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今週末の直接対決でマジック点灯?リーグ新記録も?《阪神ファーム》

岡本育子フリーアナウンサー、フリーライター
先週の中日戦で、試合後にヒーロースピーチをする浜地投手(左)と島田選手(右)。

 先週8月28日から9月2日までの阪神ファームは、まず鳴尾浜の中日戦で3連勝!しかも連続完封勝利で今季の中日戦を締めくくりました。対戦成績は阪神の20勝6敗4分けです。翌31日からの広島3連戦(由宇、尾道)は9月1日は雨天中止だったため2試合が行われ、どちらも6対1というスコアで負け。その間、2位のソフトバンクは中日に2勝(1つ中止)したので、ゲーム差が3.0に縮まっています。

 4日現在、阪神は64勝36敗7分けで残り11試合、この日の広島戦(由宇)が中止になったソフトバンクは58勝36敗5分けで残り19試合。直接対決は8日と9日の高知遠征と19日~21日の鳴尾浜で予定されている5試合を残しています。ただし雨天中止分の振替試合がないため、残り試合は最大での数です。

 その最大試合数を消化することを前提に計算したところ、阪神に優勝へのマジックナンバーが点灯するのは早くて9日(M6)、最短の優勝決定日は13日と出ました。あくまで“最短”です。でも逆にソフトバンク側から見ると、最短で11日にマジックナンバー点灯の可能性があります。とはいえ現時点での計算で点灯するのはM11なので、最短の胴上げは20日。まあ、そこまで負け続けませんからね、阪神も。

【13か月ぶりの公式戦先発!浜地】

 さて、きょうは先週行われた5試合の中から、8月29日と30日の中日戦で聞いた話を書かせていただきます。29日は好投した先発の浜地真澄投手と、最後を締めた尾仲祐哉投手のコメント。30日は2点タイムリーなど2安打の島田選手。そして矢野燿大監督の談話です。そして鳴尾浜のヒーロースピーチ初登場3連発(28日・牧丈一郎投手、29日・浜地投手、30日・島田選手)も合わせてどうぞ。

 では、まず29日。この日、今季の公式戦は初先発だった浜地投手。1回、2回と先頭にヒットを許しながら後続をしっかり断ちました。3回と4回は連続三振を奪っています。5回は三者凡退で、6回はまた先頭に中前打されたものの、そこから5球でアウト3つ!6回を投げて3安打無失点、しかも無四球という内容です。

先発の浜地投手。6回を投げ無失点でした。
先発の浜地投手。6回を投げ無失点でした。

 試合後、矢野監督は「チームの中でも、浜地のストレートがいいよ、というレベルのものがある。持っているポテンシャルはわかっているから。ストレートの質はスピードガン以上。変化球もカットボールや使える球が多かった。楽しみなピッチャー。真っすぐとその反対になるボールを磨くのが、今目指すところ。ローテーションに入ってかどうかはわからないけど、いいところで投げさせたい」と話しました。

「いいアピールができたとは思っていない」

 浜地投手は、納得の内容だったかと聞かれ「正直あんまり調子よくはなかったです。ボールだったり、精度の部分だったり全然納得できなかったけど、公式戦なので結果としてゼロに抑えたってのはよかったと思います」と回答。珍しく球が浮いていた?「そうですね。全体的に浮いたりしたのが多かったので、そこは反省点です」

 ストレートの質を矢野監督も評価していますが、これまた本人は「きょうだったら、真っすぐの質という部分では物足りないですねえ。自分の目でマウンドから見ても、軌道があまりよくなかった。いい時は低めに伸びていくボールもあるんですけど、そこが垂れたり抜けたりする球も多かったので」と不満げ。

味方の攻撃中、ベンチ前でキャッチボールをする浜地投手。
味方の攻撃中、ベンチ前でキャッチボールをする浜地投手。

 金本知憲監督の視察を前もって知らず、投げている時に気づいたと言います。いいアピールができたのでは?との問いに「いいアピールができたとは思っていないです。1軍で、あの投球で勝てるかって言ったら、やっぱり勝てないので。いいアピールができたと、自分は思っていないです」と浜地投手。でも自身の成長という点では実感も?「そうですね。成長段階というか、しっかり段階を踏めているのかなと思います」

福原コーチも、“できる子”に期待

 6イニングはプロ最長で、球数は7月25日のBCリーグ・福井戦の89球に次ぐ80球。そこまで投げられるようになったわけですね。「ブルペンでも100球を超える球数は結構投げているので。実戦で投げてみて体力的には全然問題なく、次もいけると自分で思いました。そこはいい方向にとらえたいです」

 最後に自身の持ち味を質問されて「自分は真っすぐが死んじゃうとダメになるので、真っすぐの質と精度ですかね」と締めくくった浜地投手。この日は高校3年生の弟さんが訪れ、スタンドで観戦していたとか。しかも1人で。「来るのは初めてです。夏が終わってヒマだったんじゃないですか」と笑う真澄お兄ちゃんでした。弟さんは甲子園のナイターも見に行ったみたいですよ。

