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【脚が長い方が、走るのが速いの?】実は脚の長さより関係があること、そしてそれよりも気にしないこと。

たくや/ランナー医師、ランナー、ランニングコーチ

テレビ中継されるマラソンや駅伝を観ると、すらりと脚の長いエリートランナーが飛び跳ねるように走るのを目にします。まるで脚の長さという天賦の才を競っているようにも見えてしまいます。マラソンとは、そんな脚の長い人を頂点としたピラミッド構造の競技なのでしょうか。脚が短い人は参入すべきでない競技なのでしょうか。文献をもとにみてゆきましょう。

ランニングパフォーマンスに足の長さはほとんど関係ない

脚が長いランナーの方が速のか?について調べた研究はいくつかあります。ですが多くの文献で若干速い傾向はあるものの、明らかな差が見つかったという結果までは得られていません。一つ研究をみてゆきます。

文献はエストニアのタルトゥ大学のもので、平均25.2歳のエリート長距離ランナー13人について調べたものです。時速14km、16km、18kmで走行したときのランニングエコノミーを調べています。

下肢、大腿、下腿の長さや比などと、ランニングエコノミーの関係:Laumets R et al. J Hum Kinet.2017より改
下肢、大腿、下腿の長さや比などと、ランニングエコノミーの関係:Laumets R et al. J Hum Kinet.2017より改

この研究では脚の長さや重さ、長さの比などを調べています。脚の長いランナーの方がランニングエコノミーがよい傾向があるのですが、研究が小規模なこともあって有意差と言える結果が得られたのは、16km/時で走行したときの下腿の長さのみでした。ここか言えるのは脚の長さも大事だけど、ごく小さな要素に過ぎないということです。

それよりもアキレス腱モーメントアームが速さと関係あり

アキレス腱モーメントアームは下腿三頭筋の収縮力を、てこの原理を使って蹴りに変換するものです。足関節の角度によっても異なりますが、もともとの骨格に大きく影響するため、ランニング能力に少なくない影響を与えると言われています。

長いアキレス腱モーメントアームと短いアキレス腱モーメントアームの例と、そのイメージ:running in systemsのHPより改
長いアキレス腱モーメントアームと短いアキレス腱モーメントアームの例と、そのイメージ:running in systemsのHPより改

2008年のオランダの文献によると、アキレス腱モーメントアームが短いほどランニングエコノミーが高く、さらにはこのアキレス腱モーメントアームはランニングエコノミーの56%を説明できると報告しています。

ですが陸上中長距離界で世界的なトップ選手が多いケニア人を調べた日本の研究で、パフォーマンスの高い選手ほどアキレス腱モーメントアームが長い傾向があったとのことで、まだまだ研究の余地がありそうです。

脚の長さより大事なこと

脚の長さやアキレス腱モーメントアーム、これらが影響するランニングエコノミーは、ランニングパフォーマンスに寄与する一つの因子でしかありません。国内トップを競う実業団選手ともなれば、すべてにおいて秀でる必要があり、結果脚の長さやアキレス腱モーメントアームも大事かもしれません。ですが長距離走のパフォーマンスには、ランニングエコノミーよりも最大酸素摂取量が大きく関与すると言われています。

ですので市民ランナーであれば、アキレス腱モーメントアームはともかく、脚の長さはほとんど関係ないと思われます(ちなみに自分も脚は短いほうです)。脚が短くても、きっと速く走れます。脚の長さなど気にせずにランニングを楽しんで、そして目標を達成して下さい!

医師、ランナー、ランニングコーチ

41歳まで某大学病院の消化器肝臓内科で勤務、現在は都内の一般病院で内科医をしています。また、中学でランニングを始めて走歴は約40年、その経験を活かしてランニングステーションでコーチもしています。総合内科専門医・消化器病専門医・肝臓専門医・抗加齢医学会専門医、JMJA公認ランニングドクター他、資格は多数。フルマラソンの完走は67回でベストタイムは2時間50分31秒(2019湘南)。ランナーからよく聞かれることやランナーに伝えたい事を、科学的なエビデンスと経験をもとに記事を書いています。

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