シリアで人知れず続く外国の侵犯行為:トルコ、イスラエル、そしてロシアが相次いで爆撃を実施
シリアでは一昨日から昨日にかけて、人知れず外国軍による爆撃と小競り合いが行われた。
トルコによるドローン攻撃、ロシア軍への挑発
英国を拠点に活動する反体制系NGOのシリア人権監視団によると、ラッカ県で9月16日、トルコ軍がシリア政府と北・東シリア自治局(クルド民族主義組織の民主統一党(PYD)を主体とする自治政体)の共同統治下にあるアイン・イーサー市近郊を無人航空機(ドローン)で爆撃した。
標的となったのは、シリア軍が駐留する第93旅団近くに設置されている人民防衛隊(YPG、PYDの民兵組織)主体のシリア民主軍の検問所に停車していたオートバイ1台と車輌1輌。爆撃でシリア民主軍の戦闘員5人が死亡した。
トルコ軍はまたこの日、アイン・イーサー市近郊のM4高速道路沿線で土塁を築いていた車輌の近くにいたロシア軍パトロール部隊を狙って砲撃を行った。現場にいたロシア軍パトロール部隊は撤収を余儀なくされた。
イスラエル軍がダマスカス国際空港一帯を爆撃
イスラエル軍も9月17日未明、シリア領内で新たな爆撃を行った。
シリア軍筋は報道声明を出し、イスラエル軍戦闘機が午前0時45分頃、占領下のティベリウス湖北東上空からダマスカス国際空港と首都ダマスカス南の複数ヵ所に対して多数のミサイルを発射、シリア軍防空部隊がそのほとんどを撃破したが、軍関係者5人が死亡、若干の物的被害が出たと発表した。
シリア人権監視団によると、ダマスカス国際空港に近いガスーラ農場、サイイダ・ザイナブ町、キスワ市一帯に配置されている「イランの民兵」の拠点複数ヵ所が狙われた。
ラタキア県のフマイミーム航空基地のシリア駐留ロシア軍の当事者和解調整センターのオレグ・エゴロフ副センター長は、イスラエル軍のF-16戦闘機4機が、巡航ミサイル4発と誘導爆弾10発でダマスカス郊外県を攻撃し、シリア軍兵士5人が死亡したと発表した。
また、イスラエル軍の爆撃に対して、シリア軍防空部隊は、パンツィーリ-S1近距離対空防御システムとBUK-M2E中距離地対空ミサイルシステムで迎撃、ミサイル2発と爆弾6発を撃破したと付言した。
イスラエル軍の爆撃を受けて、運輸省の民間航空総局のバースィム・マンスール局長は報道声明を出し、ダマスカス国際空港の発着便の予定に変更はなく、通常通り運航を行っていると発表した。
イスラエル軍がシリアに対して爆撃・ミサイル攻撃、砲撃を行うのは2022年に入ってからは33回目。
…そして、ロシア
トルコ、イスラエルの増長を阻止しようとするかのように、ロシア軍も動いた。
シリア人権監視団によると、ロシア軍は9月17日、シリアのアル=カーイダと目されるシャーム解放機構(旧シャーム解放機構)が軍事・治安権限を握るイドリブ県イドリブ市西のハフサルジャ村、シャイフ・ユースフ村一帯に対して爆撃を実施した。
シャーム解放機構と連携する救援医療組織のホワイト・ヘルメットは、爆撃ではクラスター弾が使用され、労働者1人が軽傷を負ったと発表した。
反体制系サイトのドゥラル・シャーミーヤによると、爆撃は採石場2ヵ所を狙ったものだという。
ロシア軍は9月8日にも同地に同地一帯に対して激しい爆撃を実施している。
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なお、17日には、国連の貨物車輌16輌が、シリア政府の支配下にあるサラーキブ市と、シャーム解放機構が主導する反体制派の支配下にあるタルナバ村を結ぶ通行所を経由して、反体制派支配地に人道支援物資を搬入した。
政府支配地から反体制派の支配地に境界経由(クロスライン)での支援が行われるのは、今年に入って7回目。