29日のヒーロースピーチは浜地投手。短い文章でしたが、終始この笑顔です。
29日のヒーロースピーチは浜地投手。短い文章でしたが、終始この笑顔です。

 福原忍投手コーチの浜地投手評もご紹介しましょう。本人は納得していない様子だったことに「2回くらいまではね。でも3回くらいから真っすぐがよくなりかけた。あれくらい投げられたら僕はよかったと思うよ。本人は不満そうだったけど」と苦笑い。

 続けて「まあそこは本人の意識の高さ?自分で間合いを変えたりできる子なので。普通はできない子も多いんですよ。そういうのを見ても実戦向きだなと思いますね。コントロールで乱れるのもあまり感じないし。真っすぐをしっかり意識して、まだまだレベルアップを目指してほしい」という福原コーチです。

原点に戻って腕を振った尾仲

 29日は浜地投手、谷川昌希投手、高橋聡文投手と無失点でつなぎ、9回は尾仲投手が登板。先頭を遊ゴロ(熊谷敬宥選手がよく追いつき、一塁へ大遠投!)に切って取ると、あとは連続三振を奪って試合終了。ナイスピッチングです。

 尾仲投手は、いい投げっぷりでしたねと言ったら「最近悪かったので腕だけでも振らないと、と思って。変な意識をしすぎるとボールが行かないので、原点に戻ってしっかり振ることを心がけてマウンドに上がりました」とうなずきながら答え、さらに「変化球が抜けたり、引っかけたりしていて。でも真っすぐがよくないと変化球も生きないので」と真っすぐ中心のピッチングを振り返っています。

尾仲投手は9回、2奪三振の三者凡退に!力感あふれる投球でした。
尾仲投手は9回、2奪三振の三者凡退に!力感あふれる投球でした。

 そこへ「あのショートゴロのおかげですよ~」と言いながらウエートルームへ向かった熊谷選手。途中で振り返って「あれがヒットになっていたら、こんな風になっていたかも…」と尾仲投手が焦る顔を真似してニヤニヤ。尾仲投手も「はい、ショートの子のおかげ」と笑っていました。

 なお、この日は7つの盗塁を決めた阪神。そのうち2つが熊谷選手です。ウエスタン・リーグ記録は11個なんですが、阪神ファームとしては何年ぶり?もしかしたら最多?と思いつつ、さすがに調べるのは難しくて…。すみません。とりあえず2010年以降では最多でした。非公式戦では今季も9盗塁という試合があります。

【13年ぶりの貯金30に到達!】

 30日は先発の岩田稔投手が4回6安打3四球ながら、自身も含めて内野陣が3つの併殺を完成させるなど無失点でした。そのあとも1つあって計4併殺(ちなみにリーグ最多は6)。救援陣もしっかり抑えて、前日に続く完封勝利で64勝34敗7分けとなり貯金が30に!2005年9月3日(75試合目)の貯金31が阪神ファームとしての最多なので、あと1つで並びますね。2005年は88試合で最終的に55勝27敗6分け、28の勝ち越しです。

 では、先制の2点タイムリーを放った島田選手の話です。このタイムリーは2回1死満塁で、カウント2-1からの3球目(146キロ)を打ってサードのうしろ、左翼線へ落としたもの。「何とか食らいついてヒットになればと、そういう気持ちがちょっと出た打席だったかなと思います」

試合後のヒーロースピーチでマイクを持つ島田選手。
試合後のヒーロースピーチでマイクを持つ島田選手。

 次の打席は4回、0-1からのカーブ(114キロに軽くバットを出してライト前へ運んだヒットでした。そんなバッティングに関して「徐々に良くなっている感じはあります。きょうはストレートに詰まっちゃったんですけど、そのあと変化球はしっかり振れていたので。そこは自分のプラス材料にしていきたいです」と島田選手。

 矢野監督は「バッティングの状態がちょっとずつ上がって来て、(タイムリーは)まあ当たりもよくないし結果だけがいいというところかもしれんけど、次のカーブのヒットも“対応”で打てたものだと思うし。あいつは足があるだけに、ランナーで出るっていうことがプロで生きていく道やから。そういうところで言うと、バッティングが課題なんでね。結果が出ないと自信もなかなか持てないから」と話しています。

 課題克服のためには?「バットのヘッドが前に入っていたり、正面を向いちゃうというか正対しすぎる感じがあったから、ちょっとシンプルにヘッドが入りすぎないようにすることと、1点だけで打ちにいくんじゃなくて前の壁をしっかりして体の入れ替えで打つようなイメージでやっている。練習でもだいぶ打球の強さも出てきたし。やっぱりバットに当てないと長所が生かせない選手なので」

逃したリーグ新記録に再挑戦

 この試合の4回に植田海選手が今季ファーム7個目の盗塁を決め、ソフトバンクが2013年に記録したウエスタン・リーグ最多の156盗塁に並びました。そして6回に、現在リーグトップの25盗塁を成功させている島田選手が試みたものの失敗…。

チーム156盗塁目を成功させた植田選手。「新記録は島田さんが決めないとねえ」と笑っていました。
チーム156盗塁目を成功させた植田選手。「新記録は島田さんが決めないとねえ」と笑っていました。

