数字で見る、融雪となだれの恐怖
白銀に覆われた「静」なる雪国に、季節外れの「動」が訪れようとしています。日本列島に訪れた春を思わせる暖かさが、雪を解かし水へと変え、災害のリスクを高めます。
10年に1度の高温
「小寒」が過ぎ、「大寒」に向かおうとしているこの時期ですが、“10年に1度のレベル”ともいわれる暖かさがやってきます。13日(金)の予想最高気温は、たとえば金沢で17度となるなど、この時期の平均を5~10度も上回り、4月並みとなる所もありそうです。
懸念されるのが、雪解けに伴う災害です。
今冬の豪雪
今冬は日本海側を中心に、例年を上回る大雪が降っています。では一体、どれほど雪が積もっているのでしょう。
12日(木)正午時点、青森県酸ヶ湯で241センチ(平年比103%)、山形県肘折では204センチ(113%)、新潟県守門で178センチ(138%)となっています。つい最近、記録的な大雪が降った北海道小樽では、72センチ(113%)の積雪があります。
これらの雪が、春のような陽気で解け始めているのです。
雪解けの水量
特に厄介なのが、湿り雪の場合です。
“べた雪”は大量の水分を含んでいます。その量は、サラサラの粉雪と比べて4倍ほどもあって、例えば畳1枚の面積に、深さ1センチの雪が積もっていたとしたら、水の量は8リットルにもなります。もし深さ30センチなら、お風呂1杯分に相当する240リットルです。
これだけの量の水が、地中に染み込んだり、地表を流れたりするのですから、地滑りや洪水が起きやすくなるのも合点がいきます。
昨年大みそかに山形県鶴岡市を襲った地滑りも、雪解け水で地盤が緩んだことが一因だったと専門家は分析しています。
なだれの恐怖
加えて心配なのが、大規模ななだれです。
気温が上がると、雪の表層だけではなく、深層から一気に崩れる「全層なだれ」が起きやすくなります。雪が斜面をかけ落ちるスピードは、乗用車並みの時速40~80キロといわれています。
なだれといえば、暖かくなり始めた春の時期に次のような悲劇が起きたことがあります。
1965年3月14日、北海道の日高山脈でなだれが発生、巻き込まれた北海道大学の山岳部員6名が亡くなりました。心が痛むことに、うち1人の男性は、雪の中で4日間も1人脱出を試みていたのです。口の周りにできたわずかな隙間を広げていって、1メートル上方に進んだものの力尽きたと、冷たい雪の中で書き綴った手記に書かれてあったそうです。