小麦粉不使用の和のケーキ「つくね芋金柑」で京野菜と金柑のしっとり甘酸っぱい上質なお三時を
とろろをお好み焼きに入れると、ふんわりもっちりとして美味しいんですよね。同様に、実は和菓子にもとろろのように摺り下ろした長芋や山芋を使用するレシピや作品が沢山あるのです。鹿児島県のかるかんも、自然薯を使用していますね。
さて、旬を迎えた京野菜のひとつ「山の芋」も京都の冬の食卓、もとい和菓子に欠かせない材料のひとつ。まんまるでごつごつとした茶色い風貌から、つくね芋とも呼ばれ、練り切りのつなぎなどにも使用されます。薯蕷饅頭とよばれる白磁のお饅頭にも使用されているので、食品表示欄にてご覧になったことがある方もいらっしゃるかと思います。
一般的な長芋よりも水分が少なく、摺り下ろすとトロトロというよりもちもちとした質感が特徴的です。
先日創業220周年を迎えた京都の老舗「亀屋良長」さんでも、晩秋の終焉と冬の到来を告げるような和のケーキが発売されました。今回は「つくね芋金柑」をご紹介。
橙色の煌めきに、冬だからこそ恋しくなる温もりを見いだせるような気がします。約9cmのパウンドケーキ型のケーキは、まるで金の延べ棒のよう。
開封すると、ふわりと広がる爽やかな柑橘系の香り。非常にしっとりとした焼き肌は、一見すると小麦粉不使用とは思えません。蒸かして裏ごししたもの、すりおろしたもの双方をたっぷり合わせた生地とのこと。
スッと包丁が入るほど柔らかく仕上げられた金柑の蜜煮はすぱっと包丁で切れるので、断面も鮮やか。上面の果実が切れずにぼろぼろの断面になってしまうパウンドケーキもあったなと回顧。生地は果皮がたっぷりと混ぜ込まれ、見た目にも鮮やか。
肝心のお味はといいますと、非常にまろやかで、ワンテンポおいてからそーっとそーっと甘味が舌先から染み込んでいきます。ぷるぷるといいますか、もっちりとした滑らかな食感のケーキは、つくね芋やアーモンドパウダー、タピオカ粉といった湿潤なテクスチャーを生み出してくれる素材を絶妙なバランスで配合しているとのこと。この食感は小麦粉では実現不可です…!まろやかさの中に、金柑の蜜煮が演出するスンと澄んだほろ苦さと優雅な香り、甘味と酸味も良い塩梅に効いています。柔和で上品な風味を、つくね芋や金柑といった和の素材がけん引しているかのよう。
蜂蜜のコクも金柑の余韻に加わり、子供でも食べやすい仕上がりになっているかと思います。その土地の、京都の食文化の魅力をたっぷりと閉じ込めた愛らしいお菓子。和の焼き菓子と温かい飲み物で、冬の京都に思いを馳せてみてはいかがでしょうか。
※こちらは三越伊勢丹・菓遊庵での販売となります。
<亀屋良長・本店>
公式サイト(外部リンク)
京都府京都市下京区四条通油小路西入柏屋町17-19
075-221-2005
9時30分~18時(茶房は11時~17時)
定休日 年中無休(1月1日~1月3日はお休み)