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乱暴に焼いてもうまい関西焼肉の謎と仕組み

松浦達也編集者、ライター、フードアクティビスト

焼肉のおいしさは結局のところ、「表面に適度な焼き目がつき、内部が適切に温まっている」状態をいかに作るかに尽きると思う。

理系っぽい言い方をすると「表面に加熱による強いメイラード反応とカラメル化が起き、内部は筋線維からの水分の離水が少ない60程度までの加熱で多汁性を保った状態」とでも言えるだろうか。それを実現しやすいのが、5-8mm程度の厚さというわけだ。

もっとも表面に焼き目をつけるかどうかは肉質や食べる人の嗜好や体調にもよるし、ロースなどは火を入れすぎないほうがおいしく食べられたりもする。逆にタンやハラミなどは筋線維がタンパク質変性するまできっちり全体を加熱したほうが、持ち前のザクザクした食感を満喫できる。

焼肉はさまざまある飲食業態のなかでも、客同士のコミュニケーションが求められ、前提となっている業態だ。しかもおいしいものに対する執着は人によって差がある。食に執着のない人が、「俺は偉いのだ」「焼肉を知っている」と権勢を誇りたい(というか、見栄を張りたい)がためにトングを持ってしまうと、場の全員が不幸になってしまうことがある。

例えば、ロースターの状態が調っていないのに肉を載せたり、皿の上の肉をドバーッと焼き網の上に流し込んでしまったり。体育会系出身なのか、よほど腹を空かせているのかはともかく、たいていは焼肉に対する愛情か、周囲に対する気遣いのどちらか(あるいは両方)が欠けている。

ところがまれに、乱暴な焼き方でうまく焼けるケースがある。要は一定の条件を満たしてさえいれば、焼き方が多少乱暴だろうがおいしい焼き上がりになるのだ。とはいえ、偶然頼みではもったいない。「乱暴な焼き方」と「乱暴に見える焼き方」の間には大きな差がある。

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編集者、ライター、フードアクティビスト

東京都武蔵野市生まれ。食専門誌から新聞、雑誌、Webなどで「調理の仕組みと科学」「大衆食文化」「食から見た地方論/メディア論」などをテーマに広く執筆・編集業務に携わる。テレビ、ラジオで食トレンドやニュースの解説なども。新刊は『教養としての「焼肉」大全』(扶桑社)。他『大人の肉ドリル』『新しい卵ドリル』(マガジンハウス)ほか。共著のレストラン年鑑『東京最高のレストラン』(ぴあ)審査員、『マンガ大賞』の選考員もつとめる。経営者や政治家、アーティストなど多様な分野のコンテンツを手がけ、近年は「生産者と消費者の分断」、「高齢者の食事情」などにも関心を向ける。日本BBQ協会公認BBQ上級インストラクター

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