シリア北部の「解放区」で反体制派に同調するデモと抗議するデモ
「解放区」での”官製”デモ
シリア北西部の反体制派支配地域、いわゆる「解放区」では、ラマダーン月が空けて以降、抗議デモが頻繁に行われるようになっている。
シリアのアル=カーイダであるシャーム解放機構(旧シャームの民のヌスラ戦線)が軍事・治安権限を握るイドリブ県では5月25日(イード・アル=フィトルの翌日)、イドリブ市と政府支配下のサラーキブ市を結ぶ高速道路で、シリア軍の撤退と国内避難民(IDPs)の帰還を求める抗議デモが行われた。
「怒濤の帰還」と銘打たれたデモの参加者は、イドリブ市とサラーキブ市の間に位置するサルミーン市に集結し、二つのグループに分かれ、第1のグループはサルミーン市からイドリブ市に向かって行進、第2のグループはサルミーン市からサラーキブ市近郊に設置されているトルコ軍の拠点に向かって行進した。
抗議デモは、4日後の5月29日金曜日にもイドリブ市で組織された。
「民間人の帰還と保護は国際社会の責任」と銘打たれたデモには、シャーム解放機構に近いEbaa Newsによると、数百人が参加、自由や尊厳といった「シリア革命」のスローガンを連呼、体制打倒、シリア軍の撤退、IDPsの帰還を訴えた。
反体制派への抗議デモ
抗議デモは、「解放区」を支配する反体制派にとって好ましいデモだけではなかった。
トルコの占領下にあるアレッポ県北西部のいわゆる「オリーブの枝」地域の中心都市であるアフリーン市では5月29日、トルコの後援を受ける国民軍(Turkish-backed Free Syrian Army、TFSA)の横暴な振る舞いに抗議するデモが発生した。
デモ参加者は、トルコのレジェップ・タイイップ・エルドアン大統領や同地の「ワーリー」(為政者)に対して、地元住民や同地への移住者の権利を侵害しないよう抗議した。
アフリーン市では、5月28日、TFSAに所属するハムザート師団と、ダマスカス郊外県東グータ地方からの移住者によって構成される武装集団(イスラーム軍)が交戦し、戦闘員4人、子供2人を含む住民3人が死亡していた。
戦闘は、東グータ地方移住者が商店として使用していた店舗の引き渡しをハムザート師団が要求したことがきっかけとしていた。この店舗もそもそもは、2018年1~3月のトルコ軍の「オリーブの枝」侵攻作戦によってアフリーン市を追われた元住民のもの。
また5月31日には、トルコの占領下にあるアレッポ県北部のいわゆる「ユーフラテスの盾」地域にあるアアザーズ市で、食料人道支援配給担当者による汚職(近親者への物資の優遇的な配給)に抗議するデモが行われ、住民数十人が参加した。
抗議デモは、アフリーン市でも行われ、参加した住民は、国民軍の刑務所に収監されている住民の釈放を求めた。
さらに、「ユーフラテスの盾」の中心都市であるバーブ市でも、住民がパンや灯油の値上げに抗議するデモを行った。
(「シリア・アラブの春顛末記:最新シリア情勢」をもとに作成)