Yahoo!ニュース

【「ガザが危ない!」③】―新型コロナ感染の最新情報(2020年12月19日)―

土井敏邦ジャーナリスト

 今年9月7日の緊急報告「ガザが危ない!」で、「ガザ地区の新型コロナ・ウィルスの患者数が1000人を超え死者が10人に達している」と伝えてから3ヵ月が過ぎた。

 その後、ガザ地区での感染状況は急激に悪化した。

 友人Mから送られてきた情報によると、ガザ地区(人口約200万人)の患者数は32,158人(死者248人)、全人口の1.6%。日本の人口に換算すると200万人が感染していることになる。ちなみにヨルダン川西岸では87,454人(869人)(12月18日現在)。

 現在ガザでは週末の金・土曜日は終日、また平日(日~木)は夜は外出禁止令が敷かれ、これに違反した者は100シェケル(約3000円)の罰金が課せられる。

ガザの保健部門は崩壊していて、病院は通常の病気の患者を受け入れることができない状態にあり、あらゆる手術が、無期限で延期されている。 

 ガザ地区を実効支配するハマス政府が市場を閉鎖し、レストランやカフェ、スーパーマーケット、散髪店、タクシーなどの営業時間を制限したため、何千人という農民たちや市場で働く人たちは仕事を失った。モスク、結婚式場、スポーツクラブは完全に封鎖されている。

ガザの大半の家庭は、食料不足で苦しんでいる。その理由は二つある。

 一つは、外出禁止令のために住民は仕事に出られず、また工場や農場も休業状態で収入源がないこと。

 二つ目は、新型コロナの影響で食料の価格が急騰していることだ。野菜は以前の2倍の値段に跳ね上がっている。

 こんな貧困状態の中で、犯罪が急増している。Mの友人の話によれば、ガザ地区の貧しい娘たちが、性的なショーやヌードを他のアラブ諸国の男性に向けてインターネットで配信して金を稼いでいるという。

 住民はハマス政府と西岸のパレスチナ自治政府(PA)に激しい怒りを抱いている。とりわけハマス政府に対し、コロナ対策に失敗し、食料や医薬品など基本的な物資を住民に提供できないことを怒っているという。

 住民はUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)に対しても怒っている。このコロナ下の窮状の中で何の支援もしないからだ。難民たちはUNRWAに食料と医薬品を特別配布するように要求しているが、UNRWAは「コロナ対策の緊急支援の予算がない」と言う理由で拒否している。

ジャーナリスト

1953年、佐賀県生まれ。1985年より30数年、断続的にパレスチナ・イスラエルの現地取材。2009年4月、ドキュメンタリー映像シリーズ『届かぬ声―パレスチナ・占領と生きる人びと』全4部作を完成、その4部の『沈黙を破る』は、2009年11月、第9回石橋湛山記念・早稲田ジャーナリズム大賞。2016年に『ガザに生きる』(全5部作)で大同生命地域研究特別賞を受賞。主な書著に『アメリカのユダヤ人』(岩波新書)、『「和平合意」とパレスチナ』(朝日選書)、『パレスチナの声、イスラエルの声』『沈黙を破る』(以上、岩波書店)など多数。

土井敏邦の最近の記事