配偶者控除の廃止を「専業主婦否定」に結び付けてはいけない
来年度の税制改正に向けて、配偶者控除の廃止が検討されています。
日経新聞とテレビ東京がこの週末に行った世論調査によると、廃止に「賛成」は53%、「反対」は32%でしたが、このうち専業主婦の回答は「賛成」が24%、「反対」が53%と、逆転した数字だったそうです。
(日経新聞9/25「配偶者控除廃止「賛成」53% 本社世論調査、内閣支持率は58%」)
筆者自身は、配偶者控除の廃止には賛成です。というのは、ひとり親家庭の貧困という問題を考えるとき、その背景には「片働きを推奨してきた社会」というものが大きくあるからです。その推奨枠は、はずしたほうがいいと考えます。
夫婦の一方がお金を稼いで、もう一方が家事や育児などの無償労働を担うという役割分担は、うまくまわっているときには何も問題ありません。しかし、夫婦というものは一定割合で瓦解します(離婚)。そうなったとき、無償労働を多く担っていた側(大方の場合、こちらが子どもを引き取る)は、どうしても貧困に陥りやすくなります。
また、いまの時代、夫婦一方だけの稼ぎで家族を養える状況のおうちは、もはや多くありません。特に若い世代の人たちが、今後も片働き世帯を「あるべき形」としてめざし続けたら、非婚化が進むばかりでしょう。
*いまそれを選んでいる人たちは、何も悪くない
そのような理由から、筆者は配偶者控除の廃止は必要だと思うのですが、ただし、ここで一つ、気をつけなければいけないと思うことがあります。
それは、「配偶者控除の廃止を、専業主婦(主夫)否定に結び付けない」ということです。
控除を廃止するというのは、単に推奨枠からはずすということであり、「いま存在する片働き世帯の人たちを否定するものではない」ということを、いっしょに伝えていく必要があるように思うのです。
なぜ、筆者がこんなことを言うのかというと、PTAや家族を取材していると、最近の専業主婦や主夫の人たちが、しばしば肩身の狭さを感じているように感じるからです。
あらゆる場面で「女性活躍」というフレーズが聞かれ、「共稼ぎが当たり前」とされるいま、かつては世のスタンダードだった専業主婦の人たちのなかには、「自分を否定されている」ように感じている人が、少なからずいるのです(と筆者は感じます)。
配偶者控除の廃止を歓迎する声のなかには、残念ながら、専業主婦・主夫を批判し、見下すような物言いも見られます。その大半は、高収入の夫(または妻)に対する嫉妬から来るものなので取り合う必要はないのですが、言われたほうはやはり、いやな気分になるでしょう。
筆者自身はひとり親なのですが、ひとり親というのも、世間的にあまり好ましく見られる存在ではありません。ですから、家族の形を否定される悲しさはよくわかります(専業主婦・主夫をひとり親と一緒にしないでくれよ、と思われるかもしれませんが……)。
どんな形の家族であっても、本人たちが満足しているのであればそれでいいのであって、他人が「いい」だの「悪い」だの言うようなものではありません。
ですから、配偶者控除の廃止は決して「専業主婦(主夫)の否定ではない」ということを、ちょっと気をつけて伝えていく必要があるのではないかと思うのです。
*PTAも、配偶者控除と同じ
筆者はこれまで「PTAの変え方」について、さんざん記事を書いてきましたが、実はこれも、配偶者控除の廃止と同じところがあるのです。
PTAが変わらなければいけない理由のひとつは、「世の中に専業主婦がたくさんいるという前提でつくられた仕組みが、いまの時代に合わなくなっているから」です。
でも、それをただ「やり方を変えよう!」と言うと、これまでのやり方でやってきた人たちは、「自分を否定された」と感じてしまうことがよくあります。
そこで、「なぜ変えることが必要か(時代背景からのニーズ)」をよく説明するよう、注意を促してきました。
税制を変える際にも、同様の配慮が必要ではないかな、などと思った次第です。