いよいよ今夜『THE SECOND』決勝トーナメント開催! その見どころとは
いよいよ本日20日19時から、新たな大型賞レース『THE SECOND 〜漫才トーナメント〜』(フジテレビ)の決勝トーナメント「グランプリファイナル」が生放送される。
出場資格は、全国ネットの漫才賞レース番組で優勝経験のない結成16年以上の漫才師。『M-1グランプリ』の出場資格が「結成15年以内」であるため、そのタイトル通り漫才師に「セカンドチャンス」を与える大会といえるだろう。
漫才師たちの“第2の青春”
本大会には133組が出場し、まず2月に選考会が実施された。この時点では、芸人たちもお笑いファンもその全容がつかめずに、どこか懐疑的な雰囲気が漂っていたが、予選の盛り上がりにより、お笑い界隈ではいまやこの大会の話題でもちきり。その大きな要因となったのが、ベスト32以降の大会の形式だ。
「ノックアウトステージ」と呼ばれるトーナメント形式、つまりタイマン勝負で行われたのだ。しかも、審査するのは100人の観客。それぞれ3点満点で採点するルールだ。観客審査というといわゆる“人気投票”になってしまうという危惧もあったが、シミュレーションを繰り返したという3点という点数の幅や、審査理由コメントを聞くことで責任感を持ってもらうというシステムが功を奏した。首を傾げるような結果はなく、むしろ、これまでの賞レース予選では評価されにくかった芸人が勝ち上がったり、ドラマチックな展開が多く生まれることになった。対戦した2組が絆を深めた結果、ツーマンライブを開催するといったヤンキー漫画のような流れまで起きている。まさに漫才師たちの“第2の青春”だ。
また、ネタ時間が「6分」というのも大きな特徴(『M-1』決勝は現在4分)だ。6分あれば、本ネタに入る前にツカミネタから始めたり、途中で遊びを入れることもベテランなら可能だ。長らく劇場に立っている手練ばかり故、対戦相手や客受けの傾向によってネタを変えたり調整したりすることだってできるだろう。
ギチギチに隙なく作り込んだ“競技漫才”で戦うというよりも、いつも彼らが劇場の客前で行っている漫才に近い形で競うことになるはずだ。
そんな「グランプリファイナル」ももちろんトーナメント形式で行われる。つまり、優勝するためには3本ネタを披露することになる。従って漫才師の地肩・総合力がより一層問われる大会となるに違いない。そのトーナメントの組み合わせは抽選により決定しているが、“神の采配”のようにいずれも味わい深い好カードになった。
金属バットvsマシンガンズ
「いやぁ、ガンズは泣くなあ」
アルコ&ピース酒井は、もしマシンガンズが優勝したら、と問われ、そう答えた(『あちこちオードリー』5月10日)。まさに彼らの世代の関東芸人にとってマシンガンズはそういう存在。芸人仲間から愛されている芸人だ。
コンビ名の通りマシンガンのようにぼやくスタイルで『爆笑レッドカーペット』(フジテレビ)や『エンタの神様』(日本テレビ)などを中心に活躍したが、『M-1』や『THE MANZAI』といった賞レースでは決勝進出することができず、大ブレイクには至らなかった。
その後、滝沢が「ゴミ清掃員」として思わぬ形で注目されることになった。
そんな彼らはベスト16で、優勝候補にも挙げられていたランジャタイと対戦。熱烈なファンを多く抱える彼らは今大会の審査形式では絶対的な強さがあるのではないかと思われた。事実、対戦が決まった後、「事務所の人間みんな下向いたもんね。『かわいそうに』『よし、タイムマシーンに頑張ってもらおう』って」と西堀は回想する(『ナイツ ザ・ラジオショー』5月15日)。
しかし、そんな下馬評を覆して決勝トーナメント進出を果たしたのだ。
そのマシンガンズと決勝トーナメント1回戦でぶつかるのが、『M-1』で2度もワイルドカード枠で準決勝進出したことが示すとおり、ランジャタイ同様、熱烈なファンの多い金属バットだ。終始どこまでが本気かわからない、すべてを煙に巻くような言動は唯一無二の存在感を放っている。昨年『M-1』ラストイヤーを戦ったばかりの結成16年組から勝ち残ったのも彼らだけだ。
ベスト32では東京ダイナマイトと戦うという屈指の好カードが組まれたが、ハチミツ二郎の体調不良で幻に(この縁で8月に「ワンマッチ興行」が行われる)。不戦勝となったその回で、金属バットが披露したのが『M-1』で東京ダイナマイトが披露した漫才の完コピ。ふざけつつ観客を痺れさせる金属バットの真骨頂を見せたのだ。
金属バット小林が言うところの「武器ダービー」から『THE SECOND』は幕を開ける。
スピードワゴンvs三四郎
1回戦第2試合は、スピードワゴンvs三四郎という、決勝トーナメント進出した8組の中で、テレビタレントとして既に成功している2組。いわば“売れっ子”対決だ。
