「賢くしたたかに」(森保監督)の落とし穴。5バックから4バックには戻せない
時に5バックで後ろを固める采配を「臨機応変で賢くしたたかな戦い方」と自賛する森保監督。普段、言質を取られたくないのか、サッカーの中身について詳細に語ろうとしないが、この件については大胆にも言い切っている。確信に満ちた口調で自信満々に語る。反論を浴びることを覚悟の上だとすれば、いい度胸しているという話になるが、実際はそうではないように見える。
「賢い」の対義語を辞書で引けば「愚か」だ。筆者は非森保的思考の持ち主なので賢くない、したたかではない、愚かであると言われたことになるが、ショックを覚えるというより、大胆な言い回しをする森保監督を心配したくなる。その思考法が必ずしも多数派には属さないという、自身の異端性に本人が気づいていないからだと踏む。
5バック(後ろで守る)と4バック(前から守る)を使い分ける采配である。移行しやすいのは4→5だ。「守ると言われてイメージするのは構える、引く、下がる。人間は後ろで守りたいという本性がある。プレッシングはその真逆を行く発想に基づいているので、習得には時間が掛かる」とは、以前にも述べた、プレッシングの提唱者であるアリゴ・サッキの言葉だ。プレッシング(4バック)から後ろで守る(5バック)への変更は、つまり人間にとって長年慣れ親しんだ常識への回帰になる。
しかし、それで実際に守り切ることができればいいが、そうしたにもかかわらず点を奪われてしまった場合は大きな問題になる。再び攻撃的に前からプレスを掛ける必要が生じる。できれば布陣は4に戻したい。だが5の水に馴染んでしまった感覚を、いきなり4の世界に戻すことは簡単ではない。
守り倒そうとしたにもかかわらず失点した。攻撃的に転じたいが、いまから前掛かりのサッカーに変更するのは難しい。さあどうしよう……。サッカーあるあるのひとつだと筆者は見る。
先のチャンピオンズリーグ(CL)準決勝。レアル・マドリード対バイエルンがそうだった。初戦を2-2で折り返したこの一戦も、その典型的な一戦だった。第2戦、バイエルンは後半23分、アルフォンソ・デービスが先制点をマーク。合計スコアを3-2とした。
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