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スマホで契約できる変額保険「AHARA」 その仕組みとは?

山口健太ITジャーナリスト
プライマリー生命「AHARA」(プレスリリースより、筆者撮影)

3月31日、三井住友海上プライマリー生命保険(以下、プライマリー生命)が、スマホで契約できる新しい保険商品を発表しました。5月から販売を予定しています。

大きな特徴として、運用リスクのある「特定保険契約」にもかかわらず、スマホだけで契約を完結できるといいます。どのような仕組みなのか、提供元に聞いてみました。

スマホで契約、低コストを実現

プライマリー生命が発表した「AHARA(アハラ)」は、スマホですべての手続きが完結する資産形成・運用型の生命保険商品と位置付けています。

従来、このような特定保険契約は対面で契約する必要があったとのことですが、その申し込みから契約成立までをネットで完結できる商品は日本初としています。

これまでスマホで契約できなかった理由として、法令上の制限はなかったものの、契約者に商品のリスクを正しく理解してもらうため、対面で契約するのが一般的だったといいます。

これに対してプライマリー生命では、「お客様のリスク理解度をWebサイト上にてクイズ形式で確認するといった工夫により、当局の認可を得ることができた」(広報)と説明しています。

もう1つの大きな特徴としては、「みんなの銀行」との連携です。みんなの銀行は、九州を地盤とするふくおかフィナンシャルグループが2021年に開業した新しい銀行です。

AHARAでは、保険料の口座振替にみんなの銀行が提供するAPIを利用。収納代行企業や外部の決済ネットワークを通すことなく、保険料を引き落とせる仕組みとしています。

プライマリー生命はこれらの「スマホ契約」と「API活用」によって低コストを実現したとのこと。「非対面で契約できるため、人件費の面でも低コストになった」(広報)としています。

既存の商品とは中身が異なるため単純比較はできないものの、ざっくりした数字としては2%のコスト削減が可能になったとのことです。

こうした特徴から、現時点では保険料の引き落としはみんなの銀行のみ対応しています。主なターゲットとしても、同銀行の口座を持っているデジタルネイティブ世代となっています。

プライマリー生命の主な顧客層は退職前後や資産承継の世代で、金融機関の窓口販売(窓販)が中心だったとのことから、同社としてもこれまでにない年齢層とチャネルに向けた取り組みになるようです。

毎月の積み立ては500円から、専用サイトで増額も可能です。保険料はブラックロックが運用する国内外の株式や債券等を1%単位で組み合わせて投資できますが、リスクもあります。所得税の「生命保険料控除」にも対応します。

API活用の事例としても注目されそうです。みんなの銀行は、本人確認用の参照系APIに加えて、口座振替を可能にする「更新系API」を初めて外部に提供するとのことです。

これまで銀行のAPI提供は参照系が多く、更新系は少ないとされてきました。今後、更新系の活用事例が増えていけば、消費者にとってさまざまな金融商品の低コスト化を期待できそうです。

スマホ契約なら安心?

一般に、おトクな保険商品の中には、他の商品の販売につなげるための「ドアノック商品」と呼ばれているものがあるようです。

デジタルネイティブ世代に限らず、そうした対面でのセールスに抵抗を感じる人にとって、スマホで契約が完結するというのはメリットに感じるところでしょう。

販売が始まる5月までにはAHARAのWebサイトが公開されるとのことなので、詳細はそのサイトを見て判断することをおすすめします。

ITジャーナリスト

(やまぐち けんた)1979年生まれ。10年間のプログラマー経験を経て、フリーランスのITジャーナリストとして2012年に独立。主な執筆媒体は日経クロステック(xTECH)、ASCII.jpなど。取材を兼ねて欧州方面によく出かけます。

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