北海道新幹線の札幌延伸開業、2030年度末から「未定」へ 小樽―長万部間の並行在来線廃止も「未定」?
地元紙が報じたとこによると、現在、建設工事が進む北海道新幹線の新函館北斗―札幌間について、建設主体の鉄道運輸機構と国土交通省は、当初予定していた2030年度末の札幌開業を断念することを来週中にも正式表明する方向で最終調整に入ったという。開業時期については、新たな目標は当面示さないというとこで、北海道新幹線の札幌延伸は開業「未定」となる。
トンネル難工事で最低でも4年遅れ
昨年、2023年秋には、後志管内の倶知安町―ニセコ町間で建設中の羊蹄トンネル比羅夫工区で巨大な岩塊群にあたり工事が2年以上停止していることが明らかとなった。現在は工事は再開されているものの、工事は予定よりも4年遅れとなっている。さらに渡島管内の八雲町―北斗市間で建設中の渡島トンネルでも軟弱地盤への対応が難航するなどして、一部の工区で工事が滞っているという。
工事への影響はこれだけではない。現在、千歳市で建設が進む次世代半導体工場のラピダスに機械や人材が集中する影響を受ける懸念も強まっているという。2024年度となり建設業でも残業規制が強化されたことから、今後、北海道新幹線建設で本格化する高架橋や電気設備工事での人手不足も懸念されている。
札幌延伸に向けての未解決課題
北海道新幹線の札幌延伸では、並行在来線問題など解決されるべき問題の目途も立っていない。北海道庁が主導する並行在来線対策協議会では、在来線の小樽―長万部間の廃止を決め、長万部―函館間の旅客を廃止し貨物専用線化する方針を示している。
しかし、小樽―長万部間では、輸送密度が2000人を超える余市―小樽間の混雑区間も含まれており、深刻化するバスドライバー不足の影響から地元バス会社は、鉄道廃止代替バスの引き受けに難色を示しバス転換協議が中断した。
さらに、この冬の観光シーズンには大勢のインバウンド観光客が押し寄せたことから、小樽―倶知安間で通常運行される2両編成の列車では積み残しが発生する事態が生じたことから、日中の一部の列車が3両編成で運転された。こうした状況からこの区間の廃止については、今後さらに難しさを増すだろう。
また、長万部―函館間は、北海道と本州を結ぶ貨物列車の幹線ルートとなっている。この区間を廃止してしまうと北海道の農産品等の輸送を行っている貨物列車の運行が不可能となり、首都圏などで野菜価格の高騰を招きかねない。にもかかわらず、北海道新幹線札幌延伸後の具体的な運営主体については何も決まっていない。さらに、この区間の旅客列車を廃止するとなるとバスドライバー不足から、小樽―長万部間と同様にこの区間のバス転換協議も泥沼化することは濃厚だろう。
この他にも、函館市の大泉市長が表明している北海道新幹線の函館駅乗り入れ構想など、今後、解決を図っていく課題は山積みであるが、今回の開業「未定」報道により、並行在来線廃止の再検討を含めてこれらの課題解決を図るための時間的猶予は十分に与えられたと言ってもよい。
(了)