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首位決戦に見た自信と余裕&ディビジョン1第9節私的ベストフィフティーン【ラグビー雑記帳】

向風見也ラグビーライター
ケレビは戦術略と無関係に推進力を誇示(写真は開幕節)(写真:松尾/アフロスポーツ)

 リーグワン・ディビジョン1の首位決戦に、クボタスピアーズ船橋・東京ベイは厳しい状況で挑んでいたはずだ。

 3月11日、東京は秩父宮ラグビー場での第9節へは、南アフリカ代表のマルコム・マークスら海外出身のフォワードを5人も欠く状態で臨んだ。いざふたを開ければ、特に目立った欠場者のいない東京サントリーサンゴリアスに29-33と迫る。接戦を演じる。

 試合開始早々に中盤の接点でターンオーバー。手早く攻めて敵陣深い位置へ蹴り込み、まもなく相手ボールスクラムを押し込んで先制トライを奪った。姿勢を低く保って前に出て、向こうの後ろ5人の腰を浮かせた形だ。

 以後も、転がり込んできたチャンスは首尾よく得点化。インサイドセンターの立川理道主将は「勝ちに行って勝てなかったのは残念」としながら、「若い選手を出しながらボーナスポイント(7点差以内の負けにより勝ち点1)がとれた」と語った。

「日々の競争がある。若い選手が出てもパフォーマンスを出せるのは、チームの層の厚さ、強さです」

 もっともサンゴリアスにあって、インサイドセンターの中村亮土主将は「点差以上に余裕があった」。分岐点は中盤。前半終了間際にフルバックのダミアン・マッケンジーが故意のノックオンでペナルティートライを与えるも、ハーフタイム明けは残った14人が追加点を与えない。

 中村の述懐。

「ちょうどハーフタイムにゆっくり(対策を)話す時間があった。ブレイクダウン(接点)に入る枚数についての判断をいつもよりはっきりさせ、(防御の)枚数を整える、と。14人でいいディフェンスができた。これを15人の時もできるよう、チームに促したい」

 後半10分頃、アウトサイドセンターのサム・ケレビがタックルを決めた次のフェーズで、フランカーの小澤直輝がジャッカル。ペナルティーゴールの獲得で敵陣の深い位置へ進むと、マッケンジーが戻ったのも相まってウイングの尾崎晟也がトライを決める。27-19。この日最大のピンチを持ち前のハードワークでしのぐと、その約8分後には攻め込みながらペナルティーゴールをもらって30-19とリードを広げる。

 続く29分に自陣で攻め込まれて30-24と迫られても、円陣を組んだ中村は落ち着いていた。

「別に焦らなくてもいい。スコアでは勝っているから、やることをやればいい、と。あとは、戦術面のことを少し話しただけです」

 直後のキックオフ。交代出場したフランカーの飯野晃司がジャッカル。ペナルティーキックを獲得する。マッケンジーがゴールを決め、33-24とした。 

 要所で踏ん張ったサンゴリアスは、今度の第10節ではNTTコミュニケーションズシャイニングアークス東京ベイ浦安と対戦(20日、秩父宮)。来季のチーム再編が決まった相手を前に、一枚岩であるさまを示せるか。

 かたや惜敗のスピアーズは、19日に東芝ブレイブルーパス東京に挑む。今度は巨漢ロックのルアン・ボタにデーヴィッド・ブルブリング、何よりニュージーランド代表のアウトサイドセンター、ライアン・クロッティが復帰する。

 ブレイブルーパスは、接点へのこだわりを持ちながらも端から端へ球を動かそうとする。復帰した3選手は、向こうの強みを消す役目が求められる。

<ディビジョン1 第9節 私的ベストフィフティーン>

1、クレイグ・ミラー(ワイルドナイツ)…ヴェルブリッツ戦で後半途中から登場し、強烈なタックルを連発。

2、堀江翔太(ワイルドナイツ)…懐の広いランニングで複数の防御をひきつけたり、とっさのカバーリングで危機を未然に防いだり。

3、郭玟慶(ブルーレヴズ)…味方の一時退場で苦しい時間帯に投入され、スクラムを圧倒。シャイニングアークスを沈黙させた。

4、サウマキ アマナキ(イーグルス)…レッドハリケーンズ戦でハードタックル、モールのドライブで魅する。

5、シオネ・ラベマイ(ブレイブルーパス)…絡んだら簡単にはがされぬジャッカルは圧巻。

6、ピーターステフ・デュトイ(ヴェルブリッツ)…ワークレート!

7、クワッガ・スミス(ブルーレヴズ)…シャイニングアークス戦では、自陣深い位置でのジャッカル、ターンオーバーを連発。

8、姫野和樹(ヴェルブリッツ)…攻め込まれた時のターンオーバー、トライにつながる快走。

9、流大(サンゴリアス)…緩急自在のパスで味方を前に引き出す。80分フル出場。

10、松田力也(ワイルドナイツ)…精度の高いキックパス。深い位置から駆け込んで好パスを重ねる。

11、ジョネ・ナイカブラ(ブレイブルーパス)…敵陣ゴール前で相手に囲まれながらもキックパスをタップ。味方のトライを生む。

12、ヴィリアミ・タヒトゥア(ブルーレヴズ)…攻めのフォーマットに沿いながら、防御ラインを強引に切り裂く。守っては後半13分頃、対するシャイニングアークスのイズラエル・フォラウヘ自陣インゴールエリアでタックル。胸元のボールへ掌を伸ばし、落球を誘った。

13、サム・ケレビ(サンゴリアス)…パスコースへ駆け込んでゲインラインを攻略。キックチェイスからのタックルは前半35分のトライをおぜん立てする(一時10点リードを奪う)。14人の時間帯もタフなタックルとリロードを披露。インサイドセンターの中村主将とともに、堅陣を敷いた。

14、竹山晃暉(ワイルドナイツ)…スペースを切り裂く2本のキックが、「50/22ルール」の適用に伴い味方の得点機に昇華された。インターセプトからのトライでだめを押した。

15、豊島翔平(ブレイブルーパス)…相手を置き去りにするフットワーク、向こうの走路をふさぐ防御。

ラグビーライター

1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年に独立し、おもにラグビーのリポートやコラムを「ラグビーマガジン」「ラグビーリパブリック」「FRIDAY DIGITAL」などに寄稿。ラグビー技術本の構成やトークイベントの企画・司会もおこなう。著書に『ジャパンのために 日本ラグビー9人の肖像』(論創社)『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー――闘う狼たちの記録』(双葉社)。共著に『ラグビー・エクスプレス イングランド経由日本行き』(双葉社)など。

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