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柳沢慎吾の“至芸” その誕生とアップデート

てれびのスキマライター。テレビっ子
柳沢慎吾(写真:つのだよしお/アフロ)

“慎吾噺”を確立した人でしょうね。何回聴いてもオモロい」
(※『チマタの噺』2017年4月18日)

そう笑福亭鶴瓶が評すとおり、柳沢慎吾のトークや持ち芸は、同じものを何度聴いても面白い。まさに“至芸”だ。

代名詞のひとつである「ひとり甲子園」の初披露は、『徹子の部屋』(テレビ朝日)だったという。

柳沢「そこから火がついて、いろんな局でやるようになったんですよ。でもいろんな局でやるとほとんどカットになっちゃう。徹子さんの部屋だと、ノーカットで放送してくれるんで」
(※『徹子の部屋』2023年4月19日)

「ひとり警察24時」誕生秘話

もうひとつの代名詞といえるのは、「ひとり警察24時」だ。

警察に密着したドキュメント『警察24時』風の場面をひとりで(時に共演者に犯人役をさせながら)“再現”するものだ。

だが、意外にも『警察24時』系を番組を繰り返し見るわけではないと、5月2日に出演した『ぽかぽか』(フジテレビ)で明かしている。

柳沢「1回、オンタイムで見る。だからどんな現場に行っても、『監督すいません、今日7時から警察のドキュメンタリーあるんですよ』『なに?今日!』『すいません、だからどうしても早めに…』『よし、じゃあ慎吾ちゃん押しで行こう!』って、俺押しで撮ってくれるの」
島崎和歌子「主役じゃないのに?」
柳沢「主役じゃないんだけど(笑)」

オンタイムで見て、脳裏に焼き付けるのだ。

それが許されるのは現場で愛されているからに違いない。

多くの共演者たちも柳沢慎吾が現場を明るい雰囲気にしていることを証言している。

内田有紀「呼吸の回数よりしゃべる回数が多い方」(※『ごごナマ』2018年2月6日)
伊藤沙莉「本当に待ち時間を待ち時間と思わない感じ。ウワサはかねがね…という感じだったんですけど、本当に一生しゃべってるんですよ! 落語みたいに、1人何役もやるんですね」(※『マイナビニュース』18年4月5日)

そして「ひとり警察24時」でもっとも重要な部分である、警察無線の再現は、そんな現場でのトークから生まれた。

柳沢「TM NETWORKが解散してから木根さんとドラマでご一緒して。その時、雨降っててロケバスで待機してたら、警察のドキュメンタリー番組の話になって、木根さんが『慎吾さん、タバコのパッケージずらしたら、(音の)返しが無線に聞こえますよ』って。『スタッフの食事会で1回やっていいですか?』って聞いて『どうぞ』って言うから、やったらウケたんですよ」
(※『ぽかぽか』2024年5月2日)

なんと無線の再現の発案者はTM NETWORKの木根尚登だったのだ。

進化する「ひとり警察24時」

上記の『ぽかぽか』でも無線の再現をしている(37分30秒頃~)が、よく見るとタバコのパッケージではなく、アポロチョコのパッケージに変わっていることに気づくだろう。

それにはちゃんと理由があることを、同番組に昨年出演した際に語っている。

柳沢「子供たちもやると思うんでお菓子でできないかって言われて。それで(アポロチョコの箱を)用意して、これが音響が良かった。(箱も)絶対に潰れない。オートバイの音もできるの!」
(※「ぽかぽか」23年3月23日)

そうやって柔軟に進化させているのだ。

それだけではない。パトカーのサイレンの音の再現も当初は「うーーー」だったが、いまは「あーーー」と言っている。

柳沢「1日警察署長をやらせてもらったときに本職の方が、昔は『うーーー』だったんですけど、いまは『あーーー』なんですよって」
(※『ラヴィット!』2023年6月6日)

還暦になった現在も、日々アップデートを欠かしていないのだ。

柳沢「15歳から18歳までが『青春時代』、あとの残りは『青春』なんですよね。いくつになっても」
(※『チマタの噺』2019年10月8日)

柳沢慎吾の「青春」は終わらない。

ライター。テレビっ子

現在『水道橋博士のメルマ旬報』『日刊サイゾー』『週刊SPA!』『日刊ゲンダイ』などにテレビに関するコラムを連載中。著書に戸部田誠名義で『タモリ学 タモリにとって「タモリ」とは何か?』(イースト・プレス)、『有吉弘行のツイッターのフォロワーはなぜ300万人もいるのか 絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』、『コントに捧げた内村光良の怒り 続・絶望を笑いに変える芸人たちの生き方』(コア新書)、『1989年のテレビっ子』(双葉社)、『笑福亭鶴瓶論』(新潮社)など。共著で『大人のSMAP論』がある。

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