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「男ばかり集まる大阪」「九州中から女が集まる福岡」20代若者移動の男女差

荒川和久独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター
(写真:イメージマート)

大阪は男ばかり来る

前回の記事(各都道府県別20代男女の東京流出率でわかる「関西男と東北女の行く道」)の続き。前回は、20代における東京への全国からの流出率を見たが、今回は東京以外でも各地域からの流出の多いエリアについて見ていく。

尚、前回同様男女差によって見ていくので、流出総人口の話ではないことに留意されたい。

最初に、前回の東京のおさらいをすると、東京へは東日本が女性流出が多く、西日本は関西を中心として男性流出が多いという話をした。

では、大阪はどうだろうか。

大阪への流出は、男女差でいえば、全都道府県男性超過である。大阪以外のすべての都道府県で、大阪に行く割合は完璧に「男>女」ということになる。誤解をおそれずにいえば「大阪に来るのは野郎だらけ」ということになる。

下の方に掲出したまとめマップをご覧いただければ一目瞭然だが、完全に西日本からの流出に偏っている点が東京とは違う。

エリア別のトップは和歌山。続いて、兵庫、滋賀、奈良からと、主に関西圏の20代男性が大阪に集結するようである。大阪、兵庫、和歌山は東京への流出も男性超過であり、関西男は大都市がお好きなようである。もしかしたら、20代前半で大阪に集まり、20代後半で東京へ移動するという時系列の違いもあるのかもしれない。

愛知と福岡は?

続いて、愛知への流出を見ると、大阪ほどではないが、ほぼ全国的に男性超過である。もっとも多いのが、三重、続いて滋賀と、これも近隣からの流入が多い。

但し、意外なのは、近隣でも岐阜からの愛知流出だけが女性超過になっていることだろう。徳島からも女性超過になっているが、人数的にも割合的にも岐阜よりは小さい。

最後に、福岡を見ると、近隣の地区以外はすべて男性超過であるが、佐賀、長崎、大分、熊本の九州近隣地区から20代女性が移動する先が福岡ということになる。山口からも多いが、これも海をはさんだ隣りの県だからだろう。20代九州女子は福岡に集結するのである。

東と西で分かれる傾向

東京、大阪、愛知、福岡の4つの大都市の傾向から見ると、エリア別の20代男女の若者移動のおおまかな傾向がとらえられる。

東京へは、東北女と関西男が集まり、大阪は関西近辺から男が集まり、愛知へは中部近辺から男が集まり、なぜか岐阜だけ女が集まる。福岡へは九州女が集まってくる。

大昔と違い、日本全国行こうと思えば、物理的にはどこにでも移動移住は可能であるが、実際には東日本と西日本とで分かれていることがわかる。

本記事で取り上げたデータは2022年だけのものだが、これを20年、30年単位で見た場合に、もしこの傾向が続いているのだとすれば、長い年月を経て、東日本が男余り傾向になっているのも納得できるものかもしれない。

さて、なぜ東京と福岡に20代女性が集まってくるのか、について考察したい。

基本的に20代若者の人口移動は、主に就職に伴うものである。18歳時点でみれば、進学による移動もあるが、実は絶対数でいえば、進学での移動と就職の移動は後者の方が圧倒的に多い。

つまりは、若者の移動が多いということはそれだけ若者の職があるということになる。逆に、流出が多いということはその地元に職がないためなのだ。

写真:イメージマート

若者が流出する理由

東京と福岡への流出の都道府県別女性超過のベスト3は、東京が秋田、青森、栃木。福岡へは、佐賀、長崎、大分となる。それぞれの地元の大企業、中企業、小企業の労働者比率を賃金構造基本調査統計(2022年)より比較したのが以下である。ここでいう大企業とは、従業員1000人以上、中企業は100-999人、小企業は100人未満である。

東京に関しては、大企業労働者率が38%であるのに対して、秋田、青森は半分程度の20%強である。特に青森は、小企業率が43%と高く、大きな会社で働きたいという若者にとっては東京に行きたいと思うのは無理もない。栃木に関しては、東北と比べてそれほど東京との差はないが、これは東京に近いがゆえの流出効果があるのだろう。

一方、福岡も同様で、大企業比率以上に、福岡は小企業率が低く、佐賀、長崎、大分など小企業率が4割のエリアからに流入してくるのだろう。

若者を集めるのは「金」と「人」

企業規模だけで単純化はできないが、基本的に、企業の規模は給料の差になる。小企業率の高さは、そのままエリアごとの平均年収の高さと相関する。

賃金だけではない。大きい会社に入ればそれだけ同年代の人達との出会いのきっかけも高まるわけで、そうした会社が地元に少なければ、多いエリアに流れていくのは自然の流れなのだ。

若者は、「金」と「人」の多いところに流れるのである。

より詳しく書けば、金ならなんでもいいわけではない。給付金とかではない。あくまで「自分で稼げる金」である。また、人に関しても誰でもいいわけではない。「自分と近しい年代の人と新規に出会いたい」のである。

過疎化の進む地方の自治体が、若者の移住を促進しようとして行う政策が的外れなのはそこを理解していないからだろう。観光ならいざ知らず、「自然あふれる環境」や「人の良い地域住民とのつながり」などといったぼんやりした話では若者は移動してこないし、残らないのである。

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独身研究家/コラムニスト/マーケティングディレクター

広告会社において、数多くの企業のマーケティング戦略立案やクリエイティブ実務を担当した後、「ソロ経済・文化研究所」を立ち上げ独立。ソロ社会論および非婚化する独身生活者研究の第一人者としてメディアに多数出演。著書に『「居場所がない」人たち』『知らないとヤバい ソロ社会マーケティングの本質』『結婚滅亡』『ソロエコノミーの襲来』『超ソロ社会』『結婚しない男たち』『「一人で生きる」が当たり前になる社会』などがある。

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