになる。試合に与える影響以上にインパクトの方が大きいため過大評価されがちで、優勝のためにはもっと大きな"何か"が必要だ。ホーム最終戦のセレモニーでBIGBOSSのユニフォームを脱ぎ、来季は新庄監督として臨むこと、そして日本一だけを目指すことをファンに約束した。イズムの浸透したチームは新球場エスコンフィールドで他球場より1日早い3月30日に開幕を迎える。新庄劇場第二幕にはどんなサプライズとどんな結果が待っているのだろうか。

スポーツライター/算数好きの野球少年

1988年1月19日大阪府生まれ、京都府宮津市育ち。大学野球連盟の学生委員や独立リーグのインターン、女子プロ野球の記録員を経験。野球専門誌「Baseball Times」にて阪神タイガースを担当し、スポーツナビや高校野球ドットコムにも寄稿する。セイバーメトリクスに興味津々。

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