オミクロン株の流行によりクループ症候群が増えている?クループ症候群を小児科医が解説
救急外来に受診される『クループ症候群』の患者さんが増えてきている印象です。
最近の海外のニュース記事でも、オミクロン株の感染拡大にともないクループ症候群を発症するお子さんが増えていることが報道されています[1][2]。
そして最近、オミクロン株の感染がクループ症候群を多く発症させるのではないかとう推察や研究報告が発表されています[3][4]。
では、クループ症候群とはどんな病気でしょうか。簡単に解説してみたいと思います。
クループ症候群は、声帯のある付近の『喉頭』が腫れる病気です
クループ症候群は、さまざまな理由で急に『喉頭』が腫れて気道が細くなり、オットセイが鳴くような咳とか犬が吠えるようななどといわれる特徴的な咳(犬吠様咳嗽)や声がれ(嗄声)がでてくる病気です。
オットセイの鳴き声、といっても想像し難いかもしれませんので、動画のリンクを貼っておきますね。
では、喉頭とはどこでしょうか?
口は、食事の際には食べ物が入ってくる通り道となり、呼吸の際には空気の通り道となりますね。食事は食道へ、空気は肺へと導かれていきます。
この仕分けをしているのが喉頭(こうとう)です。
声帯のあるあたり、といえばわかりやすいかもしれません。
ちょうど上気道と下気道の境目あたりということになりますね。
その喉頭、声帯のあるあたりの気道が腫れてしまうのがクループ症候群ということです。
クループ症候群は乳幼児に多い病気です
発症しやすいのは乳幼児で、年齢は1~2歳に多いです。
クループ症候群は様々な原因で喉頭が腫れて苦しくなる病気ですが、頻度が高い原因はウイルス感染によるものです。原因となるウイルスはさまざまですが、パラインフルエンザウイルスというウイルス(インフルエンザとは別のウイルス)が最も一般的です[5]。
ただ、新型コロナウイルスでも、オミクロン株はデルタ株などに比較して上気道の症状を起こしやすい傾向があり、特に気道が細く塞がれやすいのです[3]。
クループ症候群がオミクロン株、ではありませんが、クループ症候群の場合にオミクロン株の存在を想像する必要性があるでしょう。
診断は、特徴的な咳や声がれ、そして聴診器で胸や喉の音を聴くことで多くは診断可能です。
クループ症候群の治療は?
治療は、アドレナリンという気道の腫れを軽くする薬を吸入したり、ステロイド薬の内服がよく使われます[5]。
オミクロン株の感染拡大がある現場では、飛沫を拡大させる可能性がある吸入をあえて実施せずに、ステロイド内服を優先させるケースもあるかもしれません。
まれに入院で治療を行うことがありますが、多くは外来治療で改善します。
夜間悪化することが多いので、小さなお子さんをお持ちの方は、救急外来を受診しなければならない場合もあるでしょう。心配な場合は、かかりつけ医や夜間であれば子ども医療電話相談事業(#8000)などにご相談くださいね。
この情報が、なにかのお役に立てば嬉しく思います。
[1]Agonizing Cough of Croup Rising in Kids with COVID
[2]Omicron in kids leading to a new but familiar illness: croup
[3]Kozlov M. Does Omicron hit kids harder? Scientists are trying to find out. Nature 2022.
[5]小児内科 48(11): 1798-1801, 2016.