「セカンドチャンス」という本大会のコンセプトには合わない気もするが、決勝トーナメント抽選会の際、大会に出場した理由を問われた井戸田は「漫才師だからでしょ。漫才師が漫才の大会に出ないってどういうことですか?」ときっぱり言い放った。
『M-1』2002年、2003年に決勝進出を果たし「あま~い!」のフレーズでブレイクしたスピードワゴンはとりわけ芸人愛・漫才愛の強いコンビだ。『スピードワゴンの月曜The NIGHT』(ABEMA)では、賞レースのたびに出場者たちを招き、愛情あふれる振り返り企画をおこなっていた。また事務所の枠を超えて芸人仲間を集めた主催ライブを定期的に開催。小沢は渡辺正行が主催する「ラ・ママ新人コント大会」の“後継者”に指名されたほど。
そのスピードワゴンの主催ライブに無名時代から出演していたのが三四郎だ。彼らがブレイクしたきっかけは2013年に放送された『ゴッドタン』(テレビ東京)だった。「この若手知ってんのか?」という企画で「コイツは天才だ」部門の非・よしもと芸人ランキングで1位に輝いた。つまり、漫才師として「天才」と評価されていたのだ。
しかし、スタジオに登場した小宮はなんと車いす姿。しかも前歯もかけている。収録の数日前に転倒事故を起こしてしまったのだ。それをイジられまくった結果、小宮のイジられ芸人としての才能が開花し、そのキャラクターでブレイクするという皮肉な結果をもたらした。
そんな彼らは、今大会、ベスト16では、ベスト32で最高得点を記録した流れ星☆を、逆に最高得点を奪い取り勝利し「天才」の証明を果たした。
漫才師はどんなにテレビで人気ものになっても、漫才で評価されたいものだと聞く。そんなプライドと漫才愛を賭けた戦いになるに違いない。
ギャロップvsテンダラー
1回戦第3試合は、まさかの大阪吉本同士の「関西ダービー」。いぶし銀の“渋強”漫才師対決となった。減点する余地がほとんどない2組故、おそらく1回戦屈指の僅差の大接戦になるのではないか。
テンダラーは『THE MANZAI』で2年連続ファイナリストになるも、意外にも『M-1』ではファイナリスト経験はない。しかし、『THE MANZAI』で、ビートたけしはテンダラーを大絶賛。後日偶然会った際「あんちゃん、あのネタおもしろかったね。俺あれ以来ハマっちゃって」と言われ、実際、それ以降、たけしのネタ番組には必ずと言っていいほど呼ばれ漫才を披露している。その変幻自在の技術は他の追随を許さない。
そんなテンダラーとともに大阪の劇場を支え続けているギャロップ。
『M-1』ではラストイヤーの2018年に決勝進出を果たした。だが、本来の実力を発揮できず8位に沈んだ。その際、審査員の塙から「ギャロップもスーパーマラドーナも、一緒に一生漫才やっていく仲間みたいな感じはするんですけど、『M-1』の4分の筋肉が使いきれてなかったかなという感じ」と評されていた。逆にいえば、6分に伸びた『THE SECOND』は彼らの実力・構成力が十分に発揮できる舞台。愛されるキャラクターも大きな武器になるに違いない。
超新塾vs囲碁将棋
1回戦最後の対戦は、超新塾vs囲碁将棋。大会が始まり7組目で登場する5人組の超新塾はアクセントなり、大きなインパクトを残すのは間違いない。
『レッドカーペット』などで活躍し客受けは抜群。しかし、『M-1』予選の審査員にはその変則的スタイルとポップな芸風が評価されにくかったのか、苦汁をなめてきた。
しかし、観客審査の本大会ではその実力を発揮。ベスト32では優勝候補筆頭にもあげられていたジャルジャル、さらにベスト16ではCOWCOWといったビッグネームを圧倒的なパワーでねじ伏せ決勝進出を果たした。
そして最後に登場するのが囲碁将棋だ。おそらく、決勝トーナメント進出8組の中で、テレビでの知名度と劇場での知名度のギャップがもっとも大きい漫才師だろう。
近年、パンサー尾形の親しい後輩として『水曜日のダウンタウン』(TBS)などで根建がテレビ出演することはあるが、その実力に見合った露出とは言い難い。一方、ライブでは実力派集団「大宮セブン」の一員として年間約1000ステージに立ち、2022年度の吉本内劇場出番ランキング2位。単独ライブも即完する人気だ。
「あらゆるものの見方が東京でトップクラスで面白い」「みんなが漫才と思える漫才をやりながら内容が変化球」「僕を含めてみんなが憧れる存在」(『しくじり先生』22年3月11日)などと絶賛するマヂカルラブリー野田を筆頭に、ニューヨーク、オズワルドら囲碁将棋をリスペクトする芸人は枚挙にいとまがない。東京吉本勢の中で唯一生き残ったのが彼らというのも熱い展開だ。
「ガンズは泣くなあ」と言われるようにマシンガンズが芸人仲間から愛される存在だと紹介したが、東京吉本でいえば囲碁将棋がそれにあたると鬼越トマホークは言う。もしこの2組が勝ち上がると決勝戦で激突する組み合わせというのも痺れる。
互いへのリスペクトに満ちた、それでいてプライドをぶつけ合う大会になるに違いない。