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札幌味噌と博多豚骨ともう一つは? 今さら聞けないご当地ラーメンの秘密

山路力也フードジャーナリスト
日本三大ご当地ラーメンを知っているだろうか。

日本三大ご当地ラーメンとは

「ご当地ラーメン日本一」に輝いた福島県の白河ラーメン。
「ご当地ラーメン日本一」に輝いた福島県の白河ラーメン。

 2024年10月8日、数あるご当地ラーメンの中から日本一を決めるイベント『日本ご当地ラーメン総選挙 2024』にて、福島県の「白河ラーメン」が投票によって優勝し、栄えある「ご当地ラーメン日本一」の称号に輝いた。

 『日本ラーメン協会』によれば、全国各地のご当地ラーメンの数は200種類近くもあるとのこと。誰もが知るご当地ラーメンから、知る人ぞ知るマニアックなご当地ラーメンまで。それぞれの地域にラーメン文化が根付いていて、個性豊かなラーメンが数多くある。ご当地グルメは数あれど、ラーメンほど多様性のあるものはないだろう。

 そこで今回はご当地ラーメンの基本中の基本である「日本三大ご当地ラーメン」についてご紹介しよう。ご当地ラーメンを語る上では絶対に欠かすことの出来ない、3つの個性豊かなラーメンたちから、日本のラーメン文化の奥深さを感じることが出来るはずだ。

実は味噌だけではない「札幌ラーメン」(北海道)

味噌ラーメン発祥の店『味の三平』。
味噌ラーメン発祥の店『味の三平』。

 味噌味でお馴染みの札幌ラーメンの歴史は古く、大正11(1922)年創業の中華料理店『竹家食堂』からその歴史は始まる。この店で「ラーメン」という呼称が最初に付けられたとも言われているが、当初は手延べ麺を使った中華料理の「肉絲麺」を出していた。その後、東京の中華そばにあやかって醤油味のラーメンを出すようになった。つまり札幌ラーメンは味噌ではなく醤油味から始まった。

 1955(昭和30)年に『味の三平』が味噌ラーメンを開発し、老舗製麺所『西山製麺』が味噌ラーメンに合わせた熟成麺を開発。その後、1960年代から全国のデパートでの催事やチェーン店『どさん子』の全国展開、さらにインスタントラーメン『サッポロ一番みそラーメン』(サンヨー食品)のヒットによって、札幌ラーメンは味噌ラーメンという認知が全国に広まっていった。

 1994(平成6)年には、ご当地ラーメンが数多く集まる『新横浜ラーメン博物館』がオープン。札幌代表として『すみれ』が出店して濃厚で熱々の味噌ラーメンが札幌味噌ラーメンの主流となって現在に至るが、今もなお『すみれ』をはじめ札幌の多くの店では味噌以外に醤油と塩をメニューに揃えており、札幌では味噌以外の味も人気が高い。

ご当地ラーメンブームの火付け役「喜多方ラーメン」(福島県)

全国に喜多方ラーメンの名を知らしめた『喜多方ラーメン坂内』のルーツとなる『坂内食堂』。
全国に喜多方ラーメンの名を知らしめた『喜多方ラーメン坂内』のルーツとなる『坂内食堂』。

 「蔵の町」として知られる福島県喜多方市は、人口50,000人ほどの町に約120軒ものラーメン店がある「ラーメンの町」。その発祥は1927(昭和2)年創業の『源来軒』で、屋台を引いて売られた手打ち麺の「支那そば」が人気を博したことから喜多方ラーメンの歴史は始まった。

 その後、その手打ち麺のノウハウを学んだ多くの食堂でも出されるようになり、蔵を見にきた観光客たちの食事としてラーメンが認知され、その後テレビやメディアなどに取り上げられたことで全国的な知名度がアップ。ご当地ラーメンの先駆け的な存在となった。

 飯豊山からの豊富な伏流水によって生まれた醤油や手打ち麺を生かした、すっきりとした味わいの醤油ラーメンが基本だが、店によっては塩味や味噌味を出しているところもある。また1987(昭和62)年に発足した『蔵のまち喜多方 老麺会』が中心となって、地域全体でのラーメン文化の継承に力を入れている。

世界中で愛される豚骨ラーメン「博多ラーメン」(福岡県)

1946(昭和21)年創業の『赤のれん 節ちゃん』は、博多ラーメンの草分け的存在の老舗。
1946(昭和21)年創業の『赤のれん 節ちゃん』は、博多ラーメンの草分け的存在の老舗。

 国民食と呼ばれるラーメンが今や世界にも広がっているが、日本から世界に進出しているラーメン店の多くは福岡を拠点とする博多ラーメンの店であり、海外では「ラーメン=豚骨」と認知されるほど。しかしながら博多初のラーメン屋台とされる『三馬路』のラーメンは、スープは半濁気味のあっさりした豚骨スープで醤油味、麺も平打ち麺の「中華そば」だった。

 博多の豚骨ラーメンは、1946(昭和21)年にうどん屋台を営んでいた山平進さんと天ぷら屋台を引いていた津田茂さんが二人で豚骨ラーメンを考案したことが始まり。山平さんが平打ちの麺を作り、津田さんが奉天(現在の中国瀋陽市)で出逢った豚骨スープをヒントにスープを作って、屋台で提供するようになった。のちに山平さんが『博龍軒』、津田さんが『赤のれん』をそれぞれ創業することになり、博多に豚骨ラーメン店が生まれた。

 その後、長浜ラーメンの文化である「替え玉」「細麺」なども柔軟に吸収しながら、博多ラーメンは進化を遂げていく。さらに『博多一風堂』『一蘭』『博多だるま』『博多一幸舎』などの人気店が相次いで海外に進出し、博多ラーメンや豚骨ラーメン、そしてラーメンという文化を今も世界に広げ続けている。

 その地域に古くから根付いている食文化を通じてその町を知る。それこそが地方に行って食べ歩きをする醍醐味だ。数々のご当地グルメや郷土料理と共に、長年愛され続けているご当地ラーメンを食べることで、その町の歴史や伝統もきっと感じることが出来るはずだ。

※写真は筆者によるものです。

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フードジャーナリスト

フードジャーナリスト/ラーメン評論家/かき氷評論家 著書『トーキョーノスタルジックラーメン』『ラーメンマップ千葉』他/連載『シティ情報Fukuoka』/テレビ『郷愁の街角ラーメン』(BS-TBS)『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)『ABEMA Prime』(ABEMA TV)他/オンラインサロン『山路力也の飲食店戦略ゼミ』(DMM.com)/音声メディア『美味しいラジオ』(Voicy)/ウェブ『トーキョーラーメン会議』『千葉拉麺通信』『福岡ラーメン通信』他/飲食店プロデュース・コンサルティング/「作り手の顔が見える料理」を愛し「その料理が美味しい理由」を考えながら様々な媒体で活動中。

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