熱中症に新アラート 危険すぎる暑さ増加で
環境省と気象庁は7月から、熱中症の危険性が非常に高い日に、関東甲信地方に限って「熱中症警戒アラート(試行)」の発表を予定している。背景には年々、過酷さを増す暑さにより、熱中症による救急搬送者数が毎年、約5万人を超える、厳しい現実がある。
熱中症にアラート導入へ
環境省と気象庁は災害級とも言える暑さに対して、より一層の警戒を呼び掛ける情報発信の在り方を有識者でつくる検討会で議論を進めてきました。
それによると、7月から関東甲信地方の1都8県(東京都、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県、神奈川県、山梨県、長野県)を対象に、暑さ指数(WBGT)が33℃以上と予想される場合に「熱中症警戒アラート(試行)」が発表される予定です。
これまで熱中症に警戒を呼び掛ける情報として、2011年7月に始まった高温注意情報があります。この年は東日本大震災により夏の電力不足が懸念されたこともあり、大きく取り上げられました。高温注意情報は最高気温が約35℃以上と予想される場合に発表されます。
これはこれで大変な暑さなのですが、人が感じる暑さは気温だけではなく、湿度や風、日差しに大きく影響されます。そこで、より体感に近い暑さを表す数値として考え出されたのが暑さ指数で、湿球黒球温度(WBGT:Wet Bulb Globe Temperature)とも呼ばれます。熱中症警戒アラートはこの暑さ指数を使った、新しい熱中症警戒情報です。
2019年はアラートレベルの暑さが過去最多に
5日(金)の東京は午前11時に、暑さ指数が27.8℃に達し、今シーズン最も高くなっています。6月になり、蒸し暑さを感じるようになりましたが、熱中症警戒レベルは下から2番目の警戒(黄)で、その上は28℃以上の厳重警戒(橙)、そして31℃以上の危険(赤)です。熱中症警戒アラートの基準とされる暑さ指数33℃以上は危険のさらに上という位置付けです。この暑さ指数33℃以上の日がひと夏にどのくらいあるのか、東京を例に調べてみました。
2006年から2019年までの14年間をグラフにしたものです。アラートレベルの暑さはここ数年で急に増えていて、2019年は過去最多の7日に達しました。8月9日は暑さ指数がこの夏最高の34.1℃を記録、熱中症とみられる症状で救急搬送された人は東京都だけで200人を超えました。
世界でも熱中症が社会問題に
命の危険さえある暑さは日本だけの話ではありません。2003年に欧州で発生した記録的な熱波では死者が2万人を超える異常事態となり、温暖化防止の気運が高まりました。
NOAA(米海洋大気庁)は世界中で極端な暑さが人の命を脅かしている現状を紹介しています。この研究を共同執筆した専門家は予測を上回る早さで温暖化が進んでいて、世界的に気温と湿度が高くなっている。これまでのような不快感にとどまらず、体温調節機能が徐々に失われていく深刻な状況に陥りやすくなっていると指摘しています。それは比較的低いと思われる、暑さ指数が26℃くらいから起こり、暑さ指数が35℃に達すると健康な人でも死に至る可能性があると警鐘を鳴らします。
今年も早いペースで暑くなっていて、マスクの着用が必要とされる状況でこの夏を乗り切れるのか、気がかりです。
【参考資料】
気象庁ホームページ:熱中症予防対策に資する効果的な情報発信に関する検討会
環境省:熱中症予防情報サイト、暑さ指数(WBGT)
総務省:2019年(5月から9月)の熱中症による救急搬送状況、2019年11月6日報道発表資料
東京消防庁:熱中症に注意!、2020年5月27日報道発表資料
NOAA(米海洋大気庁):Dangerous humid heat extremes occurring decades before expected、May 8, 2020