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寿司屋でシャリを残す客とコンビニの根っこは同じ?

井出留美食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)
(写真:ロイター/アフロ)

2018年7月12日に放送されたNHKラジオ「すっぴん!」で食品ロスが特集された。

NHKラジオ「すっぴん!」(画像:NHKラジオHPより引用)
NHKラジオ「すっぴん!」(画像:NHKラジオHPより引用)

食品ロスを活用する複数のサービスが紹介された。と同時に、余ったものを再利用する以前に、食品ロスそれ自体を減らす重要性が指摘された。視聴者からのメッセージでは、環境配慮のキーワード「3R(スリーアール)」のうち、「Reduce(リデュース:減らす)」以前に「Refuse(リフューズ:断る)」でしょ、という声もあった。

食品ロス特集が放送されていたことを教えてくれたのは、筆者が青年海外協力隊としてフィリピンに派遣されている時の同期隊員だ。食品ロスを減らすための啓発活動を筆者が続けているのをいつも見てくれていて、教えてくれた。サービスだけを紹介するのでなく、ロスを減らすことも強調しているのでよかった、と話してくれた。

NHK「すっぴん!」では寿司屋でシャリを残す客への苦言も・・

番組では、寿司屋でシャリ(酢飯の部分)を残す客についても苦言が呈された。ダイエットしている女性などが、最初から食べる気がないのに、寿司屋でシャリを残す、と。DJの方たちが「だったら最初から刺身を注文したらいい」と話した。

これはつまり、消費者の「買い過ぎ(飲食店での注文し過ぎ)」だろう。食べないことがわかっている、にもかかわらず、買う(注文する)。3Rの「Reduce(リデュース:減らす)」とは対極にある行動である。

限りある資源を大切にし、持続可能にするためには、

消費者は買い過ぎない。

製造者は作り過ぎない。

販売者は売り過ぎない。

注文し過ぎる顧客と、売り逃がしを恐れて店舗に発注させ過ぎるコンビニ本部の根っこは同じでは?

先日、コンビニオーナー2名に取材した時、2名とも「月に60万円分の食べ物を捨てる」と話していた。日本人のサラリーマンの平均月収をはるかに上回る額の食べ物を捨てるとは、需要予測が多少ずれたというレベルを超えている。売り切れないのをわかっていて売り過ぎているということだ。西日本豪雨で家を失い、支援物資に助けられて避難所で生活している方がいる。生活困窮していて食べ物がない人もいる。しかも日本だけで食料を自給できていない。

最初から食べないでシャリを残す客と、最初から売り切れないことがわかっていながら、粗利益を大きくするために、大量の発注をオーナーに指示する、一部のコンビニ本部。その根っこは「適量」ならぬ「過剰」ということで共通しているのではないだろうか。

参考情報:

NHKらじるらじる 聴き逃し 「すっぴん!」ひざウチ!ふにオチ!アフター311 (2018年7月19日18時まで聴取可能、18時に配信終了)

2018年7月12日に放送されたNHKラジオ「すっぴん!」

「値下げしたくてもできない・・・」コンビニオーナーが弁当を見切り販売できない理由

食品ロス問題ジャーナリスト・博士(栄養学)

奈良女子大学食物学科卒、博士(栄養学/女子栄養大学大学院)、修士(農学/東京大学大学院農学生命科学研究科)。ライオン、青年海外協力隊を経て日本ケロッグ広報室長等歴任。3.11食料支援で廃棄に衝撃を受け、誕生日を冠した(株)office3.11設立。食品ロス削減推進法成立に協力した。著書に『食料危機』『あるものでまかなう生活』『賞味期限のウソ』『捨てないパン屋の挑戦』他。食品ロスを全国的に注目させたとして食生活ジャーナリスト大賞食文化部門/Yahoo!ニュース個人オーサーアワード2018/食品ロス削減推進大賞消費者庁長官賞受賞。https://iderumi.theletter.jp/about

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