アイスランド大統領選 新たなリーダーは女性か?
アイスランドで行われる大統領選が国内外から注目されている。
この選挙では、4月6日に辞意を表明したばかりの元首相、カトリン・ヤコブスドッティル氏が大統領職を目指している。彼女の出馬が国の政治風土にどのような影響を与えるか、グドゥニ・ヨハネソン現大統領の後を継ぐかどうかが注目されている。
首相から大統領へ、変わる舞台
ヤコブスドッティル元首相は、候補者の中で最も高い支持を得ている(アイスランド公共局)。唯一の女性候補である彼女は、同国のジェンダー平等をさらに推進する象徴ともいえる。自身の長い政治経験を生かし、政治と社会の動きや変化を理解し、アイスランドの国際的な利益を保護する必要があると、首相を辞任して大統領選への出馬を表明した。
先駆者の遺産
アイスランドの女性政治参加の歴史を象徴するヴィグディス・フィンボガドッティル氏は、1980年から1996年まで国民による直接選挙で選ばれた世界初の女性大統領として16年間務めた。彼女の遺産は、今日の女性に多大な影響を与えている。もし、ヤコブスドッティル元首相が国民に選ばれると、2人目の女性大統領の誕生となる。
熱戦
ヤコブスドッティル元首相の最大のライバルは、バルドゥル・ソールハルソン氏だ。ハットラ・フルンド・ロゥガドッティル氏、ヨン・ナール氏をこの含め、この4人がしのぎを削っている。
地元の世論調査では、与党支持者や高齢者層は元首相を応援し、若者層や「海賊党」「改革党」の支持者はソールハルソン氏に傾いている。支持率の差はわずかだが、この分布が選挙結果にどのような影響を与えるかが注目される。
アイスランド独特の政治情勢には、「海賊党」と「改革党」という比較的新しい政党が影響を及ぼしている。海賊党は、既存政党に懐疑的な市民や若者からの支持が高く、選挙の行方に新たな側面をもたらしている。海賊党は情報の自由と透明性を重視し、改革党は私的利益よりも公共の利益が優先される社会や経済改革を訴えている。これらの党の支持者も、主要な候補者への投票行動に影響を与える可能性があり、選挙戦の予測を一層複雑なものにしている。
小国の力 市民一人一人と対面で語り合う
アイスランドは人口が37万人と小規模だが、選挙戦は足での地道な全国めぐりが鍵となる。首相としての辞任後、ヤコブスドッティル氏は全国を回り、SNSを通じて積極的に市民との対話を試みている。小国だからこそ、多くの有権者に挨拶がしやすい。これらの地道な活動が、選挙の結果にどのような影響を与えるかが注目される点だ。
「カトリンがいない」政権の不安
カトリン・ヤコブスドッティル元首相は「カトリン」と呼ばれ、市民に親しまれてきた。
2017年からヤコブスドッティル氏が率いる連立政権は、彼女のリーダーシップと人柄によってまとまりを見せてきた。彼女の辞任によって、政権の未来に対する不安が高まっている。
新たに首相を務めることになるベネディクトソン外相は、「独立党」の党首で、主に富裕層や既存政党支持者からの支持を集めている。しかし、ヤコブスドッティル首相が築いた「中道右派と中道左派のバランスを保つ連立政権」を維持できるかについては疑問が呈されている。
この政権変更により、来年に予定される国政選挙への影響も懸念されている。選挙後の政治的な連立がどのように機能するか、また政党間のまとまりが保たれるかが大きな問題となっている。
「カトリン」人気とは対照的に、彼女が党首を務める「左翼環境運動」党は、「政党としては市民からの人気がない」ことが問題であり続けた。よって、「カトリン」がいない政党は政権をまとめることができない。
市民の間では、ヤコブスドッティル氏のように、「異なる政治勢力を結びつける能力を持ったリーダー」が不在となることに対する不安があり、大統領選を超えて国政選挙の結果による政治の不安定化を心配する声も上がっている。
選挙が描くアイスランドの明日
「世界で最もジェンダー平等な国」として、日本でも注目を集め続けてきたアイスランドとカトリンという女性リーダー。選挙の行方が気になるところだ。