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中日を上昇気流に乗せる!! 福永裕基がプロ初本塁打

横尾弘一野球ジャーナリスト
今春のキャンプで守備練習する中日の福永裕基(右)。待望の一発が出た。

 なかなかつながらない打線が投手陣に重圧を与え、つながった時に限って拙守で自滅する。開幕から投打にちぐはぐな戦いが続く中日は、5月に入っても持ち直す気配を見せない。ファンやメディアがチームを変えてくれると待望する立浪和義監督の談話も、日に日に希望のないニュアンスになっている。同じように元気のない巨人をバンテリンドームに迎える5月5日からの3連戦は、どちらかが上昇のきっかけをつかめるか注目された。

 先発は、巨人が育成から復帰した横川 凱、中日は小笠原慎之介と両左腕だ。1回表、小笠原は巨人の先頭・廣岡大志にいきなりレフトスタンドへ運ばれる。またしても、立ち上がりから嫌な空気が立ち込める。打線は4回裏に連打で無死一、二塁と攻めるも、四番の石川昂弥が併殺打。直後の5回表には、一死一塁から3連打を浴びて2点を追加され、小笠原はマウンドを降りる。

「今日もダメか……」

 そう思ってしまいそうな5回裏、先頭の福永裕基がレフト前に運び、ここから打線がつながって2点を返す。藤嶋健人、谷元圭介、勝野昌慶とリリーフ陣が4点目を許さず、8回表も難病から復帰した福 敬登が無失点に切り抜ける。

 すると、その裏に福の代打・大島洋平の中前安打を皮切りに一死二、三塁とし、好調の細川成也が逆転打をセンターへ。続く石川昂が2号2ラン本塁打を放つと、ダヤン・ビシエドも右前に弾き返し、福永がプロ初本塁打をレフトスタンドに叩き込む。

中村奨吾の背中を追いかけてきた即戦力ルーキー

 福永は、天理高から専大を経て日本新薬へ入社し、4年目の昨年にドラフト7位指名を受けた26歳だ。日本新薬では入社直後の東京スポニチ大会で新人賞に輝く活躍を見せ、そこから常にチームの中心を担ってきた。2020年の都市対抗ではベスト4進出にも貢献するなど、攻守に実力も折り紙つき。それでも、ドラフト指名が解禁になる2年目から指名はなかったが、天理高の先輩にあたる中村奨吾から贈られたグラブを大切に使い、「いつかは中村さんと同じ舞台で」と気持ちを切らさずにプレーしてきた。

 日本新薬では宮本慎也氏が臨時コーチを務めており、中日が指名した背景には、宮本氏と立浪監督のホットラインもあったと推察できる。7位指名で背番号は68だが、今春のキャンプで動きを見ていると、即戦力になるのは確信できた。そして、オープン戦でも3月15日の広島戦で逆転3ラン本塁打を放つなどアピールし、3月31日の巨人との開幕戦には七番セカンドでスタメン出場。初安打もマークした。

 プロの水に慣れてきた4月26日の広島戦では、打球を追ってチームメイトと交錯し、足の打撲で欠場を余儀なくされるも、復帰後は再びはつらつとプレー。5月3日の阪神戦ではサヨナラ負けにつながるエラーをしていただけに、ダメ押しの一発は福永もチームも上昇気流に乗せるのではないか。

 社会人出身のルーキーでは、東京ヤクルトで先発ローテーション入りしている吉村貢司郎が、4月30日に初勝利を挙げた。

ルーキー・吉村貢司郎がプロ初勝利!! 東京ヤクルトは連敗を7で止める

 福永にもさらなる活躍で、チームの勝利を引き寄せ、新人王を争ってもらいたい。

野球ジャーナリスト

1965年、東京生まれ。立教大学卒業後、出版社勤務を経て、99年よりフリーランスに。社会人野球情報誌『グランドスラム』で日本代表や国際大会の取材を続けるほか、数多くの野球関連媒体での執筆活動および媒体の発行に携わる。“野球とともに生きる”がモットー。著書に、『落合戦記』『四番、ピッチャー、背番号1』『都市対抗野球に明日はあるか』『第1回選択希望選手』(すべてダイヤモンド社刊)など。

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