【横山塾】天才のヒラメキを「言語化」する
■天才的なヒラメキ、発想手順を解説する
どうしてダメな経営者ほど「イノベーションを起こせ」と言うのか?で書いたとおり、たとえ経営者が強い口調で「イノベーションを起こせ!」と言ったとしても、その期待に応えられるのは天才か変人だけである。
おそらく変人は、組織の中で認められないだろう。合意形成も難しいから、100社や1000社に一人いるかどうかの天才でない限り、「イノベーションを起こせ!」と言われただけで、実際に経営革新ができるわけではない。
また、天才イノベーターが持つ「4つの性向」にも書いたが、イノベーションというのは、だいたいチームでやるものではない。革命は、一人の天才が起こすのである。
「みんなで力を合わせてイノベーションを起こそう!」
だなんて言っていても、掛け声倒れになるだけである。小さな改善はできても、根底を覆すような、そんな大胆な発想は生まれない。
そもそも「イノベーション」に関する書籍を読むと、著者は研究者であり、だいたいが著者が行った研究結果に関わる考察である。これが「論理思考」の関連書とまったく違う傾向だ。
ビジネス書の著者を以下の3つに分類すると、
(1)研究者 → 事例研究を通し、帰納法的アプローチで理屈や法則を解説する
(2)成功者 → 自身の体験を振り返り、自身が編み出したノウハウやテクニックを解説する
(3)コンサルタント → 支援した企業、個人、受講生などを演繹的アプローチで成功させ、体験を通じてブラッシュアップした理屈や法則を解説する
このようになるだろう。まず(2)分類の著者が書いた書籍は、とにかく面白い。というか、この手の書籍は面白くなければ商業出版する意味がないだろう。再現性の高いテクニックを解説するのであれば(1)や(3)分類の著者に叶うはずがない。
(2)の著書は再現性よりも話題性である。物語調になっていてユニークであるし、著者が体験したエキセントリックな体験談が読者の感性を刺激することだろう。ただし、ここで紹介されているノウハウ類は再現性があるかどうかは微妙だ。
(1)の著書も、非常に読み応えがある。「なぜこの企業が成功したのか」「どうしてこの会社は凋落したのか」その要因が、念入りに取材され、客観的なデータを使って整理され、表現されている。とても参考になる書だ。
私のようなコンサルタントが書く書籍が(3)分類だ。正直なところ読んで面白いかどうかは、わからない。だいたいが使い古されたテクニックに、少しばかりのスパイスを振りかけられた内容だ。
多くの企業や組織で通用するということは、それだけそのノウハウは抽象度が高くなる。「マネジメント」でも「リーダーシップ」でも「マーケティング」でも、どんなテーマを扱っても、似たり寄ったりの内容になりがちだ。実績があるコンサルタントほど、そのようになる。
話をもとに戻すと、「イノベーション」に関する書籍は(1)分類の著者が書くことが大半だ。もしくは(2)の著者だ。そして、ほとんどが帰納的アプローチで書かれている。つまりイノベーションに関する書籍は「後付け理論」が多い、ということなのである。
これは論理思考に関する書籍とは、真逆の傾向だ。
「論理思考」「ロジカルシンキング」系の書籍のほとんどが、コンサルタントと呼ばれる人が書いている。理屈先行で、まさしく演繹的だからだ。
このことからわかる通り、論理思考・ロジカルシンキング(垂直思考)は再現性が高く、イノベーション思考・クリエイティブシンキング(水平思考)は再現性が低い手法と言える。
イノベーションを起こすための秘訣・コツのようなものは、現時点においては、なかなか発見されておらず、成功事例も少ないことを意味している。だからイノベーション活動を専門とするコンサルタントも多く存在しないのだ。
とはいえ、「イノベーションはすべて結果論」と言い放っては、誰も「イノベーションを起こそう!」などとは言えなくなる。部署名や委員会の名前に「イノベーション」という単語をつけることは難しくなるだろう。
そこで今回は、天才的なヒラメキ、イノベーティブで大胆な発想をどのように創りだしたらいいのか。そのフレームワークや、発想手順について解説する。
「オズボーンのチェックリスト法」をはじめ、発明・発想力や、ラテラルシンキング(水平思考)の書籍などに紹介されたテクニックに、NLP(神経言語プログラミング)的な味付けをして、わかりやすく表現した。
「創造性の4B」「SCAMPER(スキャンパー)7つの問い」「ディズニー・ストラテジー」の他、特に発想の思考プロセスは必読である。
「7000字」を超える大作である。ぜひ最後まで読んでもらいたい。
■4つの思考プロセス
素晴らしいヒラメキを生むフレームワークを紹介する前に、発想の姿勢・プロセスについて解説する。
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