電機メーカー、Eコマース…能登半島地震で「インプ稼ぎ」投稿に大手が広告
電機メーカー、Eコマースなどの大手企業が、能登半島地震で拡散したXの「インプ稼ぎ」のフェイク・コピペ投稿に広告を掲載――。
最大震度7、死者57人が確認されている能登半島地震をめぐり、東日本大震災時の津波動画などを使った広告収入目的と見られる投稿が拡散した問題で、これらの投稿に日本の大手企業の広告が掲載されていた。
投稿には複数の広告が掲載され、関西発祥の電機大手、Eコマース大手のモバイルサービスなどの公式アカウントによる広告もあった。
「インプ稼ぎ」の背景には、Xが導入した広告収益分配システムがある。重大ニュースに便乗して表示数(インプレッション)を集め、広告収益に結び付ける狙いがあると見られる。
その金を支払っているのが広告主だ。
同様の問題は、イスラエル・ハマス紛争でも指摘されてきた。
ウェブ評価サイト「ニュースガード」が、イスラエル・ハマス紛争に関して誤解を招く投稿30件を調査したところ、世界的な大手企業のほか、NPOや教育機関、政府など合わせて200件の広告が掲載されていたという。
非常事態に便乗した「インプ稼ぎ」の投稿は、広告主が後押しをしている面がある。
●「公式認証」の大手企業広告
Xの広告収益分配を狙ったと見られる「インプ稼ぎ」と呼ばれる投稿が、能登半島地震を巡って氾濫した。それに対して、Xのユーザーからは誤解を招くとの指摘が出た。
※参照:能登半島地震でXトレンド入り、フェイクとコピペの「インプ稼ぎ」とは?(01/02/2024 新聞紙学的)
地震発生から4時間後、居住地を「バーレーン」としているXユーザーが、東日本大震災時の岩手県宮古市の津波被害の動画とともに、「北陸新潟能登半島の方逃げてください」などと他の日本語ユーザーの投稿をコピー&ペーストした投稿には、直後から誤解を招くとの指摘が返信に相次いだ。
90件を超す返信があるが、多くは同様に動画が東日本大震災時のものであることを指摘し、削除などの対応を求める内容だった。
この投稿は70万件を超す表示数を集めている。だが、投稿は1月3日朝の段階では、削除をされたり、ボランティアによる背景情報追加機能「コミュニティノート」が掲載されたりはしていなかった。
そればかりか、その中には5件の広告が掲載されていた。
うち4つは有料ユーザーであることを示す青色のチェックマークがついていた。そして残る1つは、それとは別の金色のチェックマーク付きの企業の公式アカウントだった。
Xのサイトではそう説明している。
金色チェックマークの企業は関西発祥の電機大手。広告は自動調理鍋の宣伝だった。
金色チェックマークを付けた日本の大手企業の「公式認証」アカウントによる同様の広告掲載は、他にいくつも見られる。
「インプ稼ぎ」と見られる同じ東日本大震災時の津波動画とコピー&ペーストのテキストを組み合わせた「イエメン」居住のユーザーの投稿では、Eコマース中心とした大手ネット企業のモバイルWiFiの広告が掲載されていた。
また、この「イエメン」のユーザーのホームページでは、上記の電機大手のほか、関西の魔法瓶大手、中国地方発祥のカジュアル衣料メーカー、スーパーコンピューターなども手がける大手電機メーカーなどの、金色チェックマークをつけたアカウントによる広告が掲載されていた。
●イスラエル・ハマス紛争でも
「インプ稼ぎ」の問題は、2023年10月から続くイスラエル・ハマス紛争でも、指摘されてきた。
米ウェブ評価サイト「ニュースガード」は2023年11月13日から22日まで、イスラエル・ハマス紛争に関して誤解を招く情報発信を繰り返すXユーザー10人の、投稿30件を調査した。
「ハマスによるイスラエルへの襲撃は偽旗作戦」などの虚偽情報を繰り返す「スパースプレッダー」と呼ばれるユーザー10人によるものだったという。これら10人のアカウントには、十数万から100万超のフォロワーがいる。
調査対象とした30件の投稿は、累計で9,200万人以上のユーザーに表示され、平均して300万人が閲覧していたという。
ニュースガードの調査では、広告主には、名だたるグローバル企業など86社のほか、NPOや教育機関、政府など合わせて200件の広告を確認したという。
イスラエル・ハマス紛争におけるXでの違法有害情報の拡散を巡っては、欧州連合(EU)が12月、プラットフォーム規制法「デジタルサービス法(DSA)」に基づいて、正式の調査に乗り出している。
※参照:「AIだけで過剰削除」「違法有害情報が氾濫」イスラエル・ハマス紛争、コンテンツ管理のバランスとは?(12/21/2023 新聞紙学的)
また、Xで拡散する反ユダヤ主義的な投稿や人種差別的投稿に広告が掲載されることを避けるため、大手広告主が、広告出稿を取りやめる動きが相次いでいる。
●広告主が支える
これらはいずれもプログラマティック広告と呼ばれるもので、広告主企業は掲載場所を個別に選んでいるわけではない。
しかし、その広告主が支払う広告費は、紛争や自然災害、大事故などの非常事態に便乗し、収益目的でフェイク動画やコピー&ペーストの投稿を行うユーザーの収益となる。
能登半島地震のコピー&ペーストとフェイク動画の投稿を行っていたユーザーの多くは、同じような行為を繰り返している。
翌1月2日に発生した羽田空港での日本航空機と海上保安庁の航空機の衝突事故でも、複数のユーザーが乗客らの投稿をコピー&ペーストした投稿を発信し、その中には広告が掲載されているものもあった。
これらは悲劇の現金化といえる。
結果的には、それらの動きを、広告主が認め、後押ししている形になる。
(※2024年1月3日付「新聞紙学的」より加筆・修正のうえ転載)