「ニュースインフルエンサー」若者の37%が情報源に、85%はXで発信
若者の37%が「ニュースインフルエンサー」を情報源にしており、「ニュースインフルエンサー」の85%はXで発信している――。
米調査機関「ピュー・リサーチセンター」が11月18日、そんな調査報告を公表した。
米大統領選では、ソーシャルメディアで大きな影響力を持つインフルエンサーの発信が、注目を集めた。Xのオーナーで2億人超のフォロワーを持つイーロン・マスク氏は、その代表例だ。
ソーシャルメディアで時事問題などについて発信するそんな「ニュースインフルエンサー」の現状についてまとめたのが、今回の調査だ。
それによると、「ニュースインフルエンサー」の最大のテーマは「政治と選挙」(55%)だ。
ただ、「ニュースインフルエンサー」の大部分(77%)は報道機関とのかかわりがない一方、ユーザーの側は、30%がその意見に「ほぼ賛成する」と回答している。
ソーシャルメディアと政治・選挙で、何が起きているのか?
●「他のニュースと異なっている」71%
米調査機関「ピュー・リサーチセンター」は11月18日の調査報告で、そう述べている。
同センターは、「ニュースインフルエンサー」を「ソーシャル メディアで時事問題や社会問題について定期的に投稿し、フェイスブック、インスタグラム、ティックトック、X(旧ツイッター)、ユーチューブのいずれかで少なくとも10万人のフォロワーを持つ個人」と定義する。
調査では、そのような「ニュースインフルエンサー」2万8,000件のアカウントと、特に人気のある500人のコンテンツも対象とした。聞き取り調査は、米国の成人1万658人に行った。
それによると、全体の5人に1人(21%)が、ソーシャルメディア上で「ニュースインフルエンサー」から定期的にニュースを得ている、と回答した。
この回答では、年齢層で大きな開きがある。18~29歳の若者ではその割合が4割近く(37%)に上る。これに対し、30~49歳(26%)、50~64歳(15%)と年齢層が上がるにつれて、ほぼ10ポイントずつその割合は減少し、65歳以上では7%にとどまる。
「ニュースインフルエンサー」からニュースを得ている回答者のうち65%が「時事問題や社会問題への理解を深めるのに役立っている」としている。ここでも、18~29歳の若者の72%がそう回答しているのに対し、30~49歳では63%、50~64歳は59%、65歳以上が53%と、年齢層による開きが見られる。
また71%は「ニュースインフルエンサー」から得るニュースが他の情報源と「異なっている」としている(「非常に異なっている」23%、「ある程度異なっている」48%)。
「ニュースインフルエンサー」から得ている情報分野は、「基本的な事実」90%、「意見」87%、「面白い投稿」87%、「最新ニュース」83%だ。
そして、「インフルエンサー」の「意見」に関しては、61%が「同意する意見と同意しない意見が半々」、30%が「同意する」で、「同意しない」はわずか2%だった。支持政党による違いはあまりなかった。
●最大のテーマは「政治と選挙」
同センターの調査のうち、「ニュースインフルエンサー」のコンテンツについては、米大統領選が山場を迎えた2024年7月15日から8月25日にかけて実施された。そして「ニュースインフルエンサー」が扱う最大のテーマは「政治と選挙」だった。
※参照:キーワードは「分断」「急展開」――平和博さんが語る2024年アメリカ大統領選と情報空間(09/05/2024 news HACK by Yahoo!ニュース)
時事問題や社会問題のうち、55%が政府、政治、大統領選に関するものだった。この中には、7月のトランプ氏暗殺未遂(5%)、8月の民主党大会(4%)、7月の共和党大会(3%)、7月のジョー・バイデン大統領の選挙戦撤退(2%)などが含まれる。
人種、LGBTQ+、中絶などの社会問題は18%、国際問題は14%だった。
ただ、「ニュースインフルエンサー」の大部分(77%)は報道機関とのかかわりがなく、報道機関所属もしくは過去に所属していたのは23%だった。
そして、その政治的な立ち位置は、「ニュースインフルエンサー」全体では右派が27%、左派が21%、立場を表明していないのが48%だった。
●Xの存在感
同センターのこれとは別の調査では、Xは米国での利用率21%、ソーシャルメディアのランキングでは10位で、トップのユーチューブ(85%)、2位のフェイスブック(70%)に比べてはるかに存在感が小さい。
また同センターが9月に発表した調査では、各ソーシャルメディアでニュースを入手しているユーザーの割合も、フェイスブック(33%)、スナップチャット(32%)、インスタグラム(20%)、ティックトック(17%)に比べて、Xは12%で、2020年の15%から漸減傾向にある。
ところが、「定期的に」ニュースを入手するユーザーの割合でみると、Xが59%とトップに躍り出る。以下、ティックトックの52%、フェイスブックの48%、インスタグラム40%、ユーチューブ37%と続く。
ニュース接触に熱心なユーザーがXに集中していることがうかがえる。
そして上述のように、「ニュースインフルエンサー」の85%がここを舞台に情報発信をしている。
●インフルエンサーのインパクト
今回の調査では、「ニュースインフルエンサー」の固有名詞は挙げていない。
ただ、「ニュースインフルエンサー」の主な舞台となっているXのオーナー、マスク氏は、フォロワー数2億500万人で、同サイト最大の影響力を持つインフルエンサーだ。
その存在感を基盤とした発信は、他のソーシャルメディアにも広がり、賛否を含めて主要マスメディアでも取り上げられ、Xにとどまらない共鳴力と波及力を持つ。
そこに、ソーシャルメディアとしての利用率の低さと、影響力の大きさとのギャップをつなぐ仕組みがある。
ハーバード大学教授、ヨハイ・ベンクラー氏らの研究チームは、2020年大統領選における郵便投票と「選挙不正」の主張をめぐるフェイスブックとツイッターの投稿を分析。ドナルド・トランプ次期大統領らの主張を、マスメディアが取り上げることで、結果的に増幅させていた実態を明らかにした。
※参照:デマ拡散の犯人はSNSではなくマスメディア、その理由とは?(10/09/2020 新聞紙学的)
「ニュースインフルエンサー」の影響力は、そんなメディア空間の仕組みの中で見ていく必要がある。
(※2024年11月19日付「新聞紙学的」より加筆・修正のうえ転載)