「日本は安保理の常任理事国入りをすべき」米有識者の74%が賛成(2023年公開版)
「日本の常任理事国入り」に賛成のアメリカ合衆国有識者は74%
日本が安全保障理事会における常任理事国入りするのを望む声は、米国ではどれほどの大きさなのだろうか。その実情を外務省が2023年5月に発表した「米国における対日世論調査」(※)の結果から確認する。
国際連合の主要機関の一つ、安全保障理事会(安保理)は、第二次世界大戦における戦勝大国のアメリカ合衆国・ロシア(かつてはソ連邦)・イギリス・フランス・中国で構成される常任理事国と、非常任の理事国10か国(2年毎に改選)で構成されている。今世紀に入ってから世界情勢の変化に伴い、前者の常任理事国について、数か国を追加すべきではとの議論が持ち上がっている。特に先のロシアによるウクライナへの侵略戦争の勃発後は、ロシアを常任理事国から外すべきではとの議論とともに、追加国に関する話も出ている。
これに絡み、日本が新たに国連安保理の常任理事国となるべきだと思うか否かについて、今調査対象母集団の有識者に聞いた結果が次のグラフ。2007年度から問い合わせの対象としているので、グラフも2007年度以降のみとなっている。
直近2022年度においては74%が同意を示し、反対意見は19%にとどまっている。2013年度以降は調査機関の変更とともに内部的な調査仕様の変更が考えられるため、一概に連続した結果として比較するのはいくぶんリスクが高くなるが、2013年度以降は反対意見が減少し、その分賛成意見と回答留保派が増える傾向にある。
直近の2022年度では前年度比で賛成意見が減り、反対意見が増える結果に。前年において賛成意見が過去最高の79%を示しており、この反動が生じたものと考えられる。
賛成派の理由は
日本の常任理事国入りに賛成している人たちは、どのような理由でそのジャッジを示したのか。賛成意見を持つ人限定で、選択肢の中から当てはまる理由を複数回答で答えてもらった結果が次のグラフ。なお今設問は従来、賛成意見・反対意見それぞれの意見を持つ人にその回答理由を尋ねているが、直近年度では賛成意見の人のみとなっている。
賛成意見を持つ人の賛成理由としては、明確な「日本だからこそ」との理由が上位を占めている。もっとも見方を変えれば、「信頼できる同盟国であるから」はともかく、それ以外の選択肢においてはそれぞれ指摘している要件の(現状以上の)実行を日本に強く求めているとの解釈もできる。例えば「日本は国際の平和と安全に貢献を行っているから」ならば、国連安保理の常任理事国入りを日本が果たしたら、アメリカ合衆国同様に、国際平和のために積極的な行動をしてほしいという思惑があるのだろう。特に2022年度では国際情勢を受けてなのだろうか、「日本は国際の平和と安全に貢献を行っているから」において、前年度比で値が大きく増えているのがポイントではある。
もっとも今件はアメリカ合衆国の有識者に限った意見の集約によるもの。アメリカ合衆国全体としてはどのような意見となるのかまでは分からず、さらに当然、他国の動向も大きく影響する。その上、安保理、さらには国連そのものの存在意義が大義名分以上のものではなくなっているとの指摘も見受けられる。
常任理事国のロシアによるウクライナへの侵略戦争の勃発で、国際情勢に大きな変容が生じたことは否めない。早ければ戦争終結後にも、日本を対象とするか否かは別として、常任理事国の構成をどうするかについて、国連で議論が行われるに違いない。
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※米国における対日世論調査
直近分は外務省がハリス社に委託し、アメリカ合衆国内において電話により2022年12月~2023年2月に実施されたもので、有効回答数は一般人1001人(18歳以上)・有識者200人(連邦政府、大企業、マスメディア、労働組合、宗教団体、アカデミアなどで指導的立場にある人物)。一般人にはインターネット経由で、有識者には電話によるインタビュー形式で実施されている。過去の調査もほぼ同条件で実施されている。
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