 矢野監督も「あとは最後の盗塁、スライディングが弱いわな。パチッと行ったならいいけど、だらーっと流れてアウトになってしまうってのはねえ。あれが強いスライディングでのアウトなら1軍でも通用するというか、やれることをやったと、あいつのレベルも上がったと言えるのに」と残念そうでした。「それがたまたま記録を超えることになればよかったけど、まあ俺もウエスタンの記録を抜いてやろうと始めたわけでもないから。誰かが走るでしょう」

 この盗塁死に、島田選手は「いい形で終わりたかったんですけど、駆け引きという面で(スタートを)切ってはいけないところで切ってしまったので。相手が走られたくないところで行かなきゃいけないのに、きょうはどっちかというとバッテリーが有利な場面で行ってアウトになった…。もっともっと相手の裏をかくようなとこを狙って走っていかないと。これからも、そこにこだわってやっていきたい」と反省していました。

今度こそ自分の足で新記録を!と島田選手は思っているかもしれませんね。
今度こそ自分の足で新記録を!と島田選手は思っているかもしれませんね。

 成功していたらリーグ新記録だったと告げたところ「え、そうなんですか?ああ~やっちゃいましたね…」と思いのほかガックリした様子。植田選手がリーグ記録に並んだんですよ。「海がタイ記録?あー…。すみません。また頑張ります!」。へこませるつもりはなかったのに、ごめんなさいね。

 広島戦では8月31日が盗塁なし。9月1日は雨天中止。2日は熊谷選手が1回に二盗を失敗、島田選手は3回にキャッチャーからの牽制で刺されました。よってまだ156個のままです。次は8日(高知)と9日(安芸)に、“記録保持者”・ソフトバンクとの直接対決で塗り替える可能性ありです。さて誰が決める?

“初ヒーロー3連発”をどうぞ!

 最後に、中日3連戦でヒーロースピーチを担当した3人の言葉を再現しておきましょう。うまく聞き取れなかった部分もあったので、本人たちが語った通りではありません。ご了承ください。

28日 牧投手

28日にヒーロースピーチを担当した牧投手。写真は11日のものです。
28日にヒーロースピーチを担当した牧投手。写真は11日のものです。

 馬場皐輔投手が7回を投げたあと8回に登板した牧投手は、1死からヒットを許したものの2者連続三振を奪って0点に抑えています。マイクを渡されたのは、6回まで無失点だった馬場投手でなく、タイムリー三塁打などマルチの高山俊選手でもなく、牧投手でした。

 「ことし入りました、高卒1年目の牧丈一郎です」と、最初に挨拶してお辞儀。続けて「いつも点ばっかり取られていたんですけど、きょうは無失点に抑えることができて…(言い直して)抑える姿を見せることができて、よかったです」とニッコリ。そして「これからも、こういうピッチングを見せていけるように頑張りますので、応援よろしくお願いします!」という締め。なかなかよかったですね。

29日 浜地投手

 マイクを持った時から、ずっと白い歯がこぼれていましたよ。終始ニコニコと笑顔で「きょうは応援ありがとうございました。次もまた勝つので、僕のピッチングを見に来てください。きょうはありがとうございました!」とスピーチ。

 実は8月7日に2人目で登板して4回1/3を無失点の好投だった時も、矢野監督は指名しようとしたのですが列にいなかった浜地投手。しっかり先発の役目を果たして2勝目を挙げた、この日でよかったですね。

30日 島田選手

30日、島田選手のスピーチでなぜか爆笑する(左から)今成選手、熊谷選手、緒方選手。
30日、島田選手のスピーチでなぜか爆笑する(左から)今成選手、熊谷選手、緒方選手。

 「きょうは応援ありがとうございました!きょうもしっかり勝って、3連勝することができました」という入り。なかなかスムーズと思っていたら「えーそうですね…」と言ったあと言葉につまり、スタンドから「頑張れ!」の激励。これにマイクを下げて苦笑いした島田選手です。うしろで並ぶ選手たちも大ウケ。でも気を取り直して続けました。

「今、阪神タイガースの2軍は首位を走っていますが、僕は皆さんのご声援のおかげと思っています。もっともっと活躍をして(このあとハッキリ聞き取れず…)1軍に上がって頑張りたいと思います。これからも熱い声援をよろしくお願いします!」

    <掲載写真は筆者撮影>

フリーアナウンサー、フリーライター

兵庫県加古川市出身。MBSラジオのプロ野球ナイター中継や『太田幸司のスポーツナウ』など、スポーツ番組にレギュラー出演したことが縁で阪神タイガースと関わって約40年。GAORAのウエスタンリーグ中継では実況にも挑戦。それからタイガースのファームを取材するようになり、はや30年が経ちました。2005年からスポニチのウェブサイトで連載していた『岡本育子の小虎日記』を新装開店。「ファームの母」と言われて数十年、母ではもう厚かましい年齢になってしまいましたが…1軍で活躍する選手の“小虎時代”や、これから1軍を目指す若虎、さらには退団後の元小虎たちの近況などもお伝えします。まだまだ母のつもりで